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2025.03.31
アジア経済
米中関係
アジア経済見通し
中国経済
トランプ政権
中国1-3月GDPは伸び鈍化も「まずまずの出だし」の模様
~前年比+5.0%、前期比年率+4.5%と予想、政府目標実現に向けた動きも不安要素は山積~
西濵 徹
- 要旨
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- 米トランプ政権は中国への関税賦課による圧力を強めている。中国も対抗措置を取るなど対立は激化しており、米中摩擦は不可逆的に悪化していく可能性が高まっている。こうしたなか、中国は内需喚起による景気下支えに動く考えをみせているが、却って足元の個人消費は政策への依存を強める展開が続いている。
- 3月の企業マインドを巡っては、製造業PMIは50.5、非製造業PMIも50.8と50を上回るとともに、足元の景気は底入れしている様子がうかがえる。生産活動は活発化しているが、受注動向に不透明感が残るほか、幅広く雇用調整圧力が強まる動きもみられる。足元ではディスインフレ懸念が高まっているが、不動産市況の調整や雇用調整の動きも重なり、先行きについてもディスインフレ圧力が一段と強まる可能性は高い。
- 1-3月の総合PMIは50.9と昨年10-12月、昨年1-3月と比較して低水準に留まるなど、足元の景気は力強さを欠く推移をみせる。生産統計も同様に昨年10-12月や1-3月に比べて低水準に留まるなか、当研究所は1-3月の実質GDP成長率は前年比+5.0%、前期比年率+4.5%に鈍化すると予想する。政府が掲げる成長率目標(5%前後)の実現に向けては「まずまずの出だし」になっていると捉えられる。
足元の世界経済を巡っては、『タリフマン(関税男)』を自称するトランプ米大統領が主導する関税政策に揺さぶられる展開が続いている。なかでも中国に対しては、2月4日付で中国からのすべての輸入品に10%の追加関税を賦課する大統領令を発令したほか、今月4日には税率を20%に引き上げるなど圧力を強める動きをみせている。一方の中国も米国からの一部の輸入品に対する追加関税を賦課するとともに、同国に進出する米国企業に対する独占禁止法に関する調査のほか、重要鉱物に対する輸出規制を実施する動きをみせている。他方、米トランプ政権はすべての国を対象に相互関税を課す方針も明らかにする動きをみせており、足元の中国の平均関税率は7.3%と米国(3.3%)に比べて高いことに加え、非関税障壁を理由にした措置にも言及するなかで如何なる措置が採られるか見通せない状況にある。こうしたことから、米中摩擦は不可逆的に悪化する可能性が高まっている。
他方、今月初めに開催された全人代(第14期全国人民代表大会第3回全体会議)では、外需を巡る不透明感が強まるなか、内需喚起を通じて景気下支えを図る姿勢を強める考えをみせた(注1)。経済政策面では『より積極的な』財政政策と『適度に緩和的な』金融政策に動く方針を示しており、なかでも金融政策の緩和シフトは世界金融危機直後以来のことであるなど、総合的、かつ積極的な政策支援に動くことが示されている。具体的には、財政出動を通じて昨年半ば以降に進めてきた家計部門に対する耐久消費財の買い替え促進(以旧換新)に加え、企業部門に対する大規模設備投資の更新促進の動きを一段と強化するなど、内需喚起を積極化させるとしている。ただし、足元では支援対象の財に対する需要が押し上げられる一方、全体としての個人消費は力強さを欠く推移が続いており、若年層を中心とする雇用回復の遅れに加え、不動産市況の低迷がバランスシート調整圧力を通じて家計部門の財布の紐を固くしていると判断される。よって、足元における個人消費をはじめとする内需は自律的なものとなっておらず、政策支援に対する依存度をこれまで以上に強めていると捉えられる。

