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2025.10.17
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ペルー、政治空白長期化に懸念も、通貨ソルはなぜ力強い?
~実質金利の高さや銅、金価格が追い風の可能性、実体経済や政治情勢との乖離が続く可能性も~
西濵 徹
- 要旨
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- ペルー共和国議会は、今月9~10日にかけてボルアルテ前大統領の罷免を全会一致で承認、理由に「恒久的な道徳的無能力」を挙げた。2022年のカスティジョ元大統領の弾劾に続き、2代連続で大統領が罷免される異例の事態となった。暫定大統領にはヘリ前議長が就任したが、過去のスキャンダルにより国民の反発が強い。ボルアルテ氏弾劾の背景には、同氏の疑惑や汚職、治安悪化への反発があった。さらに、Z世代を中心とした反政府デモが各地で発生し、首都リマでは警官隊との衝突で死傷者も出た。ヘリ氏は調査を表明したが、政府への不信は一段と強まる可能性がある。一方、政治混乱にもかかわらず、インフレ鈍化による実質金利の高さや銅・金価格の上昇が背景に通貨ソルは堅調だ。米FRBの利下げを受けて世界的な資金流入による金融相場化が進むなか、当面は実体経済や政治との乖離が続く可能性がある。
南米ペルーでは、共和国議会(一院制)が今月9日夜から10日未明にかけ、ボルアルテ前大統領の罷免を求める動議を協議し、これを賛成多数で審議を進めるとともに、全会一致で同氏に対する罷免を承認した(注1)。なお、議会は今回のボルアルテ氏に対する弾劾決定の理由に「恒久的な道徳的無能力(道義的能力の欠如)」を挙げたものの、この理由は過去にも議会が大統領を解任するために用いられており、議会と大統領の強いけん制関係が存在する傾向がうかがえる。2022年には、カスティジョ元大統領が憲法秩序を乱したことを理由に弾劾されており、2代連続で大統領が弾劾によって罷免される格好となった。
同国では今年3月、ボルアルテ前大統領が次期大統領選と総選挙を来年4月12日に実施することを決定しており、実施まで残り半年となるなど『政治の季節』が到来している。こうしたなか、議会は次期大統領選と総選挙までの選挙管理を目的とする暫定大統領に前議長であったホセ・ヘリ氏を指名した。しかし、ヘリ氏を巡っては、過去にコロナ禍の外出規制の最中に外食をしていたほか、性的暴行容疑(その後に証拠不十分を理由に棄却)、女性蔑視疑惑、不当利得疑惑、贈収賄疑惑など複数のスキャンダルが取り沙汰されてきた。ヘリ氏は自身への疑惑を否定するとともに、贈収賄疑惑などを巡って捜査当局に協力する意向を示しているものの、国民の間では同氏の大統領昇格に対する反発が根強いとされる。
ボルアルテ氏に対する弾劾が成立した背景には、ボルアルテ氏に様々な疑惑が噴出したことに加え、同国政界に根強い汚職への反発、犯罪増加に対して政府が有効な手立てを打つことが出来ないことへの反発が後押ししたとされる。同国では、カスティジョ氏への弾劾をきっかけに反政府デモが激化し、その後も抗議活動が散発的に発生、足元ではいわゆる『Z世代』がデモを主導するなど、世界的に若年層を中心にしたデモが広がりをみせるなかで、同国にもそのうねりが到達している。こうしたなか、Z世代の間では上述のように疑惑が山積するヘリ氏に対する反発も強く、15日には若年層や労働者、市民団体が呼び掛ける形でヘリ氏に対する大規模デモが実施された。
全国で実施された反政府デモには数千人が参加したとされるなか、首都リマでは議会前に数百人のデモ隊が集まり、警察と衝突した結果、1人が死亡し、多数の負傷者が発生した模様である。ヘリ氏は自身のSNSに死者への哀悼を示す投稿を行うとともに、客観的な調査を行う方針を示した。ヘリ氏の対応については、ボルアルテ氏がカスティジョ氏への弾劾をきっかけに発生した反政府デモの鎮圧を巡って、責任を回避する姿勢をみせた結果、火に油を注ぐ事態となったことへの反省が影響したとみられる。ただし、デモの鎮圧を巡って死傷者が出たことを受けて、政府に対する反発が一段と強まる可能性があるとともに、政治空白が長期化することも考えられる。このような状況にもかかわらず、足元の通貨ソルの対ドル相場は堅調な推移をみせるなど、実体経済や政治を取り巻く状況と無関係な動きをみせている。この背景には、インフレ鈍化を受けて実質金利(政策金利-インフレ率)が高止まりしていること、ペルーの主要輸出財である銅や金の国際価格が上昇していることがある。こうした動きは、実体経済が芳しくないにもかかわらず、金価格と連動する傾向が強い南ア・ランド相場と類似している(注2)。足元の金融市場を巡っては、FRB(米連邦準備制度理事会)による利下げなどを追い風にした全世界的な『カネ余り』による金融相場の様相を強めており、当面は実体経済や政治の動きと乖離した展開が続く可能性に留意する必要がある。

注1 10月10日付レポート「ペルー議会がボルアルテ大統領の罷免可決、政治混乱の行方は」
注2 10月3日付レポート「南ア・ランドはなぜ金価格と連動する傾向があるのか?」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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