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- ECBが利下げを休止
- 利下げ余地が乏しくなるなか、関税協議の行方が確定しない今回の理事会での利下げ見送りは規定路線。足元の景気や物価は底堅さを増しており、来年以降はドイツの財政転換や欧州各国の国防費の増加も景気回復を後押しする。一部報道にある通り、米国との関税協議が15%の関税率で決着すれば、輸出企業への打撃は避けられないが、同時に関税協議を巡る不透明感が解消され、先送りされていた投資や経済活動が動き出す。また、最近のユーロ高進行はドルの信認低下に加えて、ユーロ圏の景気回復期待を反映したもの。現状程度の為替水準であれば、利下げ打ち止めの障害にはならない。関税合意の結果次第ではあるが、利下げは打ち止めとなる可能性が高い。
7会合連続・通算8回目の利下げ後、欧州中央銀行(ECB)は7月24日に終わった理事会で、政策金利を据え置いた。ラガルド総裁によれば、今回の利下げ休止は全会一致の決定だった。声明文では、「インフレが中期的に2%の目標で安定することを確実にする」、「データに基づいて理事会毎に適切な金融政策スタンスを判断する」、「具体的には、インフレ見通しとそれを取り巻くリスク評価に基づき、今後明らかとなる経済・金融データ、基調的なインフレの動き、金融政策の伝達の強さに照らして判断する」、「特定の政策金利のパスを事前に約束しない」との従来の政策指針を維持した。景気・物価判断については、「最近のデータは先行きのインフレ動向についての従来の評価と概ね一致している」、「国内のインフレ圧力は引き続き緩和しており、賃金の伸びが緩やかになっている」、「過去の利下げの効果も支えとなり、世界を取り巻く厳しい環境下で、景気は全体として底堅さを保っている」、「とりわけ貿易摩擦を背景に、(ユーロ圏の経済・物価を取り巻く)環境は極めて不確実性の高い状況が続いている」とした。
金融危機時に固定金利・全額供給方式での資金供給に移行後、短期の指標金利は主要リファイナンス金利を下回ることが常態化しており、近年は預金ファシリティ金利がECBの金融政策スタンスを理解するうえで重要視されている。その預金ファシリティ金利は現在2.0%で、これはECBが考えるユーロ圏の中立金利(1.75~2.25%程度)の中央値にある。8月1日を新たな期限とする米国との関税協議が合意に至っていないなか、限られた利下げ余地をこの段階で使い切る訳にはいかない。また、タカ派の理事会メンバーからは、追加利下げを牽制する発言も出ている。シュナーベル理事は6月11日に「追加利下げのハードルは極めて高い」、「インフレ率が中期的な目標から大きく乖離する兆候が見られた場合にのみ追加利下げが行われるだろうが、その兆候は見られない」と発言した。
こうしてみると、景気や物価が大幅に下振れする兆候が確認されない限り、利下げは打ち止めとなる公算が高い。それを判断するうえで、米国との関税協議の行方が最大の注目材料となるが、7月23日の英フィナンシャル・タイムズ紙は米国がEUからの輸入品に15%の関税を課す方向での合意に近づいていると報じている。報道の真偽の程は定かでないが、これは6月時点のECBスタッフ見通しの想定(10%)よりも厳しいものの、同見通しでの悲観シナリオ(20%)やトランプ大統領が示唆している8月1日以降の関税率(30%)よりも低い。ラガルド総裁は「貿易協議の最終的な結果は、成長率やインフレ率への影響を評価するうえで非常に重要である」と述べたが、同時に「関税率が引き上げられた場合も、関税協議が速やかに解決されれば、先送りされていた投資や経済活動が再開する」との認識も示した。
ドイツの財政政策の大幅転換や欧州各国の国防費の拡大方針は、むしろ来年以降は景気が上振れする蓋然性が高まっている。予想を上回る大幅な関税引き上げで、年後半の景気が大幅に下振れしない限り、年後半の追加利下げの可能性は遠退いた。最近のユーロ高進行も景気や物価を下押しする可能性があるが、この点を記者会見で問われたラガルド総裁は、インフレ見通しにとって重要な要素であることを認めつつ、具体的な評価については明言を避けた。ユーロ高はドルの信認低下にも一因があるが、ユーロ圏景気の回復期待を反映したもので、現状程度の水準であれば、利下げ打ち止めの障害にはならないと考える。対ドルで1.2ユーロを突破する場合には金融政策上のインプリケーションも出てくるが、そこまでユーロ高が進行するには、一段の景気回復期待が高まっている状況とみられ、景気や物価の下支えを理由とした追加利下げが必要な状況にはない。
田中 理
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