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RBAは金利据え置きも、不確実性を意識して「タカ派」姿勢後退

~インフレ鈍化を好感、追加利下げへの慎重姿勢も後退、豪ドル相場は上値の重い展開が続くか~

西濵 徹

要旨
  • オーストラリア準備銀行(RBA)は1日の定例会合で2会合ぶりに政策金利を4.10%に据え置いた。RBAは2月の前回会合でコロナ禍後初の利下げに動いたものの、今回は様子見姿勢をみせた。足元の景気は底打ちが確認される一方、労働市場に変調の兆しがみられるほか、不動産市況の抑制への取り組みも前進しつつある。また、足元のインフレ指標はRBAが定める目標域に収束しているものの、RBAは四半期ベースの物価指標を重視しており、1-3月の物価統計の公表後に追加利下げの可否を判断するとみられる。
  • 会合後に公表した声明文では、物価動向について「基調インフレは緩和している」と評価しつつ、慎重姿勢を維持した。しかし、先行きについて追加利下げに慎重とした文言を削除するなど、タカ派姿勢を後退させた上で、今後のデータ次第で利下げに含みを持たせていると捉えられる。ブロック総裁も「5月の次回会合での利下げの扉は開いていない」との考えを示すも、「データを待つのが賢明」と述べるなど様子見を図ったとみられる。当研究所は5月の次回会合での利下げを予想しており、利下げ観測が重石になっている豪ドル相場は、先行きについても当面は上値の重い展開が続く可能性が高いと見込まれる。

オーストラリア準備銀行(RBA)は、1日に開催した定例の金融政策決定会合において、政策金利であるオフィシャル・キャッシュ・レート(OCR)を2会合ぶりに4.10%に据え置く決定を行った。当研究所は先月26日に発表したレポートにおいてRBAが4月会合で金利を据え置くと予想していたが、その通りの結果になった(注1)。なお、RBAは2月の前回会合においてコロナ禍の影響一巡後初の利下げに動いている。足元のオーストラリア経済を巡っては、物価高と金利高の共存長期化を受けて景気は頭打ちしており、インフレもRBAが定める目標域に収束するなど落ち着きを取り戻していることが利下げを後押しした。しかし、RBAは先行きの政策運営について、慎重姿勢や抑制的であり続ける必要があると言及するなど『タカ派』姿勢を強調する姿勢をみせた(注2)。

図表
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足元のインフレを巡っては、アルバニージー政権が今年度(2024-25年度)から実施している電気料金への補助金政策を受けたエネルギー価格の下落が落ち着きを取り戻している。その一方、最低賃金の大幅引き上げなどにもかかわらず、その後も労働市は堅調な推移をみせるなど賃金インフレが警戒される状況が続いてきた。さらに、上述のように景気は頭打ちの様相を強めるとともに、高金利状態が長期化しているにもかかわらず、足元においても不動産価格は上昇が続くなど新たなインフレ要因となる懸念もくすぶる。また、直後に公表された昨年10-12月の実質GDP成長率は前期比年率+2.35%と丸2年ぶりとなる高い伸びを記録しているほか、中期的な基調を示す前年同期比の伸びも+1.3%と加速するなど頭打ちが続いた景気が底打ちに転じる動きが確認されている(注3)。こうした事情も影響して、RBAは景気に配慮して利下げに動くも、上述したようにタカ派姿勢を堅持することに繋がったと捉えられる。

ただし、足元においては堅調な推移をみせてきた労働市場に変調の兆しがうかがえるなど高金利政策の弊害が顕在化する動きが出ている。さらに、不動産市況の高止まりなどに対応して、アルバニージー政権は4月から2年間を対象に外国人投資家による中古住宅の購入を禁止する措置に動くなど、その効果については不透明ではあるものの取り組みを強化する姿勢をみせている。そして、インフレ圧力がくすぶることが懸念されたにもかかわらず、直近2月のインフレ指標はRBAが注視するコアインフレ率(トリム平均値)、及び物価変動の大きい財と観光を除くベースのすべてが目標域に収まるなど、物価を巡る状況も改善している様子がうかがえる。他方、月次の物価統計の内容を巡っては、部分的な指標を用いるなど完全なものとはなっておらず、RBAも依然として四半期ベースの物価統計の動きを重視していることに鑑みれば、1-3月の動きを待ってから『次の行動』に移ると見込まれ、今回は様子見を図ることは充分に考えられた。

図表
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こうしたなか、会合後に公表した声明文では、足元の物価動向について「基調的なインフレは緩和している」と前回会合と同じ見方を示す一方、今回の決定について「インフレは最新見通しに沿う形で鈍化しているが、持続可能な形で目標域の中央値(2.5%)に戻るべく確信する必要がある」との考えを示している。そして、先行きの景気動向について「依然として不透明」としつつ、政策運営について「依然として引き締め的である」との認識を示すも「海外の経済活動とインフレに重大な影響を及ぼす場合には金融政策を通じて対応する用意がある」との考えを示している。また、物価動向について「基調インフレの継続的な低下を歓迎している」としつつ、「なお上下双方にリスクがある」として現状において慎重姿勢を維持したと捉えられる。その上で、先行きの政策運営については引き続き「インフレを持続的に目標域に戻すことが最優先」としつつ、前回会合で示した『追加利下げに慎重』との文言を削除するなどタカ派姿勢を後退させるとともに、今後の決定について「データとリスク評価に基づいて判断し、世界経済や金融市場の動向、内需の動向、物価と労働市場の見通しに細心の注意を払う」、「インフレを目標域に戻す断固とした決意は変わらず、この実現に向けて必要なことを行う」としている。

また、会合後に記者会見に臨んだ同行のブロック総裁は、今回の会合について「利下げは協議しなかった」とした上で「全会一致であった」とするなど、あらためて慎重姿勢を示した。その上で、足元の労働市場についても「依然としてひっ迫している」との認識を示す一方、物価見通しについて「インフレ抑制に向けた自信は強まっている」としつつ「金融市場が抱く利下げ観測は支持しない」とした上で「5月の次回会合での利下げに向けた扉は開いていない」と慎重姿勢をあらためて強調している。その上で、5月の次回会合に向けて「データに基づいて見通しを更新する」としつつ、物価動向について「全体的にかなり好調」、「もう少しデータを待つのが賢明」との見方を示すなど、今月30日に公表予定の1-3月物価統計を踏まえて次回会合での利下げの可否を判断すると予想される。

なお、上述したように当研究所はRBAが5月の次回会合で追加利下げに動くとみており、足元の豪ドル相場は米ドル高の動きに一服感が出ているものの、RBAの利下げ観測が重石になっているとみられる。当面は上値の重い展開が続く可能性が見込まれるほか、日本円に対しても日銀の追加利上げが意識されるなど、金融政策の方向性の違いが相場を左右することが予想される。

図表
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以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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