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トランプ大統領がクックFRB理事の解任を発表

~FRBの独立性に懸念?~

前田 和馬

8月25日、トランプ米大統領はFRBのクック理事を即時に解任するとの文書を自身のSNSで公表した。クック理事が2021年(FRB理事就任前)に二つの不動産を居住用と申告して住宅ローンを借り入れたとし、こうした「詐欺的かつ犯罪的な行為」は「金融規制当局者としての能力と信頼性に疑問を投げかける」と指摘した。一方、クック理事は大統領に自身を解任する権限はなく、FRB理事を辞任する予定もないとの声明を同日中に公表した。なお、FRB理事の解任は「正当な理由」が必要であり、一般的に「非能率、職務怠慢、職務上の不正行為(inefficiency, neglect of duty, or malfeasance in office)」が該当すると考えられている。

現時点で考えられる今後のシナリオとしては、①解任の法的根拠が曖昧であるためにプロセスが進まず、クック理事が現職に留まり続ける、②クック理事が解任された後に政権を提訴し、裁判所が解任を無効としたうえで訴訟が進む、③クック理事が解任された後に政権を提訴し、裁判所が解任を認めたまま訴訟が進む、④クック理事が自ら辞任する、或いは解任を受け入れる、などが考えられる。①と②の場合はクック理事が現職に留まり続けるため、中央銀行の独立性への懸念は一時的に和らぐだろう。

一方、③と④の場合、そもそもクック理事が住宅ローン不正を働いたのかが焦点となる。理事就任前の私的な行為と解任の妥当性は議論になるとみられるが、ローン不正が事実であれば明らかに不適切な行為であり、今回の解任は米国内で一定の支持を得る可能性がある(2021年には2人の地区連銀総裁が個人的な金融商品取引を理由に辞任)。他方、③と④の場合で不正の明確な事実がなく、トランプ政権が利下げを進めるだけに解任を強行したと捉えられる場合、中央銀行の独立性に対する強い懸念が浮上する。

特にクック理事が解任され、トランプ大統領によって新たなFRB理事が指名される場合、7名の理事のうちトランプ大統領に指名された理事が4名と多数派になる(第一次政権時に指名されたボウマン副議長、ウォラー理事のほか、今後就任予定のミランCEA委員長、及びクック理事の後任)。FRBの理事会は12の地区連銀総裁(任期5年)の承認及び解任の権限を有しており、例えばトランプ政権が利下げに否定的な地区連銀総裁を解任するよう圧力をかける可能性がある。仮にトランプ政権の意向に沿うようにFOMCメンバー(投票権を持つのは理事7人と輪番制の地区連銀総裁5人)が入れ替わる場合、パウエルFRB議長が2026年5月に退任する前に、金融政策を決定するFOMCの議長から交代を強いられるリスクシナリオも否定できない(FOMC議長はFOMC参加者の投票によって選出:2025年4月18日付け「パウエルFRB議長の解任を巡るQ&A」などを参照)。

なお、仮にクック理事が解任される場合においても、クック理事の後任が9月FOMC(9月16~17日)までに就任する可能性は低いほか、(8月に突如辞任したクグラー理事の後任として)既に指名済みのミラン氏の上院承認が完了するかも不透明である。このため、現時点において、パウエル議長があくまでデータと経済見通しに基づき、9月FOMCにおける0.25%ptの利下げを決定する判断に大きな影響はないとみられる。ただし、今回の解任騒動で中央銀行の独立性が大きく揺らぐ懸念が強まる場合、利下げに慎重な見方を示している地区連銀総裁はトランプ政権の利下げ要求に抗議する意味を込めて、パウエル議長などの執行部の利下げ提案に反対票を投じるかもしれない。

以上

前田 和馬


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前田 和馬

まえだ かずま

経済調査部 主席エコノミスト
担当: 米国経済、世界経済、経済構造分析

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