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RBNZオア総裁が任期途中で辞任、奇妙な辞任劇が意味するものは

~理由は不明な一方、後任総裁人事も不明であるなど突然の辞任劇であった様子がうかがえる~

西濵 徹

要旨
  • ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は5日にオア総裁が退任し、今月末に辞任することを発表した。オア氏は労働党政権下の2018年に総裁に就任し、一昨年に再任されており任期満了まで3年を残しての突然の辞任となる。オア氏の下でRBNZはコロナ禍対応で異例の金融緩和に動いて早期の景気回復を実現する一方、その後のインフレ高進を招く一因になった。よって、国民党は政権交代前に同氏の政策運営を批判してきたほか、政権交代後は留任させる一方で圧力を強めてきた経緯がある。昨年の同国経済は景気後退局面入りする一方、インフレ鈍化を受けて大幅利下げに動くなかで足下では景気回復の兆しもみられる。しかし、同氏は突然の辞任を公表するとともに、その理由も明かされていない。さらに、総裁代行を置くとともに、次期総裁人事も不透明であるなど突然の交代劇である様子がうかがえる。今回の辞任劇によるNZドル相場への影響は限定的とみられるが、次期総裁人事如何では大きく動揺する可能性に要注意と言えよう。

ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は5日、オア総裁が退任するとともに、今月末付を以って辞職することを明らかにした。オア氏を巡っては、労働党のアーダーン政権下の2018年に総裁に就任し、1期目の任期満了となる2023年に再任されており、2028年までの2期目の任期を3年残しての突然の辞任となる。なお、オア氏の下でRBNZはコロナ禍対応を目的とする異例の金融緩和に舵を切り、結果として同国経済は早期にコロナ禍の影響を克服することに成功した。他方、異例の金融緩和を受けた金融市場の『カネ余り』の影響も重なる形で同国はインフレに直面するとともに(図1)、インフレ対応を巡ってRBNZは難しい舵取りを迫られてきた。長引くインフレも影響する形で2023年の総選挙では労働党が敗北を喫するとともに、国民党を中心とする形でラクソン政権が発足するなど政権交代が起こる事態に発展した。さらに、国民党は野党時代にオア氏の政策運営を巡る『失敗』がその後のインフレを招いたとして同氏に批判の矛先を向けるとともに、RBNZの権限付託の縮小を公約に掲げるなど同行を『目の敵』にする動きをみせてきた。ただし、国際金融市場からの信任への影響を考慮して政権が交代した後もオア氏を総裁に留任させる一方、RBNZの権限付託の縮小を盛り込んだ同行法改正に着手して政策目標は物価安定のみに変更された。

図表1
図表1

その後もインフレはRBNZが定める目標を上回る推移が続いたことで政府内では同行に対する圧力が強まる一方、昨年半ば以降の同国景気はマイナス成長が続く景気後退局面入りするなど実体経済に深刻な悪影響が出る事態となった。他方、昨年末にかけてのインフレは頭打ちの動きを強めるとともに、目標域に収まるなど落ち着きを取り戻しており、RBNZは昨年8月に利下げに動いたほか、その後も断続、かつ大幅利下げを繰り返すなど緩和ペースを加速させる動きをみせている(注1)。結果、足下においては低迷が続いた企業マインドが大きく改善する動きが確認されるなど、上述のように景気後退局面に陥った状況に改善の兆しがうかがえる動きもみられた(図2)。しかし、報道に拠ればオア氏は数日前から理事会との間で辞任に向けた話し合いが行われていた模様が明らかになる一方、RBNZが公表した声明文では同氏の辞任に関する具体的な理由は示されないなど、極めて不可解な辞任劇となっている。

図表2
図表2

なお、RBNZが公表した声明文では、オア氏は5日付で総裁を退任するも、今月31日までは総裁職にあり続ける一方、オア氏の退任を受けて今月31日まではホークスビー副総裁が総裁代行を務めるという奇妙な人事が採られる格好となっている。また、ホークスビー副総裁が金融政策委員会の議長も務めるとしている。さらに、4月1日以降についてはウィリス財務相が理事会の推薦に基づく形で最長6ヶ月の任期で臨時総裁を任命するとともに、その間に次期総裁を選ぶとしており、今回のオア氏の辞任劇が唐突であることを示唆している。突然の辞任劇にも拘らずNZドル相場は比較的落ち着いた推移をみせるなど影響は限定的なものに留まるが(図3)、当面の政策運営が緩和方向にシフトしていることに鑑みれば上値の重い展開が続くと見込まれるほか、次期総裁人事の行方如何では大きく下振れする可能性にも留意する必要がある。

図表3
図表3

以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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