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2025.07.09
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ニュージーランド準備銀、追加利下げを留保しつつ利下げを一時休止
~NZドルは米ドルや日本円に対し方向感を欠く一方、豪ドルに対しては弱含みする可能性~
西濵 徹
- 要旨
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- ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は9日の定例会合で政策金利を3.25%に据え置いた。RBNZは昨年8月に金融緩和に転じ、6回連続で累計225bpの利下げを実施してきた。しかし、インフレが目標域内に収まるも上振れ懸念がある一方、先行きの景気に不透明感がくすぶるなか、今回は利下げを一時停止させた。
- RBNZは、先行きのインフレについて年半ばにかけて加速するも、来年初旬には2%前後に鈍化するとの見通しを示している。他方、景気の先行きには不透明感が強く、米国の関税政策による世界経済の減速懸念が重石となることを警戒している。こうしたなか、RBNZは先行きの政策運営について、中期的なインフレ圧力が緩和すれば追加利下げを行う可能性に言及するなど、追加利下げを留保する考えを示している。
- 金融市場では、米ドル安を追い風にNZドルは米ドルや日本円に対して上昇しているが、先行きはRBNZのハト派スタンスが上値を抑えると予想される。他方、豪ドルに対してはオーストラリア準備銀行(RBA)のタカ派姿勢が影響すると見込まれ、当面の豪ドル/NZドル相場はNZドルが弱含みする展開が見込まれる。
ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は、9日に開催した定例の金融政策委員会において、政策金利であるオフィシャル・キャッシュ・レート(OCR)を3.25%に据え置く決定を行った。RBNZは昨年8月に約4年ぶりとなる利下げに動き、その後も5月の定例会合まで6会合連続、累計225bpもの利下げを実施するなど金融緩和に大きく舵を切った。ニュージーランドでは、ここ数年インフレが高止まりしてきたものの、一昨年から鈍化しており、昨年後半以降はRBNZの定める目標(1~3%)の範囲内で推移するなど落ち着いた動きをみせる。さらに、長年にわたる物価高と金利高の共存に加え、最大の輸出相手である中国景気の勢いに陰りが出ていることも重なり、昨年半ばにかけて2四半期連続のマイナス成長となるテクニカル・リセッションに陥った。こうした状況も、RBNZによる断続的な利下げを後押ししてきたと捉えられる。

なお、上述したように昨年後半以降のインフレはRBNZの目標域内で推移しており、断続的な利下げも個人消費をはじめとする内需を押し上げることが期待される。さらに、このところの世界経済は米トランプ政権の関税政策に翻弄されているが、米国の同国への貿易赤字は小幅に留まり、同国への相互関税率の税率を一律分と同じ10%とした。また、同国の対米輸出額は名目GDP比2%強に留まり、相互関税によるマクロ面での直接的な影響は限定的と捉えられる。その一方、同国の総輸出の4分の1強を中国(含、香港・マカオ)向けが、1割強をASEAN向けが占めており、間接的に影響が及ぶ可能性が懸念される。このように先行きの景気に好悪双方の材料が混在しているものの、昨年末以降の景気は回復の動きが確認されるなど、最悪期を脱しつつある。また、インフレは目標域内で推移するも、足元では食料品など生活必需品を中心とする物価上昇を反映してインフレ率は加速する一方、コアインフレ率は伸びが鈍化するなど対照的な動きをみせる。こうしたなか、RBNZは5月の前回会合で6会合連続の利下げを決定するも、利下げ幅を縮小させたほか、その評決も「5(25bpの利下げ)対1(据え置き)」で割れるなど『ハト派』姿勢の変化をうかがわせた。他方、同時に公表した政策運営見通しにおいては、2月時点と比較して追加利下げを織り込むなど、ハト派姿勢を強める対照的な内容となった(注1)。よって、その後の金融市場においては、さらなる利下げを見込む向きが根強いものの、政策委員の間でハト派姿勢が後退する兆しが確認されたこともあり、政策運営に対する見方が交錯していた。

こうしたなか、RBNZは今回の会合において、将来的な追加利下げの可能性を留保しつつ、短期的なインフレを警戒して利下げ局面を一時停止させたと捉えられる。会合後に公表した声明文でも、物価動向について「インフレは年半ばにかけて目標上限に向かって加速する可能性が高い」としつつ、「余剰生産能力によるインフレ圧力の後退を反映して、来年初旬には約2%に鈍化する」との見通しを示している。一方、景気動向については「輸出価格の上昇と金利低下が下支え役になっている」としつつ、「関税政策を巡る不透明感が世界経済の重石になると見込まれ、景気と物価の重石になる可能性がある」との見方を示している。さらに、景気の先行きについて「依然として不透明感が強い」とした上で、「景気回復の行方やインフレの持続性、政策運営の行方に影響を与える」としつつ、「中期的なインフレ圧力が想定通り緩和すれば、さらなる利下げを予想する」として再利下げに含みを持たせた。また、同時に公表された議事要旨では、会合において「25bpの利下げと据え置きが協議された」とした上で、利下げの根拠として「短期的な景気のモメンタムの弱さに加え、不確実性の高まりを受けたマインド悪化が長期化するリスクがあり、一段の緩和が景気回復を確実にさせる」とする一方、据え置きの根拠として「不確実性の高まりと当面のインフレリスクを勘案した上で、景気鈍化の持続性とインフレ期待の行方が評価可能になるとして、8月の次回会合まで判断を留保することを強調した」としている。その上で、今回会合での据え置きのコンセンサスが得られたとしており、追加利下げを留保していると捉えられる。
年明け以降の金融市場においては、米トランプ政権の政策運営に対する不透明感の高まりを反映して米ドル安圧力が強まるなか、NZドルの対米ドル相場はそうした動きを反映して上昇基調を強める展開が続いている。先行きについても、トランプ米大統領がFRB(米連邦準備制度理事会)の議長人事に口出しをするなど、その独立性に対する懸念が強まる可能性があり、米ドル安基調が続くと見込まれることで下値が支えられやすいであろう。その一方、RBNZによる追加利下げが意識されることで上値も抑えられる展開が考えられる。また、日本円に対しても米ドル/NZドル相場の底入れの動きを反映して上昇基調を強める流れがみられたものの、先行きはRBNZによる追加利下げが見込まれるほか、日本銀行もタカ派姿勢の後退を余儀なくされる可能性が高まり、当面は方向感の乏しい展開が続く可能性に留意する必要がある。なお、NZドル(キウィ)と隣国の豪ドル(オージー)はいわゆる『オセアニア通貨』として注目を集めるが、オーストラリア準備銀行(RBA)が昨日(8日)の定例会合で予想外のタカ派姿勢をみせている(注)。その一方、RBNZがハト派姿勢を維持したことを受けて、当面の豪ドル/NZドル相場はNZドルが弱含みしやすい展開が見込まれる。

注1 5月28日付レポート「RBNZは6回連続の利下げ実施、「キウィ」と「オージー」の行方は?」
注2 7月8日付レポート「RBAは物価動向見極めへ金利据え置き、豪ドル相場の行方は?」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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