2025年7-9月期GDP予測(1次速報)

~住宅投資と外需が足を引っ張り、前期比年率▲2.7%とマイナス成長を予想~

新家 義貴

住宅投資と外需が落ち込む

11月17日に公表される2025年7-9月期の実質GDP成長率を前期比年率▲2.7%(前期比▲0.7%)と予測する 。4-6月期は前期比年率+2.2%の高成長だったが、これを吐き出す形になるだろう。前年比でも伸びが大幅に鈍化する見込みである。

マイナス成長の主因は外需と住宅投資だ。7-9月期の輸出は前期比▲1.9%と2四半期ぶりの減少を予想する。なかでも落ち込みが大きかったのが米国向けの自動車輸出だ。米国の関税引き上げの中でも、日本の自動車メーカー各社は輸出価格を引き下げて数量確保を図っていたが、7-9月期には数量ベースでも減少幅が拡大した。輸出価格は依然として低水準に据え置かれており、この落ち込みが関税引き上げの影響によるものかどうかははっきりしないが、気になる動きであることは確かだ。なお、7-9月期は輸入も減少が予想されるものの、輸出の落ち込み幅の方が大きいため、外需寄与度はマイナスになる可能性が高い。外需だけで実質GDP成長率を前期比年率▲1.0%ポイント度押し下げるとみられる。

もう一つの成長率押し下げ要因は住宅投資であり、前期比▲11.0%と二桁減を予想する。住宅投資がGDPに占める割合は3~4%に過ぎないため、通常であれば住宅投資の動向がGDP成長率に大きな影響を与えることはないが、ここまで大きな落ち込みとなれば話は別だ。この住宅投資の急減により、7-9月期の実質GDPは前期比年率で▲1.5%Pt押し下げられる見込みである。

急減の理由は法改正を背景とした駆け込み需要からの反動減である。25年4月の建築基準法・省エネ法改正によって、省エネ基準の適合義務化や「4号特例」の縮小など、住宅建設や大規模リフォームのコスト増・手続き負担増・工期長期化が生じた。多くの事業者が改正前に着工を前倒ししたことで3月の住宅着工は急増したが、駆け込み需要の反動が生じたことで4-6月期の着工は歴史的な減少となった。(詳しくは、急減する住宅着工とGDPへの影響 ~法改正前の駆け込みと反動。7-9月期のGDPを大きく押し下げる可能性あり~ | 新家 義貴 | 第一生命経済研究所をご参照ください)

GDPの住宅投資は工事の進捗ベースで計上されるため、着工とはタイムラグがある。4-6月期の住宅投資は3月分の駆け込み着工案件が進捗したことの影響で前期比プラスとなったが、7-9月期は反動減の影響が一気に顕在化することで急減する可能性が高い。

住宅投資の前期比ベースでの落ち込みは一時的なものにとどまる可能性が高いことに加え、輸出についても4-6月期の増加からの反動やサービス輸出減といった面もあるため、7-9月期の成長率の弱さについて過度に悲観視する必要はないだろう。とはいえ、足元では株価の上昇等もあって楽観的な見方が広がっていたことも事実であり、7-9月期の成長率下振れは、この楽観ムードに一石を投じるものとなる可能性がある。株価の上昇が続く一方、実体経済は力強さに欠けていることが改めて確認される結果になるとみられる。

需要項目別の動向

個人消費は前期比+0.1%と微増を予想する。均してみれば緩やかな増加傾向にあると判断できるが、物価上昇が続くなか、力強さに欠ける動きが続いている。食料品価格は前年比でみればピークアウト感が出ているものの、これは前年の高い伸びの裏が出ている面が大きい。企業による値上げの動きは収まっておらず、前月比でみれば上昇が続いている。こうした食料品価格上昇による実質購買力抑制が個人消費の頭を押さえる状況は変わっていない。

図表1
図表1

設備投資は前期比+0.7%と4四半期連続の増加を予想する。高水準の企業収益が続いていることに加え、デジタル・省力化投資、研究開発投資などによる押し上げもあり、設備投資は増加傾向が続いている。今のところ、米国の関税引き上げによって企業の設備投資意欲に陰りが出ている様子は窺えない。もっとも、今後、輸出関連製造業を中心に業績への悪影響が顕在化する可能性は残っており、先行きについては慎重に見ておく必要があるだろう。

輸出は前期比▲1.9%と減少を予想する。EUやNIEs向けが伸びた一方、米国向けが大きく落ち込んだ。財別ではIT関連財が増加した一方、自動車の減少幅が大きい。また、サービス輸出(除く直接購入)が前期の増加からの反動で大きく減少したほか、インバウンド需要(非居住者家計の国内での直接購入)も、災害が発生するとの誤情報が拡散した影響が残ったことで減少するとみられる。

また、輸入も前期比▲0.7%と3四半期ぶりの減少が予想される。7-9月期は輸出入とも減少したとみられるが、輸出の落ち込みの方が大きいことから外需寄与度は前期比▲0.3%Pt(前期比年率+1.0%Pt)と、成長率の押し下げ要因になる可能性が高い。

民間在庫変動は前期比寄与度▲0.2%Ptと、成長率の押し下げ要因になったと予想する。製品在庫でプラス寄与が見込まれる一方、1次速報段階では仮置きとなっている仕掛品在庫と原材料在庫がマイナス寄与になることが見込まれる。

住宅投資は前期比▲11.0%を予想する。前述のとおり、法改正を背景とした駆け込み需要からの反動の影響が顕在化することで、大幅な減少となるだろう。

新家 義貴


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新家 義貴

しんけ よしき

経済調査部・シニアエグゼクティブエコノミスト
担当: 日本経済短期予測

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