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2025.03.26
アジア経済
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インフレ鈍化でRBAの5月利下げが見込まれ、豪ドル相場は?
~四半期統計を重視するなかで4月は様子見も5月利下げの可能性は高まっていると予想~
西濵 徹
- 要旨
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- このところのオーストラリア景気は内・外需双方で頭打ちする動きをみせてきた。しかし、インフレ鈍化や所得税減税の効果に加えて外需に駆け込みの動きが出たため、昨年10-12月の実質GDP成長率は加速するなど底打ちが確認された。さらに、インフレ鈍化を受けてRBA(中銀)は2月にコロナ禍後初の利下げに動いたが、労働市場の強含みや不動産市況の高止まりなどを理由に「タカ派」姿勢を維持した。ただし、足元では雇用環境に変調の兆しが出ている上、政府も不動産市況の抑制に向けて外国人投資家による中古住宅の購入禁止に動くなど、RBAが慎重姿勢を維持する前提条件が変化する可能性が出てきている。
- こうしたなか、2月のインフレ率は前年比+2.4%に鈍化している上、コアインフレ率、RBAが重視する物価統計のいずれも目標域(2~3%)に収まるなど落ち着いた動きをみせる。また、アルバニージー政権は来年度予算案を公表し、所得税減税や電力料金補助金の実質延長のほか、次期総選挙を念頭に家計支援を拡充する方針を示している。来年度は3年ぶりにプライマリー赤字に転じる一方、物価への影響は限定的と見込まれる。なお、RBAは四半期ベースの物価統計を重視しており、4月会合では様子見を図る一方、5月会合で利下げに動く可能性は高まっていると判断できる。足元の豪ドル相場は米ドル安の動きが下支え役となっているが、先行きは米ドル高再燃の可能性もくすぶるなかで方向感の乏しい展開が見込まれる。日本円に対しては日銀の利上げが意識されるなかで上値が抑えられる可能性に留意する必要がある。
このところのオーストラリア経済を巡っては、外需面では最大の輸出相手である中国経済の変調、内需面では物価高と金利高の共存長期化に直面するなか、頭打ちの傾向が強まった。しかし、商品高の一巡に加え、アルバニージー政権が実施した電力料金を対象とする補助金政策の効果も重なり、昨年後半以降のインフレはRBA(中銀)が定める目標域で推移するなど落ち着いた動きをみせている。さらに、同国では今年5月までに連邦議会下院(代議院)総選挙が予定されるなか、今年度(2024-25年度)予算における所得税減税も重なり、足下の実質賃金の伸びはプラスに転じるなど、家計部門を取り巻く環境は変化している。また、昨年末にかけての中国景気は底打ちするとともに、米トランプ政権の発足を前に対米輸出に駆け込みの動きが出るなど、外需も押し上げられた。結果、昨年10-12月の実質GDP成長率は前期比年率+2.35%と丸2年ぶりのペースに加速しており、中期的な基調を示す前年同期比ベースも+1.3%に加速するなど底打ちの動きが確認されている(注1)。

一方、景気の頭打ちが意識されるとともに、上述したようにインフレが落ち着いた動きをみせていることも重なり、RBAは2月の定例会合においてコロナ禍以降初となる利下げに動いた。しかし、ブロック総裁は先行きの政策運営について慎重姿勢を崩さない考えを示すなど『タカ派』的な内容であった(注2)。その理由について、高金利政策の長期化にもかかわらず労働市場が強含みする動きをみせていることに加え、不動産価格も上昇基調が続いてインフレ要因となることが警戒されることも影響している。こうした事態を受けて、アルバニージー政権は4月から2年間を対象に外国人投資家による中古住宅の購入を禁止するなど不動産市況の沈静化に向けた対策を強化する動きをみせている。さらに、2月の雇用統計においてはこれまで堅調な動きをみせてきた雇用環境に頭打ちの兆しがうかがえるほか、非正規雇用のみならず正規雇用にも調整の動きが確認されるなど、先行きの物価を取り巻く状況が変化する可能性も出ている。なお、RBAの首脳陣は相次いで先行きの政策運営に関連して「市場見通しよりも依然として慎重」とする考えを相次いで示している。しかし、そうした見方に対する『前提条件』に変化の兆しが出ていると捉えられる。

上述のように昨年後半以降のインフレは目標域で推移するなど落ち着いた動きをみせるなか、2月のインフレ率も前年同月比+2.4%と前月(同+2.5%)からわずかに伸びが鈍化して7ヶ月連続で目標域に収まっている。前月比も+0.00%と前月(同▲0.24%)に続いて落ち着いた動きをみせており、一部の非貿易財を中心とする財価格に上昇圧力はくすぶるものの、観光関連を中心とするサービス物価の下振れが物価の重石となっている。なお、同国ではトリム平均値(刈り込み平均値)ベースのインフレ率をコアインフレ率としており、2月は前年同月比+2.7%と前月(同+2.8%)からわずかに鈍化して3ヶ月連続で目標域に収まるなど落ち着いた動きをみせている。さらに、RBAは物価変動の大きい財と観光関連を除いたベースのインフレ率を注視するなか、こちらも2月は前年同月比+2.7%と前月(同+2.9%)から鈍化しており、すべてのインフレ指標が目標域に収まっている。足下のインフレは一段と落ち着きを取り戻していると捉えられる。

こうしたなか、アルバニージー政権は7月からの来年度(2025-26年度)予算案を公表し、貿易戦争や地政学的な緊張による全世界的なリスクの高まりを念頭に経済の耐性と競争力の強化に取り組むとした。その上で、多くの国民が実感する生活費高騰に対応したとして、上述した今年度予算で実施されている所得税減税の延長に加え、最低税率を引き下げるとともに、その対象をすべての労働者に広げるとしている。さらに、今年度予算で実施されている電力料金に対する補助金政策も今年末まで半年間延長するほか、公立学校への資金援助の拡大や債務を抱える学生を対象に負担軽減を図るとともに、公的医療の拡充を盛り込むなど、5月までに実施される次期総選挙を念頭に家計部門の負担軽減を重視した格好である。一連の歳出拡大を受けて来年度のプライマリー収支は▲276億豪ドルと3年ぶりの赤字に転じるとともに、政府が昨年12月に示した見通し時点(▲269億豪ドル)から赤字幅は拡大するとしている。上述のように足元のインフレは落ち着いた動きをみせている上、予算案に伴う物価への影響は限定的と見込まれるものの、RBAは月次以上に四半期ベースの物価統計を重視していることに鑑みれば、4月会合では様子見を図るも5月会合で利下げに動く可能性は高まっている。足元の豪ドル相場は米トランプ政権の政策運営を巡る不透明感などを受けた米ドル安の動きが下支え役となっている。しかし、先行きについては米ドル高が再燃する可能性もくすぶるなかで方向感の乏しい展開が見込まれるほか、日本円に対しては日本銀行による利上げが意識されることで上値が抑えられる可能性に引き続き留意する必要があろう。

注1 3月5日付レポート「オーストラリア景気は底打ち、RBAの判断や豪ドル相場はどうなる?」
注2 2月18日付レポート「RBAが4年3ヶ月ぶりの利下げも、慎重姿勢を崩さず「タカ派的」」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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