- HOME
- レポート一覧
- 経済分析レポート(Trends)
- ポーランド大統領選挙で反EU候補が勝利
- Europe Trends
-
2025.06.03
欧州経済
欧州経済全般
その他欧州経済
国際的課題・国際問題
ポーランド大統領選挙で反EU候補が勝利
~親EU路線への転向は一筋縄ではいかない~
田中 理
- 要旨
-
- 親EU派と反EU派の一騎打ちとなったポーランド大統領選挙の決選投票は、反EU候補が逆転で勝利した。同国では2023年の議会選挙で、トゥスク前EU大統領が率いる親EU会派が政権を奪還したが、右派ナショナリスト政党出身の大統領が度々拒否権を発動し、親EU路線への転向が難航している。大統領の拒否権を覆すには議会の5分の3以上の議決が必要で、現政権はこれを持たない。反EU大統領が再び誕生したことで、トゥスク政権が進める親EU路線への転向の歩みが遅くなる。同国では政権交代後も親EU派と反EU派の支持が拮抗しており、昨年の統一地方選挙では反EU派が、欧州議会選挙では親EU派がそれぞれ勝利した。2027年に控える議会選挙の世論調査は、反EU派が僅かにリードしており、反EU路線に回帰する恐れもある。
1日に投開票が行われたポーランド大統領選挙の決選投票は、初回投票で首位に立った中道右派の与党「市民連立(KO)」が推す親EUのトシャスコフスキ候補と、二位に付けた右派ナショナリストの野党「法と正義(PiS)」が推す反EUのナヴロツキ候補が激しいデッドヒートを繰り広げ、ナヴロツキ候補が逆転勝利した(表)。投票終了直後の出口調査ではトシャスコフスキ候補のリードが伝えられたが、最終結果は僅差でナヴロツキ候補が上回った。ワルシャワ市長のトシャスコフスキ候補は、市民連立内のリベラル派の代表格とされ、初回投票で落選した極右候補を支持した保守系の有権者が、決選投票でナヴロツキ候補支持に回ったものとみられる。ナヴロツキ候補は国家記憶院総裁で、過去に戦争博物館の館長を務めるなど、保守寄りの主張で知られる。

2023年12月の議会選挙で政権を奪還したトゥスク前欧州議会常任議長(いわゆるEU大統領)が率いる親EU政権は、法の支配などを巡って前政権時代に凍結されたEU資金の凍結解除、欧州復興基金からの資金拠出開始などを実現したほか、前政権時代の司法制度改革などの修正・撤回を進めてきたが、法と正義出身のドゥダ大統領がこうした動きに度々拒否権を発動してきた。ナヴロツキ次期大統領は、EUによる国家介入に批判的で、ポーランドの主権擁護やポーランド第一主義などを主張する。大統領による拒否権を覆すには、議会の5分の3以上の議決が必要で、現政権はこれを保持していない。再び反EU大統領が誕生したことで、トゥスク政権が進める親EU路線への転向の歩みが遅くなる。
政権交代後も市民連立と法と正義の支持は拮抗している。2024年4月の統一地方選挙では、法と正義が県議会の34.3%で首位に立ち、市民連立の30.6%を上回った。国政運営で連立を組む3党(市民連立に加えて、中道右派の「第三の道」、中道左派の「新左派」の合計得票率は51.2%)では勝利した形だが、法と正義が引き続き強力な政治基盤を持つことが示された。また、同年6月の欧州議会選挙では、市民連立が37.1%で最多票を獲得したが、法と正義も36.2%でこれに肉薄した(前回選挙の45.4%からは大きく落とした)。2027年秋に予定される次の議会選挙の世論調査は、市民連立と法と正義が30%前後で競っている。連立与党の支持率を集めれば、法と正義を上回るが、新興極右政党「同盟」が15%前後の支持を集め、親EU勢力と反EU勢力の支持が拮抗する。
5月18日に行われたやり直しのルーマニア大統領選挙の決選投票では、親EUの中道系独立候補で首都ブカレストのダン市長が53.7%の支持を集め、反EUの極右政党・ルーマニア人統一同盟(AUR)のシミオン党首の46.3%を上回り、勝利した。シミオン氏は大統領に就任した場合、無効とされた昨年11月の大統領選挙で最多票を獲得した親ロシアのジョルジェスク氏を首相に任命する可能性を示唆していた。反EU政権誕生を不安視する危機バネが働いた形だが、ポーランドではトゥスク政権誕生後に連立与党の支持が低下しており、野党候補の追い風となった。10月3・4日にはチェコで議会選挙が控えており、バビシュ元首相が率いるEU懐疑主義で中道ポピュリストの最大野党「アノ2011」が大きくリードする。ハンガリーやスロバキアの現政権はEUに懐疑的で、東欧諸国は親EUと反EUの間で揺れ動いている。
田中 理
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

