- HOME
- レポート一覧
- 経済分析レポート(Trends)
- OPECプラス有志8ヶ国、自主減産を当初予定から1年前倒しで解消
- World Trends
-
2025.08.04
新興国経済
米中関係
原油
中国経済
インド経済
ロシア経済
産油国経済
トランプ政権
トランプ関税
OPECプラス有志8ヶ国、自主減産を当初予定から1年前倒しで解消
~9月も大幅増産で日量220万バレルの自主減産は解消へ、ロシア産原油の供給懸念もくすぶる~
西濵 徹
- 要旨
-
- OPECプラスの有志8ヶ国は、3日に開催したオンライン会合で昨年から続けてきた日量220万バレルの自主減産を当初より1年前倒しで9月に解消することで合意した。背景には、原油市場の安定や在庫が低水準で推移していること、そして、OPECプラスの市場シェアの低下懸念がある。一方、トランプ米政権はロシアへの制裁強化を示唆しており、ロシア産原油の供給減が懸念される。OPECプラス全体としては協調減産を2026年末まで継続する方針だが、今後は自主減産の見直しが議論される可能性もある。当面の原油価格はOPECプラスの増産圧力とロシアの供給不安の綱引きのなかで、底堅い推移が続くと予想される。
主要産油国の枠組みであるOPECプラスの有志8ヶ国(サウジアラビア、ロシア、イラク、アラブ首長国連邦、クウェート、カザフスタン、アルジェリア、オマーン)は、3日に開催したオンライン会合において、昨年から実施した自主減産枠を解消することで合意した。有志8ヶ国は昨年実施した日量220万バレルの自主減産について、今年4月から18ヶ月かけて段階的に縮小する方針を示したものの、過去数ヶ月は縮小スケジュールを大きく前倒ししてきた。そして、有志8ヶ国は今回の合意で9月も自主減産枠を54.7万バレルと、8月(54.8万バレル)並みの水準で減少するとしており、これにより当初予定から1年前倒しで自主減産枠が解消されることになる。

今回の決定について、有志8ヶ国は会合後に公表した声明文において「世界経済の見通しが安定していることに加え、原油在庫が低水準であるなど市場のファンダメンタルズが健全であること」を理由に挙げている。OPECプラスが自主減産の終了による事実上の増産を前倒しさせる背景には、OPECプラスによる協調減産や有志8ヶ国による自主減産が長期化するなか、世界の産油量に占めるOPECプラスの割合が低下し、存在感の低下が顕著になっていることがある。さらに、有志8ヶ国による自主減産縮小の前倒しにもかかわらず、足元の国際原油価格は季節的な需要増加の動きも影響して比較的高水準で推移している。よって、OPECプラスは過去数年にわたって価格維持を重視する姿勢をみせてきたものの、足元においては市場シェアの確保に政策の軸足をシフトさせていると捉えられる。
このところの世界経済や国際金融市場を巡っては、トランプ米政権の政策運営に翻弄される状況が続いている。米国は先月、ウクライナ戦争の早期終結を目的に、ロシアが50日以内にウクライナとの停戦に応じない場合にロシア製品を輸入国に対して米国が100%の関税を課す「2次関税」を発動する方針を明らかにした(注1)。その後、トランプ氏は期限の前倒しに言及した上で、ウクライナ戦争以降にロシア産原油の輸入を大幅に拡大させているインドに対する相互関税を25%とするとともに、ロシア産の兵器と原油の輸入に対してペナルティーを導入する方針を示している。さらに、インド同様にロシア産原油の輸入を拡大させる中国との協議も難航している様子がうかがえる。よって、金融市場においてはロシア産原油の供給が細ることが意識されていることも、足元の国際原油価格が比較的高止まりする一因になっていると考えられる。
なお、OPECプラスは全体として日量200万バレルの協調減産と、一部の産油国が日量166万バレルの自主減産を実施しており、昨年末にこれらは2026年末まで実施することで合意している。しかし、一部の報道では次回会合以降は日量166万バレルの自主減産の扱いが議論される可能性が指摘されており、枠組みのなかで最も産油量が大きいサウジアラビアが市場シェアを重視する姿勢を強めていることが影響している可能性がある。当面の国際原油価格については、OPECプラスによる実質増産が重石となる一方、ロシア産原油の供給先細りへの懸念が下支え要因となると見込まれ、引き続き底堅い動きが続く可能性が高いと考えられる。
注1 7月25日付レポート「トランプ政権が示す2次関税はロシアにどう影響するか?」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
-
経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
執筆者の最近のレポート
-
台湾・3月輸出額は過去最高額を更新(Asia Weekly(4/6~4/10)) ~台湾、タイ、フィリピンで原油高がエネルギー価格を大きく押し上げる動き~
アジア経済
西濵 徹
-
中国、企業はインフレに直面も、家計はデフレ圧力を脱せず ~中東情勢悪化による原油高の一方、家計部門は雇用不安と不動産不況の「呪縛」が続く~
アジア経済
西濵 徹
-
韓国中銀、李昌鏞総裁最後の定例会合は「様子見」を強調 ~中東情勢は物価や景気にリスク、金融市場の動向をみつつ様子見姿勢が続く~
アジア経済
西濵 徹
-
ベトナムの高成長目標に暗雲、1-3月GDPは前年比+7.83%に鈍化 ~イラン情勢、強権姿勢への懸念はあるが、金融市場は「その後」を見据える動きも~
アジア経済
西濵 徹
-
インド中銀、景気見通しを下方修正も、様子見姿勢を維持 ~様子見姿勢継続も、見通しの再修正の可能性は残り、市場もイラン情勢の動向に左右される~
アジア経済
西濵 徹
関連テーマのレポート
-
イラン情勢が金融市場を揺さぶるなかでの新興国の「体力測定」 ~資金流入が活発化してきたなか、環境一変で「体力」が覚束ない国も散見される~
新興国経済
西濵 徹
-
OPECプラス有志8ヶ国、5月も日量20.6万バレル増産で合意 ~ホルムズ海峡の事実上封鎖で、合意は「絵に描いた餅」となる可能性は高い~
新興国経済
西濵 徹
-
コロンビア中銀は2会合連続利上げの一方、政府との対立は一層鮮明に ~原油高はマクロ面でプラスも物価に懸念、ペソ相場は当面外部環境に左右される展開続く~
新興国経済
西濵 徹
-
中東情勢悪化で注目される中央アジア・コーカサス産原油とは ~日本企業が権益を有するカザフ、アゼル産原油、多様化の観点で重要な調達先となるか~
新興国経済
西濵 徹
-
メキシコ中銀、インフレと景気悪化のリスクを睨み、僅差で利下げ決定 ~原油高、有事のドル買い、治安情勢の悪化、USMCA再交渉の不透明感、ペソ相場に不安材料山積~
新興国経済
西濵 徹

