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年初にマグロの初競りが行われて、例年高値が付く。2026年1月5日は1kg210万円という破格の高値になった(落札額5億1,030万円)。このマグロ価格は、その年の年末株価の前年比との間に連動性があると言われる。本稿では、そのことについて追跡調査をしてみた。
初競りの高値
東京の豊洲市場では、例年マグロの初競りが行われて、これが大きな話題になる。2026年は落札額5億1,030万円と破格の高値が付いた。重量は243kgだから、1kg当たりの単価は210万円になる。2024年は1kg当たり48万円(落札額11,424万円)、2025年は1kg当たり75万円だった(落札額20,700万円)。
筆者が発見した関係性ではないが、このマグロ初競りの単価が、その年の年末株価の前年比との間で相関関係があるという面白いデータ分析がある(図表1)。筆者は、映像メディアからその追跡調査を求められた。せっかく分析するのだから、本稿でその結果を公開しておきたいと思う。

株価との相関関係
まず、2000年以降の年次データを使って、マグロ単価と株価水準(年内高値、年内安値、年末値とそれぞれの前年比)の相関係数を調べてみると2000年以降の相関関係はそれほど高くなかった。株価指標でかなりばらついているという印象である。そこで、データの相関関係を2010~2025年に絞って同じ計算をすると、日経平均株価・年末値の前年比との間には0.54という相関係数が出てきた(図表2)。相関関係はないとは言えないが、一方で極めて高いとも言いにくい。言葉で表現すると、「マグロ単価とその年の年末株価の伸び率の間には、いくらか関連がある」ということは言えそうだ。お正月に縁起を担ぐものとして、人々から注目されているのだろう。

なお、細かくデータ推移をみると、マグロの初競り価格は、2013年、2019年に大きく上がっていた。この両年の伸び率が高いために、相関関係が高まっているという可能性もあるので、2010~2025年にかけて両年のデータを抜いたもので同じように相関係数を計算してみた。すると、相関係数は0.51と引き続き同じような数値になっていた。ここから、マグロ単価と年末株価の伸び率は、安定的な関係であるということは言えそうだ。
データの意味
よく聞かれる話は、「マグロの初競り価格(単価)が高いと、その年の株価も上がる」というものだ。これは、年初(本年は1月5日)の初競りの価格が、約1年後(2026年12月末)の株価の伸び率に対する先行指標になるという理解になるだろう。
2026年の初競りの単価は、マグロ1kg当たり210万円と過去最高(2019年120万円/kg)を更新している。経験則が正しければ、2026年末の株価は著しく上がるという予想が成り立つ。筆者は、経済分析を生業とするエコノミストではあるが、金融市場の関係者として、お正月早々から縁起を担ぐような変化を敢えて否定することはしない。
少し分析的なことをすると、マグロを高値で競り落とす業者は、その年の消費拡大を見越して高価格を付けるのではないかという仮説を考えることはできる。しかし、この仮説を調べてみると、GDPの家計最終消費の伸び率(年度と暦年、実質と名目)は、このマグロ価格との間でそれほど高い相関にはなかった。事業者の消費予想が、マグロの初競り価格に投影されているとは言いにくい。
むしろ、マグロ価格には、事業者の支出してもよいと考える広告価値が投影されていると考えられる。高値で競り落としたことが話題になれば、それなりに大きな広告宣伝効果も期待できる。近年は、ネット配信の注目ニュースが拡散されやすくなっているので、テレビ・新聞の報道以外のチャネルで扱われる波及効果が大きく見込めると考えているのであろう。
日本の広告費は、2019年まで増加していたのが、コロナ禍で一旦落ち込んで、その後は高値を更新している(図表3)。株価の方は、この広告宣伝費の変動とリンクしている可能性がある。通常、企業は収益拡大の見通しが強まれば、広告宣伝費を増額してもよいと考える。収益拡大に強気の事業者が増えるとき、株価もそのムードに反応して上がりやすくなる。株価を動かす各種要素の中で、マグロの初競りはほんの僅かなインパクトでしかないが、企業心理とマグロの初競りの落札業者のマインドとの間には何らかの同調性があるのだろう。

熊野 英生
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

