- 要旨
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12月18・19日は、日銀の金融政策決定会合がある。筆者は、このタイミングで追加利上げに踏み切る公算が高くなっているとみる。この12月会合を見送れば、日銀は後手に回り、円安加速を許すことになるからだ。イベント・リスクが12月から年初にかけてある。それを頭に入れながら日銀は利上げを模索するだろう。
円安基調は加速する
趨勢的な円安が進んでいる(図表1)。12月18・19日は、日銀の金融政策決定会合が開かれる。市場観測では、ここで利上げが実施される可能性をあまり高確率ではみていない。しかし、筆者は12月利上げの公算は高いと予想する。理由は、利上げを見送れば、円安はクリスマスや年末年始の時期に大きく進む可能性があるからだ。円安対策の利上げはあり得る。今後のイベント・リスク次第では、1ドル160円という危険水域を越えることもあり得る。

12月利上げは、現在政府が推進している物価高対策のための経済対策とも整合的である。高市首相が、利上げにブレーキをかけることはないと予想する。日銀が通貨当局と一体になって円安防止に協力する格好になるだろう。
思考実験として、仮に、12月に利上げを見送って、2026年1月に追加利上げを行う場合にはどういったシナリオが予想されるだろうか。1月の会合は、1月22・23日に開催される。もしも、日銀が12月利上げを見送って円安が1月会合までに大幅に進んでいれば、ビハインド・ザ・カーブ(出遅れ、後手に回る)という批判が噴出するだろう。
反対に、12月利上げは、先走りとか、見切り発進という批判になるだろう。筆者は、両者のリスクを比較考量すると、出遅れリスクの方が大きいとみる。1月会合は展望レポートの示されるタイミングでもある。円安が進んだ後で、1月会合に利上げをして物価安定のシナリオを描いてみせても、あまり説得力はない。むしろ、12月のクリスマス前に日銀が利上げをしておくと、2026年度の当初予算案が発表されても、円安は進みにくく、市場関係者の物価予想を高めない効果がある。要するに、12月利上げを見送ると、民間部門の円安予想が強まり、それがインフレ・マインドを強める。それこそがリフレ政策なのだが、植田総裁や片山財務大臣はそうした選択を採らないと考えられる。
イベント・リスク
高市政権が誕生して円安が進んだ。金融緩和が維持されるという見通しからだ。高市首相が、日銀の利上げ方針に待ったをかけるという観測も強い。そして、総合経済対策が発表されて、国費21.3兆円を投じる計画が明らかになる。追加的な国債発行額は12.7兆円とされる。怖いのは、クリスマス前後に明らかになる2026年度の来年度本予算案で、同様に巨大な予算規模になることである。2026年度に市場で消化しなくてはいけない国債発行額が巨大化すると、長期金利はさらに上昇することになる。物価上昇の予想が強まって円安も進む可能性が高い。12月の決定会合は、その手前の19日に政策発表が行われる。日銀が12月利上げを見送って、そこで円安予想が強まり、さらに本予算案の発表でもう一段の円安加速が起こるというリスクである。毎年、年末年始は為替レートが大きく動きやすい。当然、投機的な円安が起こって、予想外の水準まで円安が進むこともあり得る。こうしたイベント・リスクが12月から1月にかけてあることを頭に入れると、日銀はそのリスクに先手を打つことも十分にあると考えられる。
ドル安要因
ドル円レートは、米国側の要因でドル安が進む圧力もある。FRBが12月10日に利下げを実施すれば、それはドル安要因である。クリスマス頃には、2026年5月以降に就任する次期FRB議長の名前も明らかになる見通しである。現在、NEC(国家経済会議)のハセット委員長が最有力として名前が挙がる。この人物がトランプ大統領の意向を受けて、利下げを何回も継続すればドル安が進むことになるだろう。中立金利の3.0%までの利下げを急ぐというシナリオが想定される。もしも、こうした米金融政策の転換が起これば、円安基調が修正される可能性はある。しかし、その場合は波乱を起こすこともあるだろうから、あまりメイン・シナリオにはできないと筆者は考える。追加利下げを何回か行えば、米国経済では今度はインフレ圧力が鮮明になって、3.0%の手前で利下げが中断される可能性も十分にある。
また、ドル指数は2025年に入るとドル安傾向を辿っている。この間、日本は円安で推移しているので、円独自の要因で円安が進んだと理解できる。つまり、FRBや米国の要因でドル安圧力が生まれても、ドル円レートは依然として円安傾向を辿る可能性は小さくない。そうした意味でも、日銀はFRB・米国の動きを待ってから動くというよりも、先手を打つのではないかと考えられる。
熊野 英生
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