インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

オーストラリアは一段の景気頭打ち、RBAの「次の一手」はどうなる

~RBAの利下げが意識されるもその時期は不透明、豪ドル相場は上値が抑えられる展開が続こう~

西濵 徹

要旨
  • このところのオーストラリア景気を巡っては、中国の景気減速に加え、物価高と金利高の共存長期化が景気の重石となる展開が続いてきた。燃料補助金や所得税減税を受け、足下ではインフレが鈍化するなど内需を巡る環境が変化することが期待される。しかし、7-9月の実質GDP成長率は前期比年率+1.34%に留まり、中期的な基調を示す前年比でも+0.8%と4年弱ぶりの伸びとなるなど頭打ちが続く。外需は力強さを欠く上、民間需要も弱含むなか、足下の景気は公的需要への依存度を強めている。よって、金融市場では中銀(RBA)の次の一手に注目が集まるが、インフレは鈍化するも、コアインフレは加速するなど物価の見方は難しさを増している。また、雇用や不動産価格も地域ごとの跛行色が鮮明になるなど、判断が困難なる動きをみせる。景気の頭打ちを受けてRBAは早晩利下げに動くと見込まれるが、依然「タカ派」姿勢を堅持するなかでその時期に対する見方は分かれる展開が続くことは避けられない。とはいえ、豪ドルの対米ドル相場は上値の重い展開が続くとともに、日本円に対しても上値が抑えられる展開が続くと見込まれる。

このところのオーストラリア経済を巡っては、様々な要因が起因する形での物価高に加え、中銀(RBA)による引き締め政策も重なり、物価高と金利高の共存が長期化するとともに、最大の輸出相手である中国景気の不透明感が外需の足かせとなる状況に直面してきた。しかし、アルバニージー政権は今年度(2024-25年度)から実施している電力料金を対象とする補助金政策を通じた物価抑制策の効果発現を受けて、足下のインフレ率は下振れしており、RBAが定めるインフレ目標(2~3%)の下限近傍で推移するなど落ち着きを取り戻している(注1)。また、アルバニージー政権が今年度から実施する所得税減税を受けて、足下の実質賃金の伸びはプラスに転じている上、インフレ鈍化による実質購買力の押し上げも重なり、上述のように物価高と金利高の共存に直面してきた内需を取り巻く環境も変化している。こうした状況ではあるものの、7-9月の実質GDP成長率は前期比年率+1.34%と前期(同+0.73%)からわずかに加速して4四半期ぶりに1%を上回る伸びとなるも、引き続き力強さを欠く推移が続いているほか、中期的な基調を示す前年同期比ベースでは+0.8%と前期(同+1.1%)から鈍化して4年弱ぶりの伸びに留まるなど、頭打ちの動きが続いていることが示されている。悪化が続いた中国との関係に改善の動きがみられるものの、中国の景気減速やそれに伴うアジア新興国景気を巡る不透明感の高まりなどを反映して輸出は鈍化するなど、外需を取り巻く環境は依然厳しい状況が続く。他方、上述のようにインフレ鈍化による実質購買力の押し上げに加え、雇用環境も引き続き底堅い動きをみせているものの、家計消費は2四半期連続の減少で推移するとともに、金利高は企業部門の設備投資や不動産投資の足かせとなるなど、幅広く内需は力強さを欠く推移が続く。こうしたなか、アルバニージー政権が財政出動による景気下支えに動いていることを反映して、政府消費や公的部門による固定資本投資は堅調な推移をみせるなど、足下の景気は公的需要への依存度を強めている。分野別の生産動向についても、金融市場の活況を反映して金融サービスの生産は旺盛な推移をみせるとともに、公的需要の堅調さも関連サービスの生産を押し上げる一方、外国人来訪者数の頭打ちを反映して観光関連や運輸関連の生産に下押し圧力が掛かる動きがみられる。また、公共投資の進捗の動きは建設業の生産を押し上げる一方、外需が力強さを欠く推移をみせるなかで製造業や鉱業の生産は下振れするなど力強さを欠く推移をみせている。なお、異常気象の頻発を理由に停滞が続いた農林漁業関連の生産は大きく上振れしており、景気を下支えするとともに、先行きについては供給懸念を理由とする食料インフレの緩和に繋がることが期待される。こうした状況を勘案して、金融市場においてはRBAの政策運営の行方に注目が集まっており、景気下支えに向けた利下げが意識されやすくなることが予想される。他方、足下のインフレは政策効果も影響する形で下振れするとともに、RBAが注目する物価変動の大きい財と観光関連を除いたベースのインフレ率も伸びが鈍化する一方、コアインフレ率(トリム平均値ベース)は伸びが加速して中銀目標を上回る伸びが続いており、物価を巡る判断は難しさを増している。さらに、足下の雇用環境は全体として堅調な動きが続く一方、地域ごとに跛行色が鮮明になる動きをみせているほか、不動産価格も全体として上昇が続いているものの、これまで上昇をけん引してきたシドニーやメルボルンなどで下落の動きが加速するなど、雇用同様に地域ごとの跛行色が鮮明になっている。よって、RBAの『次の一手』は利下げとなる可能性は高まる一方、RBAが依然として『タカ派』姿勢を堅持する動きをみせるなかでその時期に対する見方は揺れることは避けられない。とはいえ、こうした状況を反映して豪ドルの対米ドル相場は上値の重い展開が続くと見込まれるほか、日本円に対しても同様に上値が抑えられる展開が続くことになろう。

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以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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