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2025.06.05
アジア経済
その他アジア経済
人口減少・少子化
ベトナムも少子高齢化に直面、「二人っ子政策」廃止で人口維持に舵
~少子高齢化と男女比の歪さ解消に舵も、政策の実効性を高めることが出来るかに課題~
西濵 徹
- 要旨
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日本では2024年の出生数が70万人を割り込むなど、少子高齢化が急速に進んでいることが確認された。日本国内では「若者が多い」とみられる傾向があるアジア新興国においても、近年の高成長や都市化の進展、女性の社会進出など複合的な要因が影響して、都市部を中心に少子高齢化の波が広がっている。
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ベトナムの合計特殊出生率は比較的安定してきたが、コロナ禍も影響して大きく低下し、2024年には1.91と過去最低となった。都市部で低下し、最大都市ホーチミンでは1.39に留まる。政府は出産に対する診断料の補助や給付金など経済的支援に動くが、効果は限定的であり、人口減少予想時期の前倒しも必至である。
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こうしたなか、国会は人口法を改正し、1998年に導入された「二人っ子政策」が撤廃されるとともに、共産党員への出生制限違反に対する処分も廃止されることとなった。併せて、近年問題化している男女比の不均衡に対応すべく、胎児の性別選択の全面禁止や罰金の大幅引き上げといった措置も盛り込まれる。
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今回の法改正により、ベトナムは持続可能な人口開発に政策の重点をシフトさせることで、急速な少子高齢化や男女比の歪みに対応する構えをみせた格好だが、一連の対策の実効性が今後の課題になろう。
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日本の厚生労働省が公表した2024年の人口動態統計に拠れば、同年の出生数は68.6万人と1899年の統計開始から初めて70万人を下回るとともに、合計特殊出生率も1.15と前年(1.20)から0.05pt低下して3年連続で過去最低を更新した。なお、2023年4月に国立社会保障・人口問題研究所が公表した将来推計人口(中位推計)では、出生数が68万人台に低下するのは2039年と想定されていたものの、現実には15年前倒しされた格好であり、少子高齢化が想定以上に進んでいることが明らかになった。
なお、日本国内でアジア新興国といえば、「若年層人口の多さを追い風に高い経済成長を実現している」などと理解される傾向が強い。しかし、近年の高い経済成長やそれに伴う都市化の進展、都市部を中心とする生活コストの上昇、女性の社会進出の加速を受けた結婚・出産観の変化などといった複合的要因を理由に、アジア新興国においても都市部を中心に少子高齢化が進展する動きが確認されている。さらに、コロナ禍を経て各国の出生数は大きく下振れしたことも重なり、想定を超えるスピードで少子高齢化が進む国もみられる。
こうしたなか、ベトナムにおいては、人口増に伴う貧困の長期化が懸念された1998年に人口抑制策としての『二人っ子政策』が導入された経緯がある。しかし、同国においても他のアジア新興国同様に、近年の高成長や都市化の進展などを理由に合計特殊出生率は低下傾向を強める動きがみられた。とはいえ、都市部で急速な低下が確認される一方、農村部においては高水準を維持する展開が続いたため、国全体としての合計特殊出生率は人口置換水準とされる2.1近傍で推移し、比較的安定した動きをみせた。しかし、コロナ禍という特殊事情もあり、2022年以降は合計特殊出生率が大きく低下して人口置換水準を下回る水準となった。さらに、その後も低下の動きに歯止めが掛からず、2024年の合計特殊出生率は1.91と過去最低を更新する事態となった。

さらに、農村部の合計特殊出生率は2.08と依然高い水準を維持するも、都市部では1.67とこれを大きく下回り、なかでも最大都市のホーチミン市は1.39とすべての省・市と最も低く、都市部において少子高齢化が深刻化していることが明らかになっている。こうした事態を受けて、地方政府レベルながら出生前や新生児の検査・入院費用の支援のほか、出産に際しての給付金の支給といった経済的支援が行われているものの、経済的支援による事態の大幅な改善は難しいのが実情である。政府推計では、同国は2039年に人口ボーナス期を終え、2042年に生産年齢人口がピークを迎えた後、2054年に人口減少局面に突入すると予想しているが、足元の状況はその想定を上回るペースで少子高齢化が進んでおり、人口減少に転じる予想時期が大きく前倒しされる可能性が高まっている。
こうしたなか、国会常務委員会において、3日に人口法改正案が可決・成立された。改正前の同法第10条では、政府が定める特別な場合を除いて、夫婦や個人は3人以上の子供を持つことが出来ないと規定し、いわゆる『二人っ子政策』が敷かれていた。しかし、改正により、夫婦や個人は年齢や健康状態、学習・労働条件、収入、育児能力などに応じて出産の時期や子供の人数、出生間隔を自由に決定できることになる。また、共産党中央監査委員会が党組織・党員による党規違反を巡る処分に関する通達を発表し、これにより3人以上の子供を設ける党員への処分が廃止されることとなった。急速な少子高齢化により将来的な経済成長の土台が揺らぐ懸念が高まるなか、同国は二人っ子政策の廃止により人口水準の維持に舵を切った格好である。
他方、同国の人口問題を巡っては、男女比率の不均衡が強まっていることも問題となっている。同国では歴史的に男児が優遇される傾向があることもあり、男児が女児に比べて1割以上多い状態が続くなど、いわゆる『産み分け』が疑われる動きがみられる。こうしたなか、改正人口法では政策の重点が従来の『家族計画』から『持続可能な人口開発』にシフトさせるとともに、2030年までに男女出生比の歪みを抑えることが盛り込まれている。具体的には、胎児の性別選択をすべて禁止するとともに、医療施設に対して結婚前の健康相談、妊産婦や新生児へのスクリーニング検査や治療サービスの提供を義務付けるとしている。その上で、胎児の性別選択に対する罰金を、現行の最大3000万ドンから最大で1億ドンに大幅に引き上げる。男女比の歪さを巡っては、中国やインドにおいても社会問題化しているが、社会的背景などが影響するなかで多くの国で効果的な策が打ち出されていないのが実情である。今後は政策とその効果の関係を精緻に積み上げていく必要があろう。

西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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