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- 内外経済ウォッチ『欧州~熱波による経済活動への影響が広がる~』(2026年9月号)
ドイツで海上輸送の大動脈の水位が低下
猛暑が続くドイツでは、ライン川の水位が史上最低水準にまで低下し、経済活動への影響が懸念される。スイスの山岳地帯からドイツ西部を抜け、欧州最大の港があるオランダのロッテルダム近郊で北海に流れ出るライン川は、ドイツの工業生産や水上輸送を支える大動脈として知られる。流域にはドイツを代表する商業都市、化学や鉄鋼などの工業施設、火力発電所などが数多く立地する。中流にあるカウプ周辺の水位は、8月6日に20センチまで低下し、観測史上の最低水準を更新した。1991~2020年の同時期の平均水位は200センチ程度あり、川がどれほど干上がっているかが分かる。
2018年や2022年に水位が低下した際は、貨物船の積載制限や就航制限が一部で行われたため、周辺にある化学関連施設が操業を停止し、化学製品の生産や出荷が大幅に落ち込んだ。水位低下が続く今年も、貨物船の積み荷を最大容量の10%余りに制限し、鉄道や陸路など他の輸送手段に切り替えるなどの対応を迫られている。キール世界経済研究所の分析によれば、低水位が30日続くと、ドイツの鉱工業生産が約1%減少する。ドイツは近年、構造不況と競争力低下に苦しんでいる。ロシア産化石燃料依存の脱却やイラン情勢の不安定化によるエネルギー価格の上昇に見舞われるドイツ企業にとって更なる打撃となる。

欧州各地で熱波の影響が広がっている
近年、ライン川では経済活動を阻害する著しい水位低下が頻繁に発生している。こうした事態に対応するため、ライン川の水上輸送に依存する企業の間では、流域の貯蔵施設を増やす、原材料在庫を厚めに確保する、水位低下時にも就航可能な貨物船をチャーターするなどの防衛策が講じられてきた。ただ、今年は過去の渇水時に比べて水位低下のタイミングが早い。例年、夏から秋にかけては一段と水位が低下しやすい。更なる水位低下で工場の操業停止が広がり、一部製品の供給不足などに発展する恐れがある。
熱波による被害はドイツ以外の欧州諸国にも広がっている。中東欧諸国の物流の大動脈であるドナウ川も広範囲で記録的な低水位となっており、貨物船の積載量の制限や物流コストの上昇が報じられている。フランス、ハンガリー、ルーマニアなどでは、水位低下による冷却水不足のため、一部の原子力発電所が操業停止や出力抑制に追い込まれている。8月に入ってからも、欧州各地で40度を超える気温が観測されており、イタリアでは主要27都市全てに、スペインやフランスでも多くの地域で、最高レベルの警報が出されている。各地で山火事が広がっているほか、干ばつによる農産物への被害も大きい。夏場のバカンスシーズンの熱波は、観光業への打撃も懸念される。

田中 理
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