このように足元の中国景気は政策支援への依存を強めるなか、31日に国家統計局が公表した3月の製造業PMI(購買担当者景況感)は50.5と2ヶ月連続で好不況の分かれ目(50)を上回るとともに、前月(50.2)から+0.3pt上昇するなど底入れしている。足元の生産動向を示す「生産(52.6)」は前月比+0.1pt上昇して11ヶ月ぶりの水準となるなど生産拡大の動きが確認されているほか、先行きの生産に影響を与える「新規受注(51.8)」も同+0.7pt上昇して12ヶ月ぶりの水準となるなど、内需が生産活動を下支えしている。その一方、「輸出向け新規受注(49.0)」は前月比+0.4pt上昇するも11ヶ月連続で50を下回る推移が続くなど、上述のように外需に不透明感が高まっていることが足かせとなっている。また、生産拡大の動きが確認されているにもかかわらず、「購買量(51.8)」は前月比▲0.3pt、「輸入(47.5)」も同▲2.0ptとともに低下するなど原材料需要は下振れしており、先行きの生産下振れを警戒しているとみられる。そうした傾向は生産拡大にもかかわらず「雇用(48.2)」は前月比▲0.4pt低下するなど雇用調整の動きが続いていることにも現れており、上述した当局による企業部門への設備更新促進策が結果的に『省人化投資』に向かうとともに、雇用が生まれにくくなっている可能性がある。こうした状況は、先行きも個人消費は勢いを欠く推移が続くとともに、政策支援への依存度を一段と強める可能性を示唆している。

3月の非製造業PMIも50.8と50を上回る推移が続くとともに、前月(50.4)から+0.4pt上昇して3ヶ月ぶりの水準となるなど、製造業同様に底入れの動きを強めている。業種別では「建設業(53.4)」は前月比+0.7pt上昇して10ヶ月ぶりの水準となっており、公共投資の進捗促進の動きが影響するなど、公的需要への依存を強めているとみられる。一方の「サービス業(50.3)」も前月比+0.3pt上昇して2ヶ月ぶりの水準となり、物流関連や放送・通信関連、金融関連で改善の動きがみられる一方、春節需要の一巡を反映して飲食関連や文化・スポーツ・娯楽関連、観光関連などは対照的に悪化する動きが確認されるなど、分野ごとの跛行色が鮮明になっている。こうしたことも影響して、サービス業の回復は建設業に比べて遅れている。ただし、足元の生産活動は底入れするなど活発化しているものの、先行きに影響を与える「新規受注(46.6)」は前月比+0.5pt上昇するも50を大きく下回るほか、「輸出向け新規受注(49.8)」も同+0.3pt上昇するもともに50を下回る推移をみせており、内・外需ともに受注動向は力強さを欠いている。さらに、中国においては不動産価格の調整による資産デフレを契機に本格的なデフレに陥る懸念に直面するが(注2)、「出荷価格(46.7)」は前月比▲0.9pt低下して6ヶ月ぶりの水準となるなど物価に下押し圧力が掛かるなどディスインフレ基調は一段と強まっている。そして、非製造業も「雇用(45.8)」は前月比▲0.7pt低下して3ヶ月ぶりの低水準となるなど調整圧力が強まるなど、幅広い分野で雇用回復が遅れている。

3月の総合PMIは51.4と前月(51.1)から+0.3pt上昇しており、製造業、非製造業ともに改善していることを反映して底入れが進んでいるとみられる。なお、1-3月平均では50.9と昨年10-12月(51.3)を下回る水準に留まるとともに、昨年1-3月(51.5)をも下回っており、足元の景気は力強さを欠いていると捉えられる。ただし、中国のGDP統計は供給サイドの統計であり、製造業、非製造業ともに生産に関する指数は昨年10-12月、昨年1-3月と比較して低水準に留まっており、1-3月のGDPは拡大が続くも勢いは弱まっていると予想される。こうした状況を勘案すれば、1-3月の実質GDP成長率は前年同期比ベースで+5.0%、前期比年率ベースでも+4.5%と前期(それぞれ+5.4%。+6.6%)から鈍化すると予想し、今年の成長率目標(5%前後)の実現に向けてはまずまずの出だしになると見込まれる。
注1 3月5日付レポート「2025年全人代開幕、次期5カ年計画への基盤強化を目指す方針」
注2 3月10日付レポート「中国・コアインフレもマイナスに、ディスインフレ懸念は一段と深刻化」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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