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オーストリアの連立協議は振り出しに戻る

~極右政権誕生か、極右抜きで団結か?~

田中 理

要旨
  • 昨年9月の国民議会で極右政党が勝利したオーストリアでは、極右抜きの連立協議が決裂した後、極右主導の連立協議が進められてきたが、これも12日に決裂した。議会選挙後の世論調査で更に支持を伸ばしている極右政党は再選挙の実施を求めている。主要政党は極右の更なる躍進を警戒し、極右抜きの連立協議の再開に傾いている。首相の任命権を持つ大統領の判断が待たれる。再選挙が回避されれば、極右政権の誕生はひとまず回避されるが、極右政党の更なる支持拡大につながる危険性も孕んでいる。

昨年9月の国民議会選挙(図表1)で極右政党・自由党(FPÖ)が勝利したオーストリアでは、中道右派の国民党(ÖVP)、中道左派の社会民主党(SPÖ)、リベラル政党の新オーストリア自由フォーラム(NEOS)の3党による連立政権発足に向けた協議が年明け早々に決裂。代わりに、自由党と国民党の右派政党間で連立協議が行われてきたが、こちらも12日に決裂することが決まった。両党は経済や税制分野の政策では共通項も少なくないが、ウクライナ、ロシア、欧州連合(EU)に対する政策の不一致に加えて、閣僚ポストの配分を巡って対立したとされる。自由党はウクライナのEU加盟交渉の停止、欧州平和ファシリティ(EPF)を通じたウクライナに対する間接的な軍事支援の打ち切り、対ロシア制裁の解除、政府庁舎からのEU旗の撤去、歴史研究機関へのホロコーストに関する公的助成の停止などを主張。国民党は財務省ポストに加え、諜報機関と警察権力を同党の管轄下に置くため、内務省ポストを要求。代わりに自由党の重要政策である移民関連ポストを譲る提案をしたが、自由党がこれを拒否したとされる。

図表
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極右主導の連立協議が決裂したことを受け、首相の任命権を持つヴァン・デア・ベレン大統領は各党と今後の対応を協議するとしており、その判断に注目が集まる。昨年9月の国民議会選挙で29%を獲得した自由党は、その後の世論調査で国民党から支持を奪う形で、30%台半ばまで支持を伸ばしている(図表2)。自由党は更なる議席獲得で連立協議を有利に進められると考え、再選挙の実施を求めている。他方で、自由党の更なる躍進を警戒し、主要政党は連立協議の再開に応じる構えを示唆しており、国民党と社会民主党の二大政党が中心となって改めて連立協議を開始することや、国民党が小政党と非多数派政権を発足する可能性も取り沙汰されている。再選挙が回避されれば、極右政権の誕生はひとまず回避されるが、有権者の声を無視したとの批判が集まり、自由党に対する更なる支持拡大につながる危険性も孕んでいる。

図表
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以上

田中 理


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田中 理

たなか おさむ

経済調査部 首席エコノミスト(グローバルヘッド)
担当: 海外総括・欧州経済

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