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2026.02.03
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インドと米国が急展開で通商合意、トランプ関税は18%に
~ロシア産原油の輸入縮小、5,000億ドル超の米国産品輸入拡大などで合意も、具体的な内容は不明~
西濵 徹
- 要旨
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米国とインドの首脳は2日に電話会談を行い、米国がインドに課している関税を50%から18%へ引き下げる貿易協定で合意した。その見返りとして、インドはロシア産原油の輸入を停止し、米国やベネズエラ産原油への切り替え、さらに米国製品の大規模な輸入拡大を約束した模様である。両国関係の改善が進んだ背景には、先日のインドとEUのFTA合意など「米国外し」の動きが影響した可能性が考えられる。
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トランプ氏はSNSでの発信において、合意は即時発効としたものの、具体的な実施時期や関税・非関税障壁削減の詳細は不明である。さらに、インドは5,000億ドル超の米国製品の輸入拡大で合意したとするが、その実現性にも疑問が残る。また、インドが合意したとされる関税や非関税障壁の引き下げの行方、ベネズエラ産原油の採算性を巡る不確実性を勘案すれば、トランプ氏が強硬姿勢に転じるリスクは残る。
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金融市場では米国・EU双方との通商関係改善が好感され、ルピー相場の改善が期待される。その一方、関税引き下げはインドにとって税収減や財政悪化、貿易赤字拡大を通じて新たなリスクとなる可能性がある。したがって、短期的な市場反応だけでなく、中長期的なマクロ経済への影響を慎重に見極める必要がある。
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インドのモディ首相と米国のトランプ大統領は、2日に電話会談を行った。その後、トランプ氏は自身のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を通じて、米国がインドからの輸入品に課す相互関税の税率を25%から18%に引き下げる貿易協定に合意し、「即時」発効する旨を明らかにした。米国はインドがウクライナ戦争以降にロシア産原油の輸入を拡大させていることを理由に、25%の2次関税を上乗せする制裁に動いたが(注1)、これも撤廃される。一連の措置が発効すれば、米国のインドに対する関税は50%から18%に大幅に引き下げられる。その見返りとして、インドはロシア産原油の輸入を停止したうえで、米国、もしくはベネズエラからの原油輸入を拡大させることで合意した。これには、トランプ氏が目指すウクライナ戦争の早期終結を後押しする狙いがある。さらに、インドは米国に対する関税や非関税障壁について「ゼロに向けて削減を進める」ほか、いわゆる『バイ・アメリカン(米国産品の調達)』の大幅な拡大を確約し、具体的には5,000億ドルを上回る米国産の石炭を含むエネルギー製品、IT関連製品、農産品の輸入を拡大する。その後にモディ氏も自身のSNSで、米国がインドからの輸入品への関税を18%に引き下げることを歓迎するとしたうえで、両国のパートナーシップの強化に向けて緊密な連携を図るとの考えを明らかにしている。なお、直前には米国のベッセント財務長官のほか、トランプ氏もインドがベネズエラ産原油の輸入によりロシア産原油の輸入を一部代替したことで合意したと明らかにするなど、関係改善の兆しをうかがわせる動きがみられた。インドとEU(欧州連合)は1月末に自由貿易協定(FTA)の締結交渉が最終合意に至るなど(注2)、いわゆる「米国外し」とも呼べる動きが広がりをみせたことが、米国の動きを後押しした可能性もある。

トランプ氏はSNSで一連の措置を即時発効するとしたものの、具体的な実施時期などは不明である。さらに、インドによる関税や非関税障壁などの削減スケジュールなども不明なうえ、インド側が確約したとされる米国製品の輸入拡大についてもその詳細は明らかになっていない。インドの米国からの輸入額は、2025年時点でも501億ドルにとどまり、合意では米国産製品を総額5,000億ドル以上拡大するとしているが、その期間の在り様によっては実現性には疑問が残る。WTO(世界貿易機関)によれば、インドの平均関税率は2024年時点で16.2%と依然として主要新興国のなかでも突出しているうえ、なかでも農産品には36.7%と高関税を課している。さらに、USTR(米通商代表部)はインドの輸入要件について、国際基準に適合していないうえ、品質管理に関する独自規格の義務化やデータプライバシーといった非関税障壁の高さを指摘しており、先行きも不透明である。一方、ベネズエラ産原油は重質油であり、その受け入れのハードルの高さが指摘されてきたものの、インドは重質油の精製能力が高いとされ、利害が一致した可能性がある。なお、過去にインドがベネズエラ産原油の輸入を拡大させた背景には、米国による制裁を理由に割安な価格で輸入が可能であったことにある。しかし、今後は制裁解除によりディスカウント幅の縮小が見込まれるなか、市場原理に基づけばベネズエラ産原油の輸入を単純に拡大させるかは見通しにくい。したがって、今後示される具体的な内容によっては、過去にもしばしばみられたように、トランプ氏がTALO(強硬発言)に訴えるリスクは残ると考えられる。

金融市場においては、インドがEUとのFTAの締結交渉が最終合意に至ったことに加え、米国との合意によりトランプ関税が大幅に引き下げられるとの動きを好感することが期待される。このところの通貨ルピーの対ドル相場を巡っては、先月末に一時最安値を更新するとともに、その後も上値の重い展開が続いてきたものの、こうした状況が大きく変化する可能性はある。さらに、インド政府が今月1日に公表した来年度(2026-27年度)予算案では、トランプ関税による景気への悪影響を軽減すべく実施した様々な減税策の影響で税収の伸びは小幅にとどまるとの見方が示されている(注3)。仮に米国との合意の遵守を目的に関税の大幅な引き下げに動けば、税収のさらなる減少を招くとともに、財政運営を巡って国債発行をはじめとする金融市場からの調達への依存を一段と強めることも考えられる。インドが米国からの輸入を大幅に拡大させることは、貿易赤字幅の拡大を通じて対外収支のバランスを悪化させるなど、金融市場からの新たな懸念材料となるリスクもある。よって、短期的な動向のみならず、米国との合意による中長期的にみたマクロ経済への影響を注視したうえで、慎重に判断を下す必要性は高いと捉えられる。

注1 2025年8月27日付レポート「米国、インドへの追加関税発動、トランプ関税はブラジルと同じ50%へ」
注2 1月28日付レポート「インド、EUとのFTAで最終合意、米国との関係悪化も交渉後押し」
注3 2月2日付レポート「インド26-27年度予算案、製造業優先や公共投資拡充で景気重視へ」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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