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2025.04.24
アジア経済
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トランプ関税
韓国もトランプ関税を前に景気にブレーキ、政策運営も課題山積
~金融市場は中銀の利下げ加速観測を強めようが、ウォン相場や不動産市況など課題は多い~
西濵 徹
- 要旨
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- このところの世界経済や国際金融市場は、米トランプ政権の関税政策の不透明感に揺れている。米トランプ政権はすべての国に一律で10%の関税に加え、一部の国に非関税障壁の影響を加味して税率を上乗せする相互関税を課す方針を示した。韓国はその対象となっており、経済への悪影響が懸念される。
- 韓国経済は外需依存度が相対的に高く、米中摩擦による中国景気の減速懸念も重なり、先行きは対米、対中輸出双方に不透明感が高まることが予想される。こうした外部環境の悪化を受けて、国内では企業の設備投資が減退するとともに、雇用悪化が個人消費を下押しするなど内需も力強さを欠いている。
- 1-3月の実質GDP成長率は前期比年率▲0.98%とマイナス成長となるなど景気に急ブレーキが掛かった。足元の実態は数字以上に悪い内容な上、先行きは在庫調整が景気の重石となる懸念もある。内・外需双方の低迷を受けて小売関連や物流関連、製造業など幅広い分野で生産が下振れする動きが確認された。
- 中銀は今月の定例会合で金利を据え置くも、先行きの利下げの可能性を示唆している。足元の景気に急ブレーキが掛かる動きが確認されたため、金融市場では中銀による利下げ加速化に対する期待が強まろう。しかし、為替や不動産市場に不安定要因が広がる兆しがあり、中銀は難しい舵取りを迫られるであろう。
このところの世界経済や国際金融市場は、米トランプ政権の関税政策を巡る不透明感に揺さぶられている。米トランプ政権は、すべての国に一律で10%とするとともに、一部の国に対して非関税障壁に応じて税率を上乗せする相互関税を課す方針を示した。今月初めには一律部分に加え、上乗せ部分も一旦発動させるも、直後に中国以外の国に対する上乗せ分を90日間延期させるなど、政策は二転三転してきた。他方、米中摩擦は激化の様相をみせてきたものの、足元では米トランプ政権から中国に対する上乗せ関税の引き下げを示唆する動きが出るなど、大きく転換する兆しもうかがえる。
米トランプ政権は韓国の平均関税率を50%とWTO(世界貿易機関)ベース(13.4%)に比べて極めて高く算出した上で、相互関税の税率を25%としている。上述のように相互関税の上乗せ分(15%)の発動は延期されたことで最悪の事態は避けられているものの、米トランプ政権は相互関税と別に、鉄鋼製品やアルミ製品、自動車を対象にした追加関税を発動させている。韓国経済にとって対米輸出額は名目GDP比7%弱である上、これらの輸出は対米輸出の約4割を占めており、足元ではその影響が顕在化する動きがみられる。さらに、先行きは同国にとって主力の輸出財である半導体など電子部品を対象に追加関税を課す方針を示しており、これらの輸出が対米輸出の約2割を占めるなか、対米輸出を巡る環境の一段の不透明化が懸念される。
韓国経済はアジア太平洋地域のなかでも構造面で外需依存度が相対的に高く、今後は対米輸出に下押し圧力が掛かるほか、米中摩擦の激化が中国景気の足かせとなることが懸念されるなど対中輸出にも不透明感が高まることは避けられない。こうしたなか、昨年末にかけては尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領の非常戒厳発令をきっかけにした政治の混乱が経済活動の足かせとなる動きがみられたものの(注1)、年明け以降はそうした影響が一巡している。さらに、トランプ関税の発動を前にした輸出の駆け込みが期待されたものの、1-3月の実質GDP成長率は前期比年率▲0.98%と3四半期ぶりのマイナス成長となり、中期的な基調を示す前年同期比ベースでも▲0.1%と4年強ぶりのマイナス成長に転じるなど、景気に急ブレーキが掛かっている様子がうかがえる。

