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2025.10.09
アジア経済
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FTSEラッセルがベトナムを「新興国市場」に格上げ、市場環境は?
~海外からの資金流入に期待の一方、実体経済が金融市場の変動を招く可能性が高まるか~
西濵 徹
- 要旨
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FTSEラッセルは7日、ベトナムを「新興国市場」に格上げすると発表した。これはベトナム当局による市場改革の進展を評価したものであり、なかでも昨年末の外国人投資家の資金拠出義務撤廃が重要な要因になったとみられる。来年3月の中間審査を経て、9月に正式な格上げが行われる予定である。
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足元のベトナム経済は米中摩擦による「漁夫の利」を享受しおり、高成長を維持している。トランプ関税も協議を経て緩和され、現時点においては大きな影響は出ていないが、今後の通商環境には不確実性が残る。また、都市部を中心に少子高齢化が進展しており、人口ボーナス期の終えんも着実に近づいている。
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今回の格上げにより、ベトナム市場には海外からの資金流入が期待されるほか、IPO市場の活性化や株式市場の拡大が見込まれる。VN指数は上昇傾向が続くなど活況を呈する一方、通貨ドンの対ドル相場は調整するなど対照的な動きをみせる。実体経済の動向が金融市場の変動を招く可能性には要注意である。
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株式指数プロバイダーであるFTSEラッセルは7日、ベトナムを「新興国市場」に格上げすることを発表した。同社は2018年にベトナムを格上げ候補として市場リストに追加しており、ベトナム当局による市場改革の進捗を評価したものと捉えられる。ベトナム当局は昨年11月に外国人投資家が株式取引する際の事前全額資金拠出義務を廃止した。これは格上げに向けた重要な前提条件のひとつとされる。今後、来年3月にグローバルなブローカーを通じて市場アクセスが進展しているか否かを確認する中間審査が実施され、来年9月21日に格上げが実施される予定である。
ベトナム経済を巡っては、過去数年にわたる米中摩擦の背後でその『漁夫の利』を享受する状況が続いており、足元においても高い経済成長を実現している(注1)。トランプ米政権は当初、同国に対する相互関税を46%と極めて高水準としたため、悪影響が懸念されたが、その後の協議を経て税率は20%と大幅に引き下げられた。米国との通商合意では、中国による迂回輸出を念頭に追加関税を課す内容が盛り込まれたものの、現時点においては追加関税の対象に関するガイダンスのほか、迂回輸出の定義も示されておらず、その影響は出にくい状況にある。したがって、当面はトランプ関税による直接的な影響は限定的なものに留まる可能性があるものの、サプライチェーンの見直しに加え、中国との価格競争の激化も見込まれるなど、外需を取り巻く環境は厳しさを増すことが懸念される。さらに、ベトナムにおいても都市部を中心に少子高齢化が社会問題化しており(注2)、向こう10年以内に人口ボーナス期が終えんを迎えると見込まれる。よって、金融市場のなかには同国経済が中長期的に高い経済成長を実現するとの見方があるものの、そうした見通しについては『時間軸』の重要性が増していると考えられる。

しかし、今回の格上げによって、これまでパッシブ投資家による資金流入が期待できない「フロンティア市場」から、資金流入が期待される「新興国市場」となる。よって、今後は海外から一定程度の資金流入が起こるとともに、IPO(新規株式公開)市場が活発化するなど株式市場のすそ野の拡大や厚みが増していくことが期待される。年明け以降のベトナム金融市場においては、景気の堅調さを追い風に主要株式指数(VN指数)は上昇の動きを強めてきたほか、今回の格上げ決定を受けて最高値を更新するなど活況を呈している。その一方、トランプ米政権の政策運営の不確実性に加え、FRB(米連邦準備制度理事会)による利下げ実施も追い風に米ドル安が意識されやすい状況が続いている。こうした状況もかかわらず、ドンの対ドル相場は調整が続くなど対照的な動きをみせている。今回の格上げに伴う海外からの資金流入の期待は市場を取り巻く環境を変化させる可能性はあるものの、今後はトランプ関税による影響の顕在化が見込まれるなか、市場環境が大きく変動することに留意する必要がある。

注1 10月7日付レポート「ベトナム7-9月GDPは前年比+8.23%、力強い景気が続く」
注2 6月5日付レポート「ベトナムも少子高齢化に直面、「二人っ子政策」廃止で人口維持に舵」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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