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原油価格下落でECBの利上げ継続は?

~追加利上げへの切迫感が後退、このまま打ち止めも~

田中 理

要旨
  • イラン和平の進展期待で原油価格が空爆開始以前の水準まで下落している。ユーロ圏の消費者物価も上昇率が鈍化するなど、エネルギー価格の高騰が他の物価に波及する二次的効果も広がっていない。ECBは6月に利上げを開始したが、最近の高官発言からは追加利上げへの切迫感が後退している。イラン情勢が再エスカレートする懸念も残るが、7月の利上げ見送り後、インフレ圧力が抑制されていれば、追加利上げが必要かを巡る議論が本格化しよう。

イラン情勢の緊迫化によるインフレ圧力の高まりを受け、欧州中央銀行(ECB)は6月11日に終わった理事会で約14年振りの利上げを決めたが、直後の14日にトランプ大統領が米国とイランとの停戦合意を発表し、17日に14項目の覚書に署名したことを受け、原油価格が下落に転じており、追加利上げ期待が後退している。一時1バレル=110ドル台後半に高騰した北海ブレント原油先物価格(期近物)は、2月下旬の空爆開始以前とほぼ同水準の1バレル=71ドル台に下落している(図表1)。

図表
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エネルギー価格の上昇が賃金や他の物価に波及する二次的効果が広がる兆しもみられない。1日に発表されたユーロ圏の6月の消費者物価(EU統一基準)の速報値は、前年比+2.8%と前月の同+3.2%から上昇率が鈍化した(図表2)。エネルギー価格(前月:同+10.8%→今月:同+8.7%)の上昇が一服したほか、食料・アルコール飲料・たばこ価格(同+1.9%→同+1.6%)、エネルギー・食料・アルコール飲料・たばこを除くコア物価(同+2.6%→同+2.4%)が揃って上昇率が鈍化した。4~6月期の消費者物価は同+3.0%と、6月の理事会で公表されたスタッフ見通しの想定(同+3.2%)を下回った(図表3)。

図表
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最近のECB高官の発言からは、追加利上げへの切迫感が後退している様子が窺える。ECBは6月29日~7月1日に毎年恒例の金融政策フォーラムをポルトガルのシントラで開催し、多くのECB高官が発言した。理事会メンバーの多くは、最近のエネルギー市況の緊張緩和とインフレ圧力の後退を好感している。タカ派メンバーを中心に先行きの利上げ姿勢を維持しているが、全般にトーンダウンしている。主な発言は以下の通り。

図表
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先物金利が示唆する年内の追加利上げは、利上げ開始直後の2回超から足元で1回程度に後退している(図表4)。7月の利上げ確率は3割程度にとどまり、次のスタッフ見通しが発表される9月までの利上げ確率は6割程度となっている。米国とイランの和平プロセスは、6月中旬に両国が覚書を交わした後もホルムズ海峡の通航ルール、制裁解除、核問題などを巡って対立が残り、散発的な攻撃が続くなど、恒久的な解決への道のりは長い。ただ、緊張再燃による資源価格の再高騰がなければ、ECBが利上げを急ぐ必要性は遠退く。筆者も9月の追加利上げ予想を今のところ維持しているが、7月の追加利上げを見送った後、賃金や他の物価への波及が限定的なものにとどまるならば、9月の追加利上げが必要かどうかを巡っての議論が本格化しよう。

図表
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以 上

田中 理


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田中 理

たなか おさむ

経済調査部 首席エコノミスト(グローバルヘッド)
担当: 海外総括・欧州経済

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