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2025.03.13
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~その19:テクニカル分析の基本②移動平均線~
嶌峰 義清
- 要旨
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- 移動平均線はローソク足チャートに加えられて描かれることが多い、基本的なテクニカル分析手法の一つだ。
- 移動平均線と実際の相場のグラフを比較することで、トレンドの変化や、相場の行きすぎ感をはかり、売買のタイミングを見極める材料の一つとされている。
移動平均線は過去の価格の平均値をつなげたもの
移動平均線は、ある一定の期間の終値の平均値を折れ線グラフにしたもので、ローソク足チャートなどに加えて示し、その方向性や水準、期間の異なる移動平均線同士の動き、直近の価格と移動平均線との乖離率などから、相場の方向性や転換時期などを探るために利用される(図表1)。

平均をとる期間によって、①短期移動平均線(5日、10日など)、②中期移動平均線(20日、25日、75日、90日など)、③長期移動平均線(100日、200日など)がある。同様に、週足であれば26週や52週、月足であれば12ヶ月や60ヶ月などが存在する。
テクニカル分析では、期間の異なる複数の移動平均線(たとえば5日移動平均線と25日移動平均線や、90日移動平均線と200日移動平均線など)を組み合わせて分析することが一般的だ。
移動平均の算出方法は、5日移動平均であれば直近終値までの5日間(立会日ベース:土日祝日など市場の休日は除く)の終値の平均値、200日移動平均であれば同じく200日間の終値の平均値ということになる(図表2・3)。


移動平均線は、それまでの相場のトレンドを示すため、短期移動平均線であれば短期のトレンドを、長期移動平均線であれば長期のトレンドを示すことになる。したがって、短期の移動平均線は変動が小刻みで、移動平均期間が長くなるほど緩やかな動きを示すことになる。移動平均線が上向きであれば上昇トレンド、下向きであれば下降トレンドと判断されるが、短期移動平均線が下降トレンドでも、長期移動平均線が上昇トレンドにある(またはその逆)場合もあり、移動平均線の期間に応じた判断が必要だ。また、一般的には足元の価格が移動平均線よりも高ければ上昇傾向、低ければ下落傾向にあるとも判断される。
ゴールデンクロスとデッドクロス
相場は上下動を繰り返すため、移動平均線もこれに連れて(やや遅れる形で)上下動を繰り返す。このため、移動平均期間の違いによって、異なる期間の移動平均線がクロス(上下に入れ替わる)ことがある。テクニカル分析では、そのクロスの仕方によって、その後の相場の展開を予測する手法がある。
ゴールデンクロスは、期間の短い方の移動平均線が、期間の長い移動平均線を上回る(下から上へと突き抜ける)ことで、一般的に上昇のサインと受け止められている。逆に、期間の短い方の移動平均線が期間の長い方の移動平均線を下回る(上から下へ突き抜ける)ことをデッドクロスと呼び、下落のサインとされている(図表4)。なお、ゴールデンクロスの場合、クロスした移動平均線が二本とも上向きのトレンドであればより強い上昇シグナルとされ、逆にデッドクロスではクロスした移動平均線が二本とも下向きのトレンドであればより強い下落シグナルとされている。


(図表5)は、2021年11月から2022年末までの日経平均株価指数の日足チャートで、短期移動平均線として25日移動平均線(図中赤線)、長期移動平均線として200日移動平均線(図中青線)を加えている。この期間中に、ゴールデンクロス、デッドクロスとも2回現れている。しかし、その後の騰落率や騰落期間についてはまちまちで、必ずしも相場の流れが変わったというような大きな変動とは言い難い(図表6)。日足チャートで見るゴールデンクロスやデッドクロスは、クロスが現れてから数日以内に相場の流れが変わることを十分意識する必要があるだろう。

