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2025.04.16
アジア経済
米中関係
アジア経済見通し
アジア金融政策
中国経済
為替
トランプ関税
中国の1-3月成長率は+5.4%も、目標(5%前後)のハードルは高い
~構造問題に加え、統計に新たな疑念の動き、実態を正しく認識した上での方策が求められる~
西濵 徹
- 要旨
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足元の世界経済と国際金融市場は、米トランプ政権の関税政策の不透明さに揺さぶられる展開が続く。米中間では関税の応酬が激化しており、米国は中国からの輸入に145%、中国も米国からの輸入に125%とともに高関税を課す異常事態となっている。
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中国では、コロナ禍を経て内需が低迷したため、政府は財政・金融政策の総動員による内需喚起に舵を切った。さらに、足元の輸出はトランプ関税の発動を前にした駆け込みにより押し上げられている。よって、1-3月の景気は堅調な動きが期待されたが、実質GDP成長率は前年比+5.4%と予想を上回る伸びとなった。
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個別の経済指標も、内需喚起策を反映して耐久消費財需要が押し上げられ、小売売上高や鉱工業生産は回復傾向を強めている。また、ハイテク関連を中心とする製造業の設備投資も活発に推移し、当局の政策支援が下支えしている。ただし、設備投資は国有企業が主導するなど「国進民退」が続いている。不動産市場も依然厳しい状況が続く。他方、統計の遡及改訂により信ぴょう性に疑念が生じる懸念もある。
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当局は米中貿易摩擦の影響克服や経済成長率目標達成に自信を覗かせる。しかし、米中貿易摩擦による外需の低迷に加え、政策支援が招く人民元安が新たなリスク要因となる可能性はくすぶる。中国経済が抱える構造問題に留意しつつ、課題解決に向けて柔軟に対応していくことが何より求められる局面にある。
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このところの世界経済や国際金融市場は、米トランプ政権の関税政策の不透明さに揺さぶられる展開が続いている。なかでも中国とは、トランプ政権は2月からの段階的な追加関税に加え、今月には相互関税を課した上、中国による報復を受けて税率を大幅に引き上げるなど、米中間で報復合戦を演じている。結果、米国は中国からのすべての輸入品に計145%の関税を賦課し、中国も米国からのすべての輸入品に125%の関税を課す異常事態となっている。
一方、ここ数年の中国では、コロナ禍を経て不動産不況が深刻化しており、その後も若年層を中心とする雇用回復の遅れも重なり、個人消費や不動産投資など内需は力強さを欠く動きが続いた。当局は昨年半ば以降に内需喚起や不動産市場の下支えへ財政政策と金融政策の総動員に舵を切るなど、政策転換を図ってきた。こうした動きも追い風に、その後の内需は政策支援の対象となる財を中心に需要が押し上げられている。さらに、米トランプ政権の中国に対する強硬姿勢により、先行きは外需に悪影響が懸念されるなか、足元の輸出はそうした事態を見越した『駆け込み』により押し上げられている(注1)。

このように、足元の中国経済には内・外需双方に下支えや押し上げの動きがうかがえるほか、幅広く企業マインドも改善する動きが確認された(注2)。先月開催された全人代(第14期全国人民代表大会第3回全体会議)で同国政府は今年の経済成長率目標を5%前後とした上で、外需の下振れ懸念を念頭に、内需喚起へ『より積極的』な財政政策と『適度に緩和的な』金融政策に動く方針を示した。こうしたなか、1-3月の実質GDP成長率は前年同期比+5.4%と前期(同+5.4%)と横這いで推移し、当研究所の予想以上に力強い動きが確認された。季節調整値に基づく前期比年率ベースの成長率も+4.9%と前期(同+6.6%)からペースは鈍化するも拡大し、足元の景気は底入れが続いている。なお、分野別の生産動向は第1次産業(農林漁業)の生産は鈍化するも、第2次産業(製造業や鉱業、建設業)の生産拡大が景気底入れの動きをけん引している。一方、第3次産業(サービス業)の生産は力強さを欠くなど個人消費など内需の弱さを反映している。こうした状況は、1-3月の名目経済成長率が前年同期比+4.6%と丸2年にわたって「名実逆転」となっていることに現れており、中国経済のディスインフレ圧力の根強さを示唆している(注3)。

個別の経済指標も、当局の政策総動員による内需喚起策を反映して、3月の小売売上高(社会消費支出)は前年同月比+5.9%と前月(同+4.0%)から加速し、2023年12月(同+7.4%)以来の高い伸びとなるなど底入れの動きを強めている。前月比も3月は+0.58%と前月(同+0.62%)からペースは鈍化するも、11ヶ月連続で拡大して底入れが続いている。ただし、昨年以降の季節調整値が過去に遡って上方修正されており、先月時点では過去1年間緩やかな拡大に留まった状況から大きく変化している。よって、修正後の数字に基づけば、昨年後半以降の個人消費は拡大の動きを強めているが、上述したGDPの動きと整合的ではないことに留意する必要がある。なお、当局は年明け以降も耐久消費財の買い替え促進策(以旧換新)の対象拡大や支援拡充など内需喚起の取り組みを強化させており、電気機器(前年比+35.1%)や家具(同+29.5%)、通信機器(同+28.6%)、娯楽用品(同+26.2%)など耐久消費財の需要が押し上げられている。ただし、依然として不動産需要の弱さを反映して建築資材(前年比▲0.1%)の需要は下振れしており、家計部門の財布の紐の固さを反映して化粧品や衣類など日用品の需要も力強さを欠くなど、政策が消費行動を左右している。

