インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

RBNZは6回連続の利下げ実施、「キウィ」と「オージー」の行方は?

~NZドルは米ドルに動意の乏しい展開も円には上値が重いか、豪ドルには動意が生まれる可能性も~

西濵 徹

要旨
  • ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は、28日の定例会合で政策金利を25bp引き下げて3.25%とした。これは6会合連続の利下げであり、累計の利下げ幅も225bpに達する。足元のインフレは再加速する動きをみせる一方、コアインフレ率は鈍化基調が続いている。トランプ関税の行方は景気の不透明感を高める一方、米ドル安によるNZドル相場の底入れはインフレ圧力を後退させ、一段の利下げを後押ししたと見込まれる。

  • RBNZは今回の決定に際して「5(25bpの利下げ)と1(据え置き)」と票割れする一方、先行きについて追加利下げを視野に入れる判断をみせており、金融市場では追加利下げが意識される可能性がある。NZドルは米ドルや日本円に対して底入れしたが、当面は上値が抑えられることも考えられる。また、NZドルとともに「オセアニア通貨」として注目される豪ドルとの動向を巡っては、実体経済を巡る違いにもかかわらず、ここ数年はレンジ相場で推移している。RBA(オーストラリア準備銀行)は最近ハト派寄りの姿勢を強める一方、今回RBNZが追加利下げを示唆したことを受けて、当面は豪ドルが相対的に強含む展開も想定される。

ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は、28日に開催した定例の金融政策委員会において、政策金利であるオフィシャル・キャッシュ・レート(OCR)を25bp引き下げ、3.25%とする決定を行った。RBNZによる利下げ実施は6会合連続であり、昨年後半以降の利下げ局面の利下げ幅は累計で225bpになるとともに、OCRの水準そのものも3年弱ぶりの水準となる。

ここ数年の同国は、商品高や国際金融市場での米ドル高に伴う通貨NZドル安による輸入物価の上昇、コロナ禍一巡による経済活動の正常化も重なり、インフレに直面してきた。さらに、コロナ禍対応を目的とする異例の金融緩和を受けた金融市場における『カネ余り』は不動産市況の急騰を招いた。よって、RBNZは物価と為替の安定、不動産市況の沈静化に向け、累計525bpの利上げを実施し、その後もタカ派姿勢を維持した。しかし、商品高の一巡も重なり、2022年後半を境にインフレは頭打ちに転じるとともに、物価高と金利高の共存状態が長期化して景気の頭打ちが鮮明になり、その後のインフレは一段と下振れした。こうした事情も、RBNZが昨年後半以降における利下げを後押ししていると捉えられる。そして、足元では米トランプ政権の関税政策を巡る不透明感が米ドル安を招いており、NZドル相場が底入れしていることもインフレ圧力の後退を促す一助となっている。

図表1
図表1

なお、米トランプ政権が貿易赤字の削減を目的に発動した相互関税を巡っては、米国の同国に対する貿易赤字は小幅であり、税率は一律水準と同じ10%とされている。さらに、同国の対米輸出額は名目GDP比2.1%に留まり、その直接的な影響は限定的なものになると想定される。他方、総輸出の4分の1強を中国(含、香港・マカオ)向けが占めるほか、米トランプ政権が相対的に高い相互関税を課したASEAN(東南アジア諸国連合)向けも1割強であり、相互関税による間接的な影響は避けられない。なお、会合後にRBNZが公表した声明文は「OCRを3.25%に引き下げた」と過去の声明文に比べて淡白な表題とされた(注1)。一方、物価動向について「足元のインフレは加速し、インフレ期待も上昇する一方、コアインフレは鈍化するなど余剰生産能力があり、インフレが中期的に目標域の中央値に回帰することと整合的」との見方を示す。また、実体経済について「商品市況の上昇と金利低下が経済活動を下支えし、回復しつつある」とするも、「世界経済の成長鈍化が見込まれるなか、同国の景気回復を緩やかにする一方で中期的なインフレ圧力の緩和が期待される」としつつ「こうした見方には依然として大きな不確実性がある」との見方を示した。その上で、今回の決定を巡って「据え置きか25bpの利下げを協議した」として、「コアインフレと賃金インフレの低下が続くなか、足元の実体経済と物価動向は今年2月時点に比べて弱く、25bpの利下げが中期的な物価安定と整合的と判断した」として、採決は「5(25bpの利下げ)対1(据え置き)」に割れたことを明らかにしている。ただし、先行きのOCRについて今年2月時点と比較して追加利下げを見込む内容が示されており、当面の金融市場では追加利下げが意識されると想定される。

図表2
図表2

このところの国際金融市場においては、米トランプ政権の関税政策を巡る不透明感が米ドル安を招いていることも追い風に、NZドルの対米ドル相場は底入れした。しかし、足元においては、関税政策によるインフレが懸念されるなか、米FRB(連邦準備制度理事会)が『タカ派』姿勢を維持せざるを得ないとの見方がくすぶる一方、RBNZは今回も利下げに動いた上で、上述のように追加利下げが意識される展開が見込まれ、上下双方に動意の乏しい展開が続く可能性が見込まれる。また、日本円に対しても底入れが確認されたものの、先行きについてはRBNZによる追加利下げが意識されるなか、金融政策の方向性の違いが影響する可能性があり、上値の重い展開が続くことも考えられる。

図表3
図表3

NZドル(キウィ)と隣国オーストラリアの豪ドル(オージー)を巡っては、いわゆる『オセアニア通貨』としてFX(外国為替証拠金取引)市場において注目されている。このところのNZドルと豪ドルについては、上述したように米ドル安の動きが意識されるなかでともに米ドルに対して底入れする展開をみせている。一方、昨年来のニュージーランド経済はテクニカル・リセッションに陥るなど減速が鮮明になり、雇用に調整の動きが確認される一方、オーストラリア経済は底堅い動きが続き、雇用も大都市部や正規雇用を中心に堅調さが確認されるなど対照的な動きがみられる。こうした状況にもかかわらず、豪ドルとNZドルは過去数年レンジ内での推移が続いている上、足元ではレンジの中央近傍で推移するなど動意の乏しい動きが続く。オーストラリア準備銀行(RBA)は今月、追加利下げに加えて『ハト派』姿勢を示唆する動きをみせた(注2)。RBNZが今回、票割れするも追加利下げの可能性に含みを持たせるなどハト派姿勢が意識される決定を行ったことを受けて、当面は豪ドル相場が強含みする展開も考えられる。

図表4
図表4

以 上

西濵 徹


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

執筆者の最近のレポート

関連テーマのレポート

関連テーマ