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2025.04.09
アジア経済
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RBNZは5会合連続利下げも、トランプ関税の影響を見定める構え
~後任総裁人事に手間取るなかで緩和継続は不可避、NZドル相場は上値の重い展開が続くか~
西濵 徹
- 要旨
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- ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は、9日の金融政策委員会で政策金利(OCR)を5会合連続で引き下げた。しかし、利下げ幅を25bpに縮小させており、昨年来の緩和局面での利下げ幅は200bp、OCRも2年半ぶりの水準となる。これは、過去のインフレ高進後の利上げと景気後退を経て、足元では景気に底打ちの兆しがみられるなか、金融緩和を維持しつつそのペースを調整したものと捉えられる。
- ただし、足元では米トランプ政権が発表した相互関税が世界経済や同国経済に悪影響を与える懸念があり、RBNZもその影響を注視している。会合後に公表した声明文では、政策運営は中期的な物価動向を注視しているとした上で、現時点ではリスクバランスは取れているとの見方を示している。その一方、関税政策の影響が明確化した後の追加利下げ余地に言及するなど、追加利下げに含みを持たせる考えをみせる。
- 他方、RBNZを巡っては先月の前総裁辞任後の後任人事が遅れている状況が続いている。その背景には政策運営に対する批判も影響している可能性がある。当面は緩和的な金融政策を継続せざるを得ない展開が続き、NZドルの対米ドル相場や対円相場は上値の重い展開が続く可能性は高いと見込まれる。
ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は、9日に開催した定例の金融政策委員会において、政策金利であるオフィシャル・キャッシュ・レート(OCR)を5会合連続で引き下げた。しかし、利下げ幅は4会合ぶりに25bpに縮小させた。この決定により昨年来の緩和局面における利下げ幅は累計200bpとなり、OCRは3.50%と丸2年半ぶりの低水準となるなど緩和姿勢を強めている。なお、RBNZは2月の前回会合において4会合連続の利下げに加え、当面の政策運営を巡って追加利下げを示唆する考えを示したため、利下げそのものは規定路線であったと捉えられる(注1)。さらに、同時に公表した最新のインフレ見通しで示された政策見通しは、短期的に利下げペースの加速を示唆したため、今回会合においても大幅利下げに動く可能性も想定された。

他方、ここ数年の同国経済はインフレに直面したが、商品高の一巡に加え、RBNZが物価と為替、不動産市況の沈静化を目的に累計525bpの利上げに動いた上で、タカ派姿勢を長期化させたことも重なり、2022年後半に一時30年ぶりの水準に高進したインフレは頭打ちに転じた。さらに、RBNZによる引き締め効果を受けて家計消費をはじめとする内需に下押し圧力が掛かり、最大の輸出相手である中国景気の減速が外需の足を引っ張り、昨年半ば以降の同国経済は2四半期連続のマイナス成長となるリセッション(景気後退局面)に陥るなどさらなるインフレ鈍化を促した。一方、インフレ鈍化を受けて昨年10-12月の実質GDP成長率は前期比年率+2.62%と3四半期ぶりのプラス成長に転じるなどリセッションを脱し、昨年後半以降のRBNZの断続利下げを追い風に幅広く企業マインドは改善しており、足元の景気は一段と底入れの動きを強める可能性が示唆されている(注2)。よって、上述のようにRBNZは前回会合時点では緩和ペースの加速を示唆したものの、景気の底打ちが期待されるなかで金融緩和を維持しつつ、そのペースを後退させたと捉えられる。

足元では米トランプ政権が発表した相互関税が世界経済や国際金融市場を揺さぶる事態に直面している。同国への相互関税率は10%とすべての国に対する一律水準とされたが、同国の対米輸出額はGDP比2.1%(2024年)に上り、輸出の大宗を占める中国をはじめとするアジア新興国景気への悪影響が予想され、同国経済に対して間接的に悪影響が及ぶと懸念される。こうしたなか、RBNZは会合後に公表した声明文において、今回の決定について「追加利下げが適切」とした上で、「インフレは目標(2±1%)の中央近傍に留まり、コアインフレも中期的に目標域に留まる状況と整合的」との見方を示している。そして、足元の経済動向について「前回会合時点の見通し通りの動きをみせており、輸出価格の上振れとNZドル安が交易条件の改善を通じて景気を下支えする一方、金融緩和にもかかわらず家計消費や住宅投資は弱含んでいる」との見方を示している。また、米トランプ政権の関税政策について「世界経済の見通しを弱めており、同国にも景気、物価の両面で下振れリスクをもたらす」としつつ、「国内外の物価に与える影響は曖昧」との見通しを示している。なお、先行きの政策運営について「関税政策による物価への中期的な影響を注視する」として「物価見通しを巡る不確実性は高まっているが、現時点ではリスクのバランスは取れている」とした上で、「関税政策の範囲と影響の明確化に伴い必要に応じてさらに引き下げる余地がある」と追加利下げに含みを持たせた格好である。
RBNZでは先月、オア前総裁が任期途中で辞任する一方、ホークスビー副総裁が総裁代行を務めるなど後任人事は不透明とされた(注3)。政府は8日付でホークスビー総裁代行を6ヶ月の任期で総裁に任命した上で、任期は最大3ヶ月延長される可能性を示したが、後任人事の選定に手間取っている様子がうかがえる。オア氏が突然辞任した背景には、同氏の下でRBNZは物価抑制に手間取り、その後はリセッションに陥るなど実体経済に深刻な悪影響が出るなか、政府を中心に政策運営に対する批判が高まったことがある。後任人事が手間取る一因にはこうした事情も影響している可能性があるなか、当面は一段の緩和が見込まれるなかでNZドルの対米ドル相場は上値の重い展開が続くほか、日本円に対しても同様の展開となることが見込まれる。

注1 2月19日付レポート「RBNZは4会合連続の利下げに加え、当面の追加利下げを示唆」
注2 3月21日付レポート「ニュージーランドは景気後退局面脱却でNZドル相場の行方は」
注3 3月5日付レポート「RBNZオア総裁が任期途中で辞任、奇妙な辞任劇が意味するものは」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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