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2026.01.08
日本経済
賃金
賃金指標
大幅に減少した実質賃金 (2025年11月毎月勤労統計)
~特別給与下振れによる一時的鈍化の可能性大。26年1-3月期に実質賃金プラス転化か~
新家 義貴
- 要旨
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25年11月の毎月勤労統計では名目賃金が大幅鈍化し、実質賃金も減少幅が大きく拡大。もっとも、今月は特別給与の大幅下振れによって押し下げられた面が大きい。ボーナス月以外の特別給与は支給タイミングのズレ等で大きく振れることが多いため、この点を問題視する必要はない。
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所定内給与(共通事業所ベース)は前年比+1.8%(10月:同+2.2%)と予想外の鈍化。11月は前年と比べて平日日数が2日少なかったことで労働時間が大幅に減少しており、このことが所定内給与を押し下げた可能性がある。仮に暦要因による一時的な労働時間の減少であるならば、所定内給与の鈍化は持続的ではないだろう。12月の所定内給与は前年比+2%台前半~半ば程度まで戻ることを想定している。
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実質賃金の先行きについては、25年12月、26年1月はゼロ近傍、2~3月はプラス転化を予想。食料品価格で前年の高い伸びの裏が出ることに加え、電気・ガス代補助金による押し下げ等により物価上昇率が鈍化することが主因。一方、懸念されるのが円安による物価上振れリスク。円安を理由として企業の値上げ意欲が再び積極化し、物価上昇率が高止まる可能性は相応にある。この場合、4月以降の実質賃金が再びマイナス圏に沈むリスクがある。
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名目賃金が大幅鈍化も、特別給与の一時的な下振れによるところが大きい
本日厚生労働省から公表された25年11月の毎月勤労統計では、現金給与総額が前年比+0.5%と、前月の同+2.5%から上昇率が大幅に縮小した。名目賃金から物価変動の影響を除いた実質賃金では同▲2.8%(25年10月:同▲0.8%)と11ヵ月連続で落ち込み1、減少幅も大きく拡大している。
なお、報道等で言及されることが多いこの数字(本系列)は、調査対象事業所の部分入れ替えやベンチマーク更新等の影響により攪乱されることが多く、月次の賃金変化の動向を把握することには適さない。そのため、1年前と当月の両方で回答している調査対象のみに限定して集計された「共通事業所」の前年比データを見る方が望ましい。ただ、この共通事業所ベースでも25年11月は前年比+0.9%と10月の同+2.4%から大きく鈍化、実質賃金は前年比▲2.4%(10月:同▲1.0%)と11ヶ月連続で減少した。賃金の上昇が物価上昇に追い付かない状況が続いている。
このように、本系列でも共通事業所でも名目賃金の伸びが大幅に鈍化しているが、今月は特別給与の大幅下振れによって下押しされた面が大きいことに注意が必要だ(本系列:前年比▲17.0%、共通事業所:同▲13.4%)。ボーナス月以外の特別給与は支給タイミングのズレ等で大きく振れることが多いため、この点を問題視する必要はない。また、後述のとおり営業日数が少なかったことで所定内給与が一時的に下振れた可能性もあるとみられる。現時点で、名目賃金のトレンドに変化が生じたと見る必要はないだろう。11月分確報(1月23日公表)、12月分(2月9日公表)の結果も見て評価する方が良いと思われる。
所定内給与は労働時間要因で鈍化か
所定内給与(共通事業所ベース、以下同じ)は前年比+1.8%(10月:同+2.2%)と前月から鈍化した。一般労働者の所定内給与は同+2.1%(10月:同+2.2%)とほとんど変化がなかったが、パート労働者の伸びが同+2.1%(10月:同+3.4%)と前月から鈍化している。
今回の所定内給与下振れの理由としては、労働時間が減少したことが考えられる。11月の所定内労働時間は前年比▲3.6%と、うるう年要因で下振れた2月(同▲2.4%)、3月(同▲2.5%)を上回る減少幅となっており、このことが所定内給与に影響を与えた可能性があるだろう。本系列の出勤日数も前年差▲0.6日と減少、業種別で見ても軒並み減っている。11月は前年と比べて平日日数が2日少なかったことが影響しているものとみられる。
仮に暦要因による一時的な労働時間の減少であるとするならば、今月のような所定内給与の鈍化は持続的ではないだろう。そもそも所定内給与は春闘で決まる賃上げが1年間続く傾向があり、賃上げの影響が反映される月以外で大きく変動することはほとんどないはずである。12月の所定内給与は前年比+2%台前半~半ば程度まで戻ることを想定して良いのではないか。
なお、名目賃金は、ボーナスの支給時期である6、7、12月にボーナス動向の影響を大きく受けるが、その他の月については所定内給与の動きに概ね連動することが多い。そう考えると、名目賃金は当面、12月のボーナス月を除けば概ね前年比+2%台前半~半ばで推移することが予想される。
実質賃金は26年1~3月期にプラス圏浮上の公算大も、物価上振れリスクに注意
11月の実質賃金は特別給与の下振れによって大幅に減少したが、25年12月、26年1月はゼロ近傍まで戻し、2~3月にはプラスに転化すると予想している。実質賃金が下げ止まるタイミングが近づいてきた。
前述のとおり、当面の名目賃金は、ボーナス支給月である12月を除けば所定内給与に近い伸び(前年比+2%台前半~半ば)になる可能性が高いと思われる。一方、賃金の実質化に用いられる消費者物価指数の「持家の帰属家賃を除く総合」は直近11月分で前年比+3.3%と非常に高い伸びとなっているが、食料品価格の伸び鈍化や旧暫定税率廃止に向けてのガソリン補助金拡大が下押し要因となることで、12月には前年比+2%台半ば程度まで鈍化することが予想される。微妙なところではあるが、冬のボーナスの伸び次第では賃金の伸びが物価を上回る可能性もあるだろう。
その先は、政府による電気・ガス代補助金の実施が物価の押し下げ要因となる。今回の補助額はかなり大きく、これによりCPIコアは2、3月に▲0.6~▲0.7%Pt、4月に▲0.2%Pt程度押し下げられるとみられる。この結果、26年2~3月のCPIコアは前年比+2%割れ、「持家の帰属家賃を除く総合」も前年比+2%程度まで鈍化するとみられる。この場合、実質賃金も小幅とはいえプラスとなる可能性が高いだろう。このように、ボーナス増加や物価の鈍化を主因として、25年12月以降には実質賃金がプラスになる月も出てくるとみられる。
一方、懸念されるのが円安による物価上振れリスクだ。今後の為替レートの動向次第では、企業が価格転嫁を積極化させ、値上げが再び加速する可能性も十分ある。その場合、食料品価格の鈍化ペースが想定よりも緩やかなものにとどまり、CPIが思うように鈍化しないという展開も十分ありうるだろう。電気・ガス代補助の額が大きいこともあり、26年2、3月の実質賃金はプラスになる可能性が高いと思われるが、補助が縮小・終了に向かう4月以降については不透明感が残る状況である。年度替わりである4月に値上げが前年以上に積極化する場合、4月以降の実質賃金が再びマイナス圏に沈む展開もあり得るだろう。
1 CPIの「持家の帰属家賃を除く総合」で実質化した値。「総合」で実質化した値は前年比▲0.4%(9月:同▲0.7%)。「二つの実質賃金」についての雑感 ~追加系列では0.6%ポイント程度高く算出される見込み~ | 新家 義貴 | 第一生命経済研究所を参照。
新家 義貴
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 新家 義貴
しんけ よしき
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経済調査部・シニアエグゼクティブエコノミスト
担当: 日本経済短期予測
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