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オーストラリア・インフレ鈍化確認、RBAの追加利下げ観測が強まる

~豪ドル相場は上値が重いが、米ドル、日本円にもそれぞれ材料、当面の為替相場は方向感を欠くか~

西濵 徹

要旨
  • オーストラリア準備銀行(RBA)は、今月の定例会合で政策金利を3.85%に据え置いたが、市場では事前に利下げを織り込む動きがあり、会合後の記者会見では活発な質疑が行われた。RBAは年初から2度利下げを実施し、5月はハト派姿勢を鮮明にしたため、市場は今後の政策運営の真意を探る動きを強めている。
  • 世界経済はトランプ米政権の政策に左右され、米中関係の悪化はオーストラリア経済にも影響を及ぼす懸念がある。国内ではインフレ圧力が後退し、インフレ率も目標域内に収まっており、市場は追加利下げの可能性を織り込みつつある。しかし、利下げの副作用として不動産価格は上昇している。その一方、足下の雇用統計の悪化が確認されるなど、市場では金融政策に対する疑問が生まれる兆しもみられる。
  • RBAのブロック総裁は段階的な緩和が適切との見方を維持しつつ、データを重視する考えを示す。こうしたなか、足下のインフレ鈍化を受けて市場は8月会合での利下げを意識することが予想される。その一方、米ドル相場はFRBの独立性への懸念が重石となっている上、日本円は日米通商協議の合意による日銀の利上げが意識されるなかで上値が抑えられている。当面の為替相場は方向感の乏しい展開が続くであろう。

オーストラリア準備銀行(RBA)は、今月8日の定例会合において、政策金利(オフィシャル・キャッシュ・レート:OCR)を3.85%に据え置いた(注1)。しかし、事前の市場予想では利下げを織り込む動きがみられたため、会合後に行われたブロック総裁の記者会見では、過去の会見と比べて記者から活発な質疑応答が展開された。なお、年明け以降のRBAは2月、5月と2回の利下げを行っており、2月時点では慎重姿勢を維持したものの、5月は一転してハト派姿勢に転じる動きをみせた。よって、その後の金融市場では先行きの政策運営に対する見方が変化し、RBAの判断の『真意』を見定めたいとの市場の意向が強まった可能性がある。

図表
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このところの世界経済や金融市場を巡っては、トランプ米政権の政策運営に翻弄される展開が続いている。なお、いわゆる『トランプ関税』による同国経済への直接的な影響は限定的と見込まれる。しかし、オーストラリア経済は最大の輸出相手である中国景気、その動向による商品市況の影響を受けやすく、トランプ関税をきっかけにした米中関係の行方は間接的に同国経済に影響を与えることが懸念される。ここ数年は中国景気が頭打ちの様相を強めるなか、同国景気も同様に頭打ちの傾向がみられる。さらに、このところの物価動向を巡っても、RBAが注視するすべての指標が目標(2~3%)の域内で推移するなど落ち着いた動きをみせている。こうした事情も、金融市場がRBAによる一段の利下げを織り込む一因になった可能性がある。その一方、足下ではRBAによる2度の利下げに加え、ハト派的な姿勢の表明を受けて、先行きの金利低下を見越した資金が不動産市場に流入し、大都市部を中心に不動産価格の上昇ペースが加速するなど、早くも『副作用』が顕在化する兆しもみられる。しかし、足下では比較的堅調な推移をみせてきた雇用環境が悪化する動きがみられ(注2)、金融市場においてはRBAの判断に対する疑問が高まる兆しもみられる。

しかし、その後もRBAのブロック総裁は、足下の雇用統計が悪化する動きに対して「衝撃ではない」との見方を示した上で、金融政策について「段階的な緩和が適切」との考えをあらためて示した。さらに、今月8日の定例会合の議事要旨においても「データを見極めることが賢明」との考えが共有された旨が示されたため、物価動向に注目が集まっている。こうしたなか、4-6月の消費者物価は前年同期比+2.1%と前期(同+2.4%)から鈍化して4年強ぶりの、コアインフレ率(トリム平均値)も同+2.7%と前期(同+2.9%)から鈍化して3年半ぶりの伸びとなり、ともに目標域内で推移している。前期比も+0.7%と前期(同+0.9%)から上昇ペースが鈍化しており、財、サービス双方で物価上昇圧力が後退する動きがみられるほか、コアインフレ率も前期比+0.6%と前期(同+0.7%)から上昇ペースが鈍化している。月次ベースのインフレ率も6月は前年同月比+1.9%と前月(同+2.1%)から鈍化して4年3ヶ月ぶりに目標の下限を下回る伸びとなっている。また、RBAが重視する物価変動の大きい財と観光を除いたベースも前年同月比+2.5%、コアインフレ率(トリム平均値)も同+2.1%とともに目標域で推移している。

図表
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上述したように、RBAが政策判断に当たってデータを見極めることが賢明との見方を示しているため、足下のインフレが一段と鈍化し、幅広くインフレ圧力が後退している様子が確認されたことで、金融市場は8月12日に実施予定の次回の定例会合での利下げを織り込む動きを強めることが予想される。よって、豪ドル相場は利下げを織り込むことで上値の重い展開が見込まれる。その一方、トランプ米政権の政策運営やFRB(連邦準備制度理事会)人事への介入による独立性に対する懸念が米ドル相場の重石となっており、一方向への動意に乏しい展開となることは避けられない。また、日本円に対しては日米通商協議の行方に揺さぶられてきたものの、合意を受けて日銀による利上げが意識されるなかで上値が抑えられている。よって、当面の豪ドル相場についてはこうした市場の見方や思惑に左右される展開が続くと予想される。

図表
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以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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