一方、第2次産業(製造業や鉱業、建設業)の生産拡大による景気下支えを反映して、3月の鉱工業生産は前年同月比+7.7%と前月(同+5.9%)から大きく加速し、2021年6月(同+8.3%)以来の伸びとなっている。前月比も3月は+0.44%と前月(同+0.51%)から鈍化するも12ヶ月連続で拡大しており、足元の景気底入れは供給サイドがけん引役になっている。鉱工業生産も過去に遡って季節調整値は上方修正されているが、小売売上高に比べて小幅に留まるなど、この点でも統計への疑念が生じやすい。分野別では、鉱業部門(前年比+9.3%)で伸びが大きく加速したほか、製造業(同+7.9%)も堅調に推移しており、なかでもハイテク製造業(同+10.7%)で高い伸びが続く。財別でも、中国国内の過剰生産能力が懸念されるなか、年明け以降の以旧換新の対象拡大や支援拡充によるEV(電気自動車)などの需要下支えを反映して、新エネルギー車(前年比+40.6%)を中心に自動車生産は高い伸びが続く。さらに、企業部門への大規模設備の更新支援策を反映して、金属切削工作機械(前年比+23.0%)や産業用ロボット(同+16.7%)の生産は高い伸びをみせる。また、全人代で当局が米中摩擦の激化を念頭に『自立自強』の意志を示した集積回路(前年比+9.2%)やマイコン(前年比+7.8%)も生産全体を上回る伸びが続く。また、中国の過剰生産能力が指摘される発電機(前年比+107.2%)や太陽光電池(同+23.6%)も高い伸びが続き、先行きも新興国向け輸出拡大による『デフレの輸出』の動きも続く可能性が考えられる。

上述のように、企業部門に対する大規模設備の更新支援策が生産活動を押し上げるなか、設備投資や不動産投資などを併せた3月の固定資産投資は年初来前年比+4.2%と前月(同+4.1%)から伸びが加速している。当研究所が試算した単月ベースの前年同月比の伸びも3月は+4.3%と1-2月(同+4.1%)から加速して底入れしている。ただし、季節調整値に基づく前月比は、3月は+0.15%と1月(同+0.61%)、2月(同+0.55%)から鈍化するなど底入れの動きに一服感が出ている。実施主体別では、民間投資(年初来前年比+0.4%)は力強さを欠く一方、国有企業(同+6.5%)は対照的に高い伸びをみせ、投資活動も『国進民退』の様相が強まっている。さらに、投資対象別でも建設投資(年初来前年比+1.5%)は低調だが、設備投資(同+19.0%)は対照的に高い伸びをみせており、政策支援が投資活動を押し上げている。分野別でも、鉄道・船舶・航空宇宙など輸送用機械関連(年初来前年比+37.9%)や自動車関連(同+24.5%)など、中国国内の過剰生産能力が懸念される分野で軒並み高い伸びが続く。これら以外でもコンピュータ・通信・電子機器関連(年初来前年比+10.5%)や金属関連(同+12.2%)、繊維関連(同+13.5%)、一般機械関連(同+17.2%)、非鉄金属関連(同+17.9%)など幅広い分野で高い伸びが続き、設備更新の動きが活発化している。対照的に3月の不動産投資は年初来前年比▲9.9%と前年を下回る推移が続き、前月(同▲9.8%)からマイナス幅も拡大した。当研究所が試算した単月ベースの前年同月比の伸びも3月は▲10.0%と1-2月(同▲9.8%)からマイナス幅が拡大し、オフィス向けや商業用不動産向けの低迷が全体の足を引っ張っている。こうした状況を反映して3月の主要70都市の新築住宅価格も前年同月比▲4.5%とマイナスで推移し、前月比も±0.0%と横這いで推移するなど、当局の政策支援にもかかわらず上値は重い。実勢に近い中古住宅価格も下げ止まりの兆しがみえず、バランスシート調整圧力の根強さがうかがえる。

こうした状況を勘案すれば、1-3月の景気は外需の駆け込みと内需喚起策により底入れが促されたと捉えられる。しかし、先行きは米国との貿易戦争による外需下振れは避けられず、輸出面での影響は名目GDP比で4%超に達すると試算され、景気への深刻な悪影響が懸念される。さらに、中国の報復措置に伴う輸入面での影響も名目GDP比で1%を上回ると試算される。中国は飼料用穀物など農産物を米国からの輸入に依存するなか、中南米やロシアなどからの輸入拡大による分散化が見込まれる。しかし、中南米やロシアなどでの需要拡大で市況が上昇すれば、輸入多様化の効果が相殺される可能性がある。また、財政政策、金融政策の両面で景気下支えへの取り組み強化は期待されるが、一段の金融緩和は人民元安を通じて米国による為替操作国認定のリスクを高める。さらに、人民元安の進展は世界経済における中国経済の存在感低下を招くため、政策を足踏みさせる要因となり得る。中国当局は米中貿易摩擦の影響克服や経済成長率目標の実現に自信をみせるが、中国経済が抱える構造問題に留意しつつ、事態に対応することのハードルはこれまで以上に高まっていることと捉えられる。

注1 4月14日付レポート「中国の輸出に「トランプ関税」を前にした駆け込みの動きが顕在化」
注2 3月31日付レポート「中国1-3月GDPは伸び鈍化も「まずまずの出だし」の模様」
注3 4月10日付レポート「トランプ相互関税で中国の根強いディスインフレ圧力はどうなる?」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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