消費者物価指数(全国・2025年8月)

~食料品価格の伸びがピークアウトも、先行きの鈍化ペースには不透明感~

新家 義貴

図表
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電気・ガス代補助再開により伸び鈍化

本日総務省から発表された25年8月の全国消費者物価指数(生鮮食品除く)は前年比+2.7%と、前月(+3.1%)から上昇率が0.4%Pt縮小した。鈍化幅は大きいが、市場予想通りの結果であり意外感はない。8月分から政府による電気・都市ガス代の補助が一時的に復活したことで、電気代、ガス代が大幅に値下がりしたことの影響が大きい(電気・都市ガス代の前年比寄与度:7月▲0.04%Pt→9月▲0.34%Pt)。

また、エネルギー以外のコアコア部分については、日銀版コア(生鮮食品及びエネルギーを除く総合)が前年比+3.3%(7月:+3.4%)とやや鈍化、米国型コア(食料及びエネルギー除く総合)が前年比+1.6%(7月:+1.6%)と変化なしだった。日銀版コアについては、これまで上昇率の加速が続いていた食料品(生鮮除く)が前年比+8.0%と、前月(同+8.3%)から鈍化したことが影響している。食料品(生鮮除く)の上昇率が前月から鈍化するのは24年7月以来のこと。コメ価格の上昇率鈍化が効いている。米国型コアは前月から伸びは変らないが、炊飯器などの耐久消費財が鈍化していることが目につく。輸入価格下落の影響が波及し始めている可能性もあるため、今後の動向に注意したい。

コメ価格鈍化により、食料品価格が前年比でピークアウト

電気・ガス代は前月から下落率が大きく拡大した(電気・都市ガス代の前年比寄与度:7月▲0.04%Pt → 8月▲0.34%Pt)。7月~9月(CPIへの反映は8月~10月)に期間限定で電気・ガス代補助金が復活したことにより押し下げられている。総務省によると、この補助金による押し下げ分(CPI総合への寄与)は▲0.26%Ptとのことである。

ちなみに、電気・ガス代補助金は昨年と今年で実施時期や補助額のズレがある(CPIへの反映時期:昨年:9月~11月、今年:8月~10月)。そのため、前年の裏の関係で8月は下振れ、9月、11月は上振れ、12月は下振れなど前年比で見た場合の影響が複雑になることに注意が必要である。補助金要因による攪乱はまだ続きそうだ。

ガソリン、灯油価格は、昨年の下落の裏もあって上昇率が拡大した(石油製品の前年比寄与度:7月+0.01%Pt → 8月+0.05%Pt)。なお、現在議論されているガソリン暫定税率廃止については、実施された場合にはCPIコアを▲0.2%Pt程度押し下げることになる(補助金も終了するケース)(ガソリン旧暫定税率廃止をめぐる動向と今後の課題 ~CPIコアを▲0.2%Pt弱押し下げ。補助金終了ならガソリンと軽油の価格逆転も~ | 新家 義貴 | 第一生命経済研究所)。

8月の食料品(生鮮除く)は前年比+8.0%(前年比寄与度:+1.99%Pt)と前月の+8.3%(同寄与度:+2.07%Pt)から鈍化した。引き続き非常に高い伸びだが、前年比でみればピークアウト感が出ている。コメ以外の食料品は7月、8月とも前年比+6.1%と高止まりしているが、コメ価格が大幅に鈍化(7月前年比+90.7% → 8月+69.7%)したことが響いた。コメ価格は水準でもやや切り下がっていることに加え、前年の急上昇の裏が出ている面も大きい。

先行きについては、前年の急上昇の裏が出やすくなることもあり、コメ価格の前年比でのプラス寄与は明確な縮小に向かうだろう。仮にコメの価格水準自体が下がらなかったとしても、前年比での伸び鈍化は間違いないところだ。コメ類による押し上げ分は大きい(8月:前年比寄与度+0.51%Pt)だけに、ここが鈍化すれば影響は大だ。一方、コメ以外の食料品については不透明感が強い。食品企業は現時点で積極的な価格引き上げ姿勢を崩しておらず、そう簡単に値上げを休止するとはいきそうにない。食料品価格は前年の裏要因を主因として先行き鈍化傾向に転じることがほぼ確実だが、鈍化のペースについてはまだはっきりしたことは言えない。

エネルギー以外のコアコア部分については、日銀版コア(生鮮食品及びエネルギーを除く総合)が前年比+3.3%(7月:+3.4%)、米国型コア(食料及びエネルギー除く総合)は前年比+1.6%(7月:+1.6%)となった。食料品価格のピークアウトで日銀版コアがやや鈍化、米国型コアは+1%台半ばで膠着状態にある。

先行きは鈍化を予想も、鈍化ペースには不透明感

先行きについては、CPIコアの上昇率は鈍化すると予想している。CPIコアは8月に+2.7%と+3%を割り込んだが、9月には電気・ガス代の前年の裏の影響で伸びが高まり、再び+3%台に乗せる可能性がある。ただ、その後は再び鈍化に向かうだろう。エネルギー価格の攪乱で基調が掴みにくいが、基本的には食料品、特にコメにおいて昨年の上昇率が極めて高かったことの裏が出ることで、食料品価格の上昇率が鈍化することが下押し要因となる。

このように、CPIが年末にかけて鈍化すること自体は規定路線なのだが、その鈍化ペースについては不透明感があることに注意が必要だ。食料品価格については強い動きが続いており、今後の食料品値上げ計画も高水準である。企業の値上げ意欲は引き続き旺盛だ。コメ価格の動向次第の面はあるが、食料品価格の鈍化ペースが以前想定していたよりも緩やかなものになる可能性は残る。また、足元ではまだサービス価格の上昇率が上振れる状況には至っていないが、人件費増等を理由に今後値上げが増えてくる可能性も否定できないだろう。ガソリンの旧暫定税率が実際に廃止されるかどうかといったことにも左右されるが、CPIコアが+2%を割り込むタイミングが、26年春頃まで後ずれすることも十分考えられる状況である。

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新家 義貴


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新家 義貴

しんけ よしき

経済調査部・シニアエグゼクティブエコノミスト
担当: 日本経済短期予測

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