ただし、月足のような長期間で見る場合は、もう少し安定した関係が確認される。(図表7)は1989年以降の日経平均株価指数の月足でみたゴールデンクロスとデッドクロスの発現月とその後の騰落についてまとめたものだ(チャートは図表8)。この期間、ゴールデンクロス、デッドクロスともそれぞれ4回現れた。このうちゴールデンクロスの最初の2回(1996/6、2000/2)については上昇期間が短く、上昇率も小幅にとどまっているものの、それ以外についてはデッドクロスも含めて上昇(あるいは下降)局面は短いものでも7ヶ月と、上昇(下落)“局面”と評していいほどの期間継続している。

なかでも、ゴールデンクロスの4回目とデッドクロスの3回目は、ともに短期移動平均線である12ヶ月移動平均線と、長期移動平均線である60ヶ月移動平均線の方向が同じ(ゴールでクロスではともに上向き、デッドクロスではともに下向き)で、それぞれ強い上昇、あるいは下降局面のシグナルと言われるものだが、2000年10月に現れたデッドクロスではその後の下落率は▲47.7%、下落期間は31ヶ月と、89年以降のデッドクロスでは最も大きな下落につながった。一方、2013年4月に現れたゴールデンクロスは、足元に至るまで両移動平均線の交差はなく、本稿執筆時点で継続期間は143ヶ月、上昇率は+206.1%(株価ピーク時まで)に繋がっている。

移動平均との乖離率
移動平均値と実際の価格との乖離を参考に、売買のタイミングを計る手法もある。相場には、“買われすぎ”や“売られすぎ”という言葉がある。文字通りの意味だが、二通りの使い方がある。一つは、適正(と判断される)価格に対するもので、適正価格に対して実際の価格が高すぎれば買われすぎ、低すぎれば売られすぎと評される。もう一つは、買いや売りが続くことで一方的な上昇や下落が続く局面に対しても使われる。
移動平均との乖離率は、後者の状態を把握することで、相場が反転するタイミングを計るものだ。一般的には、移動平均値と実際の価格との乖離率がどの程度になると反転するのかという過去のパターンをみることで、「乖離率が何パーセントになったからそろそろ反転しそうだ」ということを把握することになる。移動平均値というのは、過去何日(または何週、何ヶ月)かの平均値だ。その値と足元の価格との乖離が大きければ大きいほど、相場は一方的な展開になっていることを示している。相場は、一方向にのみ進んでいくわけではない。よほど特殊な経済環境(国家財政の破綻や戒厳令下など)でもない限り、価格が上昇すれば売却して利益を確定したい人が出てくるし、価格が下落すれば割安と考えて買う人が増えてくる。
(図表9)は、日経平均(月足)と12ヶ月移動平均および24ヶ月移動平均線との乖離率をグラフにしたものだ。これをみると、日経平均株価は12ヶ月移動平均線との乖離率が±20%程度で反転するほか、24ヶ月移動平均線との乖離率が±20~40%でも反転する傾向がある。こうした傾向が確認されれば、たとえば“ここのところ上昇が続いているが、12ヶ月移動平均線、24ヶ月移動平均線とも乖離率が+20%を超えたから、そろそろ売り時かな”といった判断も可能だ。

移動平均線との乖離率と反転のタイミングは、移動平均線の期間によっても異なるうえ、対象の資産価格によっても異なる。このため、自分が投資をしている(あるいはしようと考えている)資産ごとに、移動平均線との乖離率と反転のタイミングを調べる必要がある(特に個別株などでは乖離率が大きくなるものがある)。
なお、移動平均線との乖離率は以下の式(図表10)で算出される。これで求めた乖離率を時系列にしてグラフにしたものが上記(図表9)の乖離率のグラフとなる。これらは証券会社やFX会社のHPでも対応していることが多い。

移動平均線による分析は比較的単純である一方で、他のテクニカル分析指標と組み合わせて使用されることも多い。次稿では、他のテクニカル指標のうち代表的なものをいくつか紹介する。
嶌峰 義清
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

