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2025.11.18
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チリ大統領選、前回と同じ左派と右派による決選投票へ
~中南米での「ピンクの潮流」は一段と後退、ペソ相場は期待先行で強含んでいる可能性~
西濵 徹
- 要旨
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チリでは16日、大統領選の第1回投票が行われ、左派のハラ氏が1位(26.85%)、右派のカスト氏が2位(23.92%)となり、来月の決選投票では前回と同じ左右対決が行われることとなった。義務投票制の再導入を受けて、投票率は85.29%と前回から大幅に上昇することとなった。
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候補者の主張をみると、治安・移民問題で強硬姿勢を打ち出す右派候補が、より多くの支持を集めた。よって、有権者の関心は進歩的な改革より治安・移民対策に移っている様子がうかがえる。こうしたことから、決選投票ではカスト氏が優勢との見方が広がりをみせている。
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中南米では「ピンクの潮流」と呼ばれた左派政権の広がりが後退し、アルゼンチンやボリビアで右派回帰の動きが顕著になっている。チリでもカスト氏が勝利すれば、この流れが一段と強まる可能性がある。また、チリでの保守政権誕生は、資源ナショナリズムの見直しや対中関係の変化といった動きも予想される。
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同時に実施された議会選でも右派が伸長しており、カスト氏の勝利を見込んで金融市場ではペソが強含んでいる。しかし、ペソ相場は銅価格に連動しやすく、その動向が変化する可能性には要注意である。
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南米チリでは16日、ボリッチ現大統領の任期満了に伴う大統領選(第1回投票)が行われた。現行憲法では現職による連続再選は認められておらず、ボリッチ氏は出馬できないなか、現在の左派路線が継承されるかどうかが注目された。左派のボリッチ氏を巡っては、トランプ米大統領に対する批判とも取れる発言をきっかけに米国との関係に緊張感が高まる動きがみられた。
大統領選には計8人が出馬したが、世論調査においては右派や中道右派色の強い候補が優位に選挙戦を展開してきた。こうしたなか、ボリッチ政権で労働・社会相を務めたハラ氏がボリッチ政権の路線を継承しつつも、トランプ米政権との過度な対立を避ける主張を展開し、左派層や中道穏健層からの支持を固める動きをみせた。その一方、前回大統領選の決選投票でボリッチ氏に敗れた右派のカスト氏は、トランプ氏を称賛する動きをみせるとともに、治安対策の強化を目的に国境地帯における電気柵設置による封鎖に加え、不法移民の国外退去を訴えるなど国民保守主義色の強い主張を展開した。こうしたことから、今回の大統領選も前回同様に、左派(ハラ氏)と右派(カスト氏)という両極端な候補による選挙戦となった。
開票の結果、1位はハラ氏(26.85%)となるも過半数に至らなかった。次点はカスト氏(23.92%)となり、来月14日に実施される決選投票に持ち越され、前回大統領選と同じ左右両派対決という構図で行われることとなった。2023年に施行された憲法改正により義務投票制が再導入されたことで、今回の投票率は85.29%と前回(第1回投票:47.33%)から大幅に上昇した。なお、事前調査では下位であったにもかかわらず、中道右派のパリジ氏(19.41%)は前回同様に3位に着けたものの、同氏は移民を抑制すべく北部の国境地帯の一部に地雷の敷設を提案するなど強硬論を展開し、選挙戦最終盤に支持を集めた模様である。そして、4位には右派ポピュリズム色の強いカイザー氏(13.94%)、5位には右派でピニェラ元政権において労働・社会相を務めたマテイ氏(12.46%)が続いた。こうした票の動きをみると、多くの有権者は進歩的な改革よりも犯罪対策や移民問題といった社会課題を重視している様子がうかがえる。よって、決選投票においてはカスト氏が優勢とみる向きが増えている。
中南米地域では、左派政権が広がりをみせる『ピンクの潮流』とも呼べる動きがみられたものの、このところは右派政権に回帰する動きがみられる。アルゼンチンでは保守のミレイ大統領がトランプ米政権との連携を強めているほか、先月にはボリビアでも約20年続いた社会主義政権から保守政権に転換した。さらに、来年実施が予定されるペルーやコロンビアの大統領選でも保守勢力が優勢な情勢となっている。こうしたなか、仮に来月の決選投票で右派のカスト氏が勝利すれば、ピンクの潮流からの広範な回帰を示すことになる。また、世界最大の銅産出国であり、EV(電気自動車)用バッテリーに不可欠なリチウムの世界埋蔵量の3分の1を有するチリで保守政権が誕生すれば、ボリッチ政権下で進む資源ナショナリズム姿勢からの転換が進むことが見込まれる。そして、中国のチリへの影響力拡大の流れが変化する可能性も考えられる。
さらに、第1回投票と同時に実施された議会上下院総選挙においても左派勢力は議席を減らす一方、右派勢力が伸長する動きをみせており、こうした結果もカスト氏が決選投票で優位になるとの見方を後押ししている。選挙結果を受け、金融市場では通貨ペソ相場は強含む動きをみせており、当面はこうした動きが続く可能性がある。ただし、ペソは銅の国際価格と連動する傾向がある。足元の銅価格は中国経済の低迷にもかかわらず堅調な動きをみせており、先行きはそうした流れが変化するとともに、ペソ相場を取り巻く環境が変化する可能性にも注意が必要である。

西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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