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2025.03.28
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メキシコ中銀、米通商政策の「不確実性」警戒で追加大幅利下げ
~ペソ相場は米ドル高一服で底堅い動きも、先行きは大きく動揺する可能性に引き続き要注意~
西濵 徹
- 要旨
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- メキシコ中銀は3月27日の定例会合で政策金利を50bp引き下げて9.00%とする決定を行った。政策金利は約2年ぶりの水準となり、同国景気が頭打ちするなか、インフレ鈍化を受けて実質金利は高水準で推移していることに対応した。さらに、足元では米トランプ政権の通商政策を巡る不透明感が高まっており、6会合連続の利下げに加え、2会合連続の大幅利下げにより緩和ペースの加速に舵を切った格好である。
- 中銀は物価見通しを据え置くとともに、上下双方に振れるリスクに留意するもリスクバランスは改善しているとの認識を示している。しかし、米トランプ政権は来月2日付ですべての自動車輸入に関税を課す決定を行っており、対米輸出の4分の1を自動車が占めるなど同国経済に与える影響は甚大と見込まれる。足元のペソ相場は米ドル高一服を受けて底堅い動きをみせているが、先行きは米トランプの通商政策をはじめとする不透明要因が山積するなか、大きく動揺する可能性には引き続き要注意の状況は変わらない。
メキシコ中央銀行は、27日に開催した定例の金融政策において、政策金利を2会合連続で50bp引き下げ、約2年半ぶりの9.00%とすることを決定した。このところのメキシコ経済を巡っては、2022年後半のインフレ頭打ちを受けて実質金利が高止まりして内需の重石となるとともに、米トランプ政権による通商政策を巡る不透明感が外需の足かせとなることが懸念されている。よって、中銀は昨年3月にコロナ禍一巡後初の利下げに動くも、その後に6月の大統領選挙、および連邦議会上下院選挙の結果を受けて国際金融市場で通貨ペソ、株式、債券のすべてに売り圧力が掛かる『トリプル安』に直面したため、中銀は利下げ休止に追い込まれた。

しかし、景気は一段と頭打ちの様相を強めたほか、インフレも頭打ちしたため、中銀は昨年8月に再利下げに動くとともに、今年2月の前回会合まで5会合連続の利下げに加え、利下げ幅を拡大させるなど緩和ペースを加速させた(注1)。さらに、その後もインフレは一段と頭打ちして足元では中銀目標の域内で推移するなど落ち着いた動きをみせており、中銀の断続利下げにもかかわらず実質金利は歴史的高水準で推移するなど、金融政策は引き締まった状況が続いている。また、足元では米トランプ政権の通商政策を巡る不透明感が一段と高まり、財輸出の約8割を米国向けが占める同国経済に深刻な悪影響が出る懸念が高まっている。よって、中銀は6会合連続の利下げに加えて、2会合連続で50bpの大幅利下げに動くなど金融緩和のペースを加速させる決定を行った。

会合後に公表した声明文では、世界経済の見通しを「米国の関税政策を反映して下方修正した」とした上で、先行きも「貿易戦争や地政学リスク、これらに起因するインフレや景気減速、金融市場のボラティリティによるリスクは高い」との見方を示している。また、同国経済についても「不確実性の高まりや貿易戦争による下振れリスクに直面している」としている。他方、物価見通しについて「来年7-9月に目標(3%)に収束する従来見通しを維持する」とした上で、上振れリスクに「①ペソ安、②地政学リスク、③コアインフレの高止まり、④コスト上昇圧力、⑤異常気象の影響」を、下振れリスクに「①景気下振れ、②コスト上昇要因に伴うパススルー効果の低減、③ペソ安に伴う物価への影響低減」を挙げつつ、「リスクバランスは上方に傾くも改善しているが、米トランプ政権の経済政策が不確実性を招いている」としている。そして、先行きの政策運営について「今後も政策スタンスの調整を継続して、同程度の調整を検討する可能性がある」と50bpの利下げに含みを持たせつつ、「景気下振れや抑制的な政策スタンスによる物価への影響を考慮しつつ、インフレを3%の目標に持続的に収束すべく対応する」との考えを示した。

なお、足元の国際金融市場においては、米トランプ政権の通商政策を巡る不透明な動きにもかかわらず、米ドル高の動きに一服感が出ていることを反映してペソ相場は底堅い動きをみせてきた。しかし、米トランプ政権は来月2日付ですべての自動車輸入に25%の関税を課す旨の大統領令の発令に動いており、メキシコにとって自動車輸出は財輸出全体の4分の1強を占めるため、関税による直接的な影響はGDP比1.8%に達すると試算される。よって、景気への悪影響は深刻なものとなることは避けられない上、シェインバウム政権が報復措置も辞さない考えを示していることに鑑みれば、先行きは物価の押し上げに繋がることも懸念されるなど、中銀は米トランプ政権の通商政策の影響を依然として見極め切れていない可能性も考えられる。その意味では、先行きのペソ相場には不透明要因が山積するなかで大きく動揺する可能性に引き続き注意を払う必要性は変わっていないと捉えられる。

注1 2月7日付レポート「メキシコ中銀、利下げペースを加速させるも不確定要因は山積」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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西濵 徹

