インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

ブラジル中銀、6連続利上げで政策金利は14.75%と約19年ぶりに

~レアル安一服で引き締め度合い後退も引き締めは長期化、ルラ政権には厳しい状況が続くか~

西濵 徹

要旨
  • ブラジル中銀は6会合連続の利上げを決定し、政策金利は2006年以来の高水準となる14.75%に達する。これは国内における根強いインフレ圧力に対応しており、直近のインフレ率は中銀目標を大きく上回る伸びが続く。世界的には金融緩和の動きが広がるが、ブラジル中銀は別の方向を向いていると捉えられる。
  • 一方、トランプ関税が世界経済や国際金融市場に不透明感をもたらす展開が続き、米中間では報復の応酬がみられたものの、足元では直接協議が行われるなど事態悪化懸念はやや後退している。しかし、状況が早期に好転するとは見通しにくく、金融市場は引き続き不安定な展開が続くことは避けられない。
  • 米国の相互関税によるブラジル経済への直接的影響は限定的と見込まれるが、鉄鋼やアルミへの追加関税や中国経済への依存度の高さを勘案すれば、様々な形で影響は免れない。中銀は景気減速やインフレの高止まりを指摘した上で、今後の金融政策には慎重な対応が必要としている。今後も引き締め政策は続くと見込まれるが、効果発現に時間を要するほか、ルラ政権にとっても厳しい状況が続くと見込まれる。

ブラジル中央銀行は、6~7日の日程で開催した定例の金融政策委員会(COPOM)で6会合連続となる利上げを決定した。中銀は今回の利上げ幅を50bpに縮小させたものの、この決定を受けて政策金利(Selic)は14.75%と2006年8月以来、約19年ぶりの高水準となるなど、急速な引き締めが続いている。この背景には、国内におけるインフレ圧力の根強さがある。直近3月のインフレ率は前年同月比+5.48%、コアインフレ率も同+5.00%と加速しており、ともに中銀が定めるインフレ目標(3±1.5%)の上限を上回っている。世界的にみれば、インフレが一巡しつつあることに加え、米トランプ政権の関税政策を契機にした世界経済を巡る不透明感の高まりも重なり、金融緩和に舵を切る動きが広がりをみせている。しかし、ブラジルでは昨年9月にインフレ再燃を受けて再利上げに舵を切り、その後も断続利上げに動くなど別の方向を向いていると捉えられる。

図表
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足元の世界経済や国際金融市場は、米トランプ政権の関税政策の動向に揺さぶられている。米トランプ政権はすべての国に一律で10%、一部の国に非関税障壁を元に税率を上乗せする相互関税を課す方針を示している。米トランプ政権は4月に一律部分と上乗せ部分を一旦発動させるも、直後に中国以外の国に対する上乗せ分の発動を90日間延期した。一方、中国はトランプ関税への報復措置に動き、その後は米中双方が報復の応酬を続けたため、米国は145%、中国は125%と互いに高関税を課す事態となっている。なお、足元では米中が直接協議に動くことが明らかになり、事態が一段と悪化する懸念は後退している。しかし、状況が早々に大きく好転することは見通しにくく、金融市場は協議の動向に右往左往させられる展開が予想される。また、ブラジルは米国にとって数少ない貿易黒字国であり、米トランプ政権は同国への相互関税率を一律水準と同じ10%とするなど、マクロ的な観点での直接的な影響は限定的と見込まれる。他方、同国は米トランプ政権が追加関税を課す鉄鋼製品やアルミ製品の大宗を米国向けに輸出にしており、関連産業を中心に悪影響が広がることは避けられない。そして、近年の米中摩擦の背後で同国は対中輸出を拡大させており、足元では中国が最大の輸出相手となるなど中国景気の影響を受けやすくなっている。先行きは米中による貿易戦争が中国景気の足かせとなることが懸念される上、同国経済にも悪影響が伝播する可能性もある。足元の同国景気にはブレーキが掛かる動きが確認されるなか、先行きに対する不透明感が高まることが懸念される。

こうしたなか、中銀が会合後に公表した声明文では、世界経済について「米国の経済政策と経済見通し、なかでも貿易政策とその影響による不確実性が高まっている」とした上で、「新興国経済は地政学リスクが高まるなかで慎重な対応が求められている」との認識を示している。その上で、同国経済について「経済活動と労働市場に関する指標に力強さがうかがえるも、成長鈍化の兆しがみられるほか、インフレは高止まりしている」として、金融政策について「長期にわたって大幅な引き締め政策が必要になる」と従来姿勢(より引き締め的な姿勢が必要になる)から引き締めスタンスを幾分後退させている。物価動向について「上下ともに振れるリスクは高まっている」として、上振れリスクに「①インフレ期待の上振れ長期化、②正の需給ギャップに伴うサービスインフレの粘着度の高さ、③持続的なレアル安などインフレ圧力に繋がる動き」を挙げる一方、下振れリスクに「①想定以上の景気減速、②世界経済の急減速、③商品市況の調整」を挙げている。その上で、インフレ見通しを「今年は+4.8%、来年は+3.6%」と従来見通し(今年は+5.1%)から下方修正するも、今年は引き続き目標を上回る見通しを維持している。先行きの政策運営について「不確実性の高まりに加え、現在の引き締めサイクルによる累積的な影響がみられないなか、対応にはさらなる慎重さが必要であり、インフレ見通しを左右するデータを柔軟に取り入れる必要がある」とするなど、ガイダンスを示していない。

昨年来のレアル相場を巡っては、国際金融市場における米ドル高に加え、ルラ政権によるバラ撒き志向の強い財政政策に対する警戒感も重なる形で調整の動きを強めてきた。そうした動きは輸入物価を通じてインフレを助長する一因となってきた。しかし、足元ではトランプ関税を巡る不透明感を理由に米ドル相場に調整圧力が掛かり、レアル相場も底打ちに転じるなど外部環境が変化するとともに、中銀が引き締め姿勢を後退させる一助となっている可能性がある。よって、先行きは引き締め姿勢を一段と後退させる可能性は高まるものの、インフレが中銀目標の中央値(3%)に収束するには相当の時間を要すると見込まれ、長期にわたって引き締め政策を維持せざるを得ない展開が続くであろう。来年の大統領選での再選を目指すルラ氏にとっては、インフレ長期化による支持率低下に見舞われるなか、先行きも厳しい展開が続くことも予想される(注1)。

図表
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以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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