消費者物価指数(東京都区部・25年4月)

~高校授業料要因の剥落で上昇率が急拡大。東京都区部で目立つ家賃の上昇~

新家 義貴

要旨
  • 25年4月の東京都区部CPIコアは前年比+3.4%と、前月の+2.4%から上昇率が1.0%Pt拡大し、市場予想の+3.2%を上回った。①東京都における高校授業料実質無償化開始から1年が経過し、下押しの影響が一巡したこと、②電気・ガス代補助金が縮小し、エネルギー価格が押し上げられたこと、③食料品価格(生鮮除く)が上昇率を一段と高めたこと、④家賃の上振れや年度替わりの値上げもあってエネルギーと食料を除いたコアコア部分が伸びを高めたこと、等が押し上げ要因となっている。前月からの上昇率拡大に最も寄与したのは①だが、事前予想との対比で上振れに寄与したのは④。
  • 物価はこのところ上振れが続いている。食料品価格の上昇がその主因だが、今月は家賃の上昇によりコアコアでも上振れるなど食料品以外でも気になる動きがあった。先行き、日銀の想定とおりに人件費上昇分の価格転嫁が広がるかどうかが注目される。
  • 電気・ガス代は上昇率が大きく拡大した(電気・都市ガス代の前年比寄与度:3月+0.27%Pt → 4月+0.44%Pt)。電気・ガス代補助金が期間限定で再復活されたことで、2月以降の価格は押し下げられているが、4月には補助が縮小されており、押し下げ寄与もその分小さくなっている。なお、補助金は4月使用分まででいったん終了するため、5月には押し下げ寄与が剥落することになる。一方、政府は4月22日に物価高対策として、この補助金について再び夏(7~9月使用分)に期間限定で復活することを表明した。補助金によるCPIの攪乱はまだ続きそうだ。
  • 食料品価格は大幅な上昇が続いた。4月の食料品(生鮮除く)は前年比+6.4%(前年比寄与度:+1.53%Pt)と、2月の同+5.6%(前年比寄与度:+1.34%Pt)から上昇率が拡大した。年度替わりのタイミングということもあり、コスト上昇分の積極的な価格転嫁が実施されている。原材料費上昇や人件費増加により外食も前年比+5.7%(3月+4.1%)と伸びが大きく高まっている。
  • エネルギー以外のコアコア部分については、日銀版コア(生鮮食品及びエネルギーを除く総合)が前年比+3.1%(3月:+2.2%)、米国型コア(食料及びエネルギー除く総合)は前年比+2.0%(3月:+1.1%)と、それぞれ前月から大幅に上昇率が拡大した。昨年4月に東京都で実施された高校授業料の実質無償化によりこれまで大きく押し下げられていたが、開始から1年が経過したことで前年比での押し下げ寄与が剥落したことの影響が大きい。この要因を除けば、日銀版コアは前年比+3.1%(3月:+2.7%)、米国型コアは前年比+2.0%(3月:+1.8%)となる。
  • 高校授業料要因を除いても伸びは拡大しているが、そのことに寄与しているのが家賃の上昇である。東京都区部ではこれまでも民営家賃、持家の帰属家賃が緩やかな上昇傾向にあったが、4月は年度替わりのタイミングで値上げが進んだ可能性があるだろう。もっとも、家賃については東京都区部と全国で動きが異なっていることに注意が必要だ。東京都区部で家賃の上昇が進む一方で、全国では上昇率の拡大はこれまでかなり限定的なものにとどまっている。そのため、今回の上振れが全国CPIでも確認できるかどうかは何とも言えない。家賃のウェイトは非常に大きいだけに、今後、東京都区部と同様に全国でも家賃の上昇が進むかどうかは大きな注目点となる。
  • 本日の東京都区部の結果を踏まえると、5月23日に公表される25年4月の全国CPIコアは前年比+3.3%~+3.4%程度と、3月の+3.2%から上昇率が拡大することが予想される。4月から実施される公立高校授業料の実質無償化(所得制限撤廃)が押し下げ要因になる一方、電気・ガス代の補助縮小や食料品価格の上昇などが押し上げ要因となるだろう。
  • 足元で物価上振れが続く一方、最近になって物価押し下げ要因も散見されるようになってきた。政府は物価高対策としてガソリン、灯油価格の定額引き下げ、電気・ガス代への期間限定補助などを実施することを表明しており、これらが夏場にかけての物価下押し要因となることが予想される。加えて、原油安や円高の進展によりコスト上昇圧力が今後弱まることが予想されることの影響も大きい。これまでの物価上昇はコストプッシュによるところが大きかっただけに、円高によって輸入物価が落ち着けば、その分物価は鈍化しやすくなるだろう。25年6~7月頃にはCPIコアが+3%を割り込み、その後も比較的速いペースで上昇率の鈍化が進む可能性が出てきたことに注意しておきたい。
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新家 義貴

しんけ よしき

経済調査部・シニアエグゼクティブエコノミスト
担当: 日本経済短期予測

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