インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

期待先行のルーブル高、停戦協議への期待の背後で原油安に直面

~期待先行感が極めて強いなか、原油価格の動向は停戦協議の行方にも影響を与える可能性~

西濵 徹

要旨
  • 足元の世界経済は米トランプ政権の関税政策により不透明感が高まっている。しかし、ロシアの通貨ルーブル相場は上昇し、取引も活発化している。これはウクライナ戦争の停戦協議の進展期待が影響している。しかし、経済制裁は依然継続しており、短期資金を中心とする「期待先行」の色合いが強いと捉えられる。

  • 2024年のロシア経済は、欧米などの制裁にもかかわらず成長が続いている様子がうかがえる。年末にかけての景気は底入れを強めたとみられるが、新興国向けを中心とする輸出拡大が続く一方、内需はインフレや中銀の利上げが足かせとなっている。ただし、足元ではインフレに頭打ちの兆しがうかがえる。

  • 他方、昨年以降は中銀の独立性に再び懸念が高まり、政治的な圧力を理由に利上げが見送られる動きもみられた。今後の物価や為替の動きには、停戦協議の行方や地政学リスクの動向が影響するとみられる。

  • さらに、OPECプラスの有志8ヶ国による自主減産決定を受けて、足元の原油価格は調整している。ロシアにとって重要な財源である原油収入の減少は財政、継戦能力に影響を与える可能性がある。よって、先行きについては原油価格の動きも停戦協議の行方に影響を与える可能性にも注意する必要があろう。

足元の世界経済や国際金融市場では、米トランプ政権の関税政策を巡る不透明感に揺さぶられている。しかし、ロシアの通貨ルーブルは底入れの動きを強めており、足元の対ドル相場は年初以降4割以上も上昇するなど取引は活況を呈している。このところのルーブル高の背景には、米トランプ政権の仲介によりウクライナ戦争を巡る停戦協議が進められていることが挙げられる。仮に停戦協議が進展し、欧米などの経済制裁が解除されれば、ロシア経済を巡る状況が大きく変化して景気回復が進むとの観測が影響しているとみられる。しかし、現時点では欧米などの経済制裁が継続しており、足元の取引活発化の動きはヘッジファンドを中心とする短期資金が中心と推測される。さらに、現時点においては協議の行方も依然として不透明であり、このところの動きは『期待先行』の色合いが極めて強いと捉えられる。

図表1
図表1

昨年の経済成長率は+4.3%(改定値)と速報値段階(+4.5%)から下方修正するも、前年(+4.1%)を上回り、ウクライナ戦争の長期化や欧米などによる経済制裁にもかかわらず、景気は堅調に推移している。さらに、四半期ベースの実質GDP成長率も、10-12月は前期比年率+6.35%と前期(同+3.62%)から加速して5四半期ぶりの高い伸びとなっている。中期的な基調を示す前年同期比の伸びも+4.5%と前期(同+3.3%)から加速しており、昨年末にかけての景気は底入れの動きを強めている様子がうかがえる。しかし、成長率寄与度の動きをみると、純輸出(輸出-輸入)のプラス幅が大幅に拡大したことが影響しており、ウクライナ戦争以降は欧米などが経済制裁を強化する背後で、中国やインドなどいわゆる『グローバルサウス』と称される新興国向け輸出が引き続き堅調に推移していることがある。一方、一昨年初めを境にインフレは再加速し、国際金融市場におけるルーブル安の再燃も重なり、中銀は物価と為替の安定を目的に再利上げを余儀なくされ、幅広く内需が鈍化して輸入に下押し圧力が掛かった模様である。よって、足元の景気は実態と乖離した動きをみせている可能性に留意する必要がある。

図表2
図表2

さらに、中銀は物価と為替の安定を目的に昨年後半に計3回の利上げ実施したものの、昨年末の定例会合では、直前のプーチン大統領による発言を忖度して利上げ休止を迫られるなど、その独立性が脅かされる動きが顕在化した。中銀は3月の定例会合でも2回連続で政策金利を据え置いており、景気の不透明感が高まるなかで利上げ実施のハードルが高まっている様子がうかがえる。しかし、先行きの物価動向については、停戦協議への期待を反映したルーブル高に加え、地政学リスクの緩和も追い風にディスインフレ効果が生まれる可能性に言及するなど、停戦協議の行方への期待が示唆された。なお、直近3月のインフレ率は前年同月比+10.34%と前月(同+10.06%)から加速し、コアインフレ率も同+9.64%と前月(同+9.54%)からともに加速しているものの、生活必需品を中心とする物価上昇圧力は後退しており、このところのルーブル相場の底入れの動きも重なり、早晩頭打ちに転じる兆しがうかがえる。よって、物価を巡る状況が変化する可能性が高まっていると捉えられる。

図表3
図表3

こうした状況を勘案すれば、停戦協議の行方次第ではあるものの、先行きのロシア経済を取り巻く環境に変化の兆しが出ていると捉えられる。しかし、米トランプ政権の関税政策をきっかけに世界経済を巡る不透明感が高まっていることに加え、ロシアも参加している主要産油国の枠組み(OPECプラス)の有志8ヶ国が今月初めに来月以降の自主減産枠の縮小で合意し(注1)、その後の国際原油価格は調整の動きを強めている。米トランプ政権はシェールオイルの増産を目指す動きをみせており、協調減産や自主減産の長期化を受けて世界産油量に占めるOPECプラスのシェアが低下するなか、有志8ヶ国による自主減産の縮小決定はそうした状況の打開を狙ったものと捉えられる。一方、原油関連収入はロシアの重要な財源であり、ここ数年の原油価格の高止まりや、グローバルサウス諸国によるロシア産原油の輸入拡大はウクライナ戦争の継戦能力を支えてきた。しかし、国際原油価格の下振れを受けてロシア産原油価格も調整の動きを強めており、足元では財政均衡水準を下回るなど財政運営に支障が出ることが懸念されるとともに、継戦能力にも少なからず悪影響が出ることも考えられる。こうした状況が停戦協議の行方に影響を与えるかは未知数ではあるものの、ロシア経済の足かせとなるとともに、停戦協議を巡る判断に影響を与える可能性に注意を払う必要がある。

図表4
図表4

以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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