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2025.05.22
アジア経済
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シンガポール経済
トランプ関税
シンガポール内閣改造、ウォン首相は財務相兼務継続で難局対応へ
~ウォン氏の求心力向上への期待のなか、若返りを図りつつ体制強化で難局に向かう姿勢をみせる~
西濵 徹
- 要旨
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- シンガポールでは先月、昨年発足したウォン政権下で初の総選挙が実施され、与党の人民行動党が議席と得票率を伸ばして圧勝し、政権への信任と党勢回復がうかがわれた。若手候補の登用などによる刷新も進められ、多数の初当選者が誕生するなど、ウォン氏の急進力向上に繋がる動きもみられる。これを受けて、ウォン首相は内閣改造を実施し、自らの財務相兼務を継続するとともに、副首相の再編や若手の登用を行う。他方、リー前首相は引き続き上級相を担うなど、外交・内政面での「重石」として政権を支える。
- 一方、足元の同国経済は外需下振れなどを理由にマイナス成長に転じるなど、今後もトランプ関税に伴う不透明な外部環境に直面することが懸念される。政府は今年の成長率見通しを据え置く一方、通貨庁は金融緩和に転じるなど政策運営は困難さが増している。今回の総選挙を通じてウォン政権の求心力向上の兆しが確認される一方、先行きについては難しい経済運営を迫られる展開が続くことが予想される。
シンガポールでは5月、国会(一院制:定数97)の総選挙が実施された。今回の総選挙は、昨年誕生したローレンス・ウォン政権の下で初めて実施される選挙であり、政権への信任投票の意味合いがある。さらに、1965年の独立から人民行動党(PAP)が一貫して政権与党の座を維持するも、このところの総選挙では党勢の衰えが示されてきたなか、党勢回復の道筋を示せるかも注目された。
今回の総選挙では、選挙区の区割り変更に伴い改選前(93議席)から4議席増えて97議席で争われた。PAPの獲得議席数は87と改選前(83)から4議席積み増し、約9割に当たる議席を占める圧勝を果たした。各選挙区でも、PAPの候補は多くの選挙区で野党候補に大差を付けて勝利するとともに、PAPの得票率も65.57%と前回総選挙(61.23%)から+4.34pt上昇するなど、党勢回復に一定の道筋を付けたと捉えられる(注1)。この背景には、昨年のウォン政権の発足に向けて、PAPは大きく『若返り』を進めるとともに、今回の総選挙でも候補者の若返りを進めるなど刷新感を演出したことも影響したとの見方もある。結果、今回の総選挙においては多数の初当選議員が誕生しており、今後の党運営や政権運営に当たってウォン氏の求心力の高まりが期待されている。
こうしたなか、ウォン政権は21日に内閣改造を発表し、23日付で実施される。ウォン氏は昨年の首相就任に際して財務相を兼務してきたが、今回の内閣改造に際しても兼務を維持するなど、外部環境に不透明感が高まるなかで政策の一貫性と引き締め姿勢を意識したと捉えられる。また、2021年に次期首相の座を辞退するも、その後も副首相に留まったヘン・スイキャット氏は今回の総選挙に出馬せず政界を引退しており、副首相を退任する。他方、副首相には昨年のウォン政権の発足に際して昇格したガン・キムヨン氏(兼、貿易産業相)が留任し、長らく2人体制が採られてきた副首相はガン氏のみとなる。さらに、2011年から14年に亘って国防相を務めたウン・エンヘン氏も今回の総選挙で政界を引退しており、後任に軍出身で陸軍参謀長を務めたチャン・チュンシン教育相が横滑りする。さらに、内閣改造では若手の登用も進められるなど、総選挙での若返りやウォン氏の求心力向上を反映した動きもみられる。他方、昨年首相を退任して上級相に就任したリー・シェンロン氏は、今回の総選挙でも議席を維持しており、内閣改造後も上級相に留任し、引き続き外交、内政の両面で政権の『重石』としての役割が期待される。
よって、今後のシンガポール政界においては、今回の総選挙を経て大きく若返りが図られるとともに、内閣改造においても新陳代謝の一端がうかがえるなど大きく動き出している様子がうかがえる。総選挙を経てウォン政権に対する信認が確認されるとともに、与党PAPも党勢回復とともに、ウォン氏への求心力が高まる兆しがうかがえる。他方、1-3月の実質GDP成長率(改定値)は、前期比年率▲2.57%と4月に公表された速報値(同▲3.02%)から上方修正されるも、丸2年ぶりのマイナス成長となるなど、トランプ関税の発動を前に景気にブレーキが掛かる様子がうかがえる。政府は今年の経済成長率について+0~2%との見通しを据え置く一方、通貨庁(MAS)は4月の定例会合において、金融政策の調整手段を緩和方向にシフトさせている(注2)。今後もトランプ関税の行方など外部環境に不透明感が山積しており、同国経済は外需依存度が極めて高いなかで難しい政策運営が求められるなど、ウォン政権は厳しい局面に直面する展開が続くであろう。

注1 5月7日付レポート「シンガポール総選挙、与党得票率上昇でウォン政権は信任を得たか」
注2 4月14日付レポート「シンガポール通貨庁、景気の急ブレーキ確認で一段の金融緩和」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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