需要項目別では、外国人来訪者数の堅調な流入を追い風にサービス輸出は拡大が続く一方、トランプ関税の影響に加え、最大の輸出相手である中国経済を巡る不透明感も重なり財輸出は大きく下振れするなど、外需が景気の足を引っ張る動きがみられる。さらに、外需の不透明感の高まりを受けて企業部門の設備投資意欲が後退しているほか、雇用環境の悪化も重なり個人消費にも下押し圧力が掛かるなど、内需も総じて力強さを欠く推移をみせる。そして、政治混乱の影響が長引いて政府が機能不全状態に陥るなかで政府消費も減少しており、公的需要による景気下支えも期待できない状況も景気の足を引っ張っている。なお、内需に総じて下押し圧力が掛かる動きを反映して財輸入は財輸出を上回るペースで減少しており、純輸出(輸出-輸入)による成長率寄与度は前期比年率ベースで+0.93ptと前期に続いて大幅プラスとなっており、足元の景気は数字以上に厳しい状況にあると捉えられる。さらに、在庫投資による成長率寄与度も前期比年率ベースで+0.24ptとプラスで推移するなど在庫が積み上がる動きも確認される。よって、先行きは外需に一段と下押し圧力が掛かるとともに、在庫調整の動きも景気の足かせとなる可能性に注意する必要がある。

分野別の生産動向も、前期は異常気象の影響で農林漁業関連の生産が大きく下振れしたものの、当期はその反動でプラスに転じるとともに、同様に鉱業部門の生産も拡大に転じるなど底打ちの動きが確認されている。また、サービス業のうち金融関連やIT関連、ビジネスサービス関連で生産拡大の動きが確認されるも、個人消費の弱さを反映して小売関連などの生産は下振れするとともに、トランプ関税を巡る不透明感を理由に物流が混乱したことも重なり関連サービスの生産も大きく下振れしており、全体としてのサービス業の生産は鈍化している。そして、企業部門の設備投資意欲の後退や、公共投資の進捗遅延の動きは建設業の生産の重石となるとともに、外需を巡る不透明感の高まりを反映して製造業の生産に急ブレーキが掛かる動きが確認されており、外需関連産業における生産下押しの動きが幅広い経済活動の足かせになっている。

中銀(韓国銀行)は、今月開催した定例会合で政策金利を2会合ぶりに2.75%に据え置く一方、先行きの政策運営について、景気減速リスクや米国との金利差に言及しつつ、追加利下げの可能性に含みを持たせる考えをみせた(注2)。足元のインフレは中銀目標の近傍で推移するなど落ち着いた推移をみせるなか、金融市場では米トランプ政権の政策運営を巡る不透明感を反映した米ドル安に伴いウォンの対ドル相場は底打ちするも、先行きも米ドル相場の行方に左右される展開は変わらない。さらに、外貨準備高は国際金融市場の動揺に対する耐性が乏しいと試算される水準にあるなか、米国との貿易協議を巡って米国製品の輸入拡大を迫られれば、対外収支を取り巻く環境が厳しさを増すとともに、ウォン相場を揺さぶる事態も考えられる。そして、国内では全土平均の不動産価格は下落に歯止めが掛からない一方、首都ソウルに限れば南部の江南(カンナム)区を中心に上昇が続く対照的な動きをみせるなど、格差が急速に広がる兆しもみられる。足元の景気に急ブレーキが掛かる動きが確認されたことで、金融市場では中銀の利下げ加速観測が強まることが予想されるが、上述のように様々な課題に直面するなかで中銀は困難な舵取りを迫られる展開が続こう。

注1 1月23日付レポート「韓国、政治混乱が経済の足を引っ張る悪循環、「トランプ2.0」にも懸念」
注2 4月17日付レポート「韓国中銀、トランプ関税とウォン相場に配慮も、追加利下げに含み」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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