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- 2024年11月FOMCプレビュー
- 要旨
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11月FOMC(11/6~7開催)にてFRBは2会合連続で利下げを決定する見通しだ。一方、その利下げ幅は前回同様の0.5%ptではなく、通常の利下げ幅である0.25%ptに留まると予想される。
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複数のFRB高官が慎重な利下げペースに言及するなか、10月雇用統計等の結果を受けて、パウエル議長が足下の雇用及びインフレ動向への認識を変化させるのかが注目される。
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11月FOMCは11/5に投開票を迎える大統領選の直後の開催となる。パウエル議長の記者会見では「新政権の誕生と金融政策への影響」に関する質問が散見されると見込まれる一方、パウエル議長は「現時点では政策の詳細が不明」と述べ、その影響を巡る具体的な言及を避ける可能性がある。
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2会合連続の利下げ
11月FOMC(11/6~7開催)において、FRBは2会合連続で利下げに踏み切る見通しだ。インフレ再燃への懸念は依然残るものの、利下げを見送るほどの景気やインフレの強さは見られないため、FRBは政策の引き締め度合いを緩和するスタンスを維持するとみられる。但し、FRBが労働市場の悪化を予防する観点から9月は0.5%ptの大幅利下げに踏み切ったのに対して、11月FOMCの利下げ幅は通常通り0.25%ptに留まると予想される(FF金利の誘導目標を現状の4.75~5.0%から4.5~4.75%へと引き下げ)。FF金利先物に基づくFedWatch(10/31時点)によると、11月FOMCにおける0.25%ptの利下げ予想が94.2%に達する一方、金利据え置きを予想する向きは5.8%に留まっている(0.5%ptの利下げ予想はゼロ)。
足下の経済指標をみると、7~9月期実質GDP成長率は前期比年率+2.8%(4~6月期:+3.0%)と前期から小幅に減速したものの、FOMC参加者が予想する潜在成長率(9月時点のLonger-run成長率:+1.8%)を上回った。住宅投資などで夏場のハリケーン上陸の影響が見られた一方、個人消費は良好な実質所得環境を背景にサービスと財共に堅調に推移した。この間、FRBが重視する9月のコアPCEデフレーターは前月比+0.3%(8月:+0.2%)、短期的なトレンドを示す3か月前比年率が+2.3%(+2.2%)と共に加速した一方、中期トレンドを示す6か月前比年率は+2.3%(+2.5%)とインフレ減速が続くなど、インフレは収束の兆しを示しながらも、+2%目標の達成に向けては依然不透明感が残る状況だ。
11月FOMCまでには11/1に10月の雇用統計、及びISM製造業景気指数、11/5にはISM非製造業景気指数が公表される。10月雇用統計に関して、市場は失業率が4.1%(9月実績:4.1%)と前月から横ばい、非農業部門雇用者数は前月差+10.8万人(同、+25.4万人)と一時的要因を背景に前月からの減速を予想している。なお、雇用統計が予想よりも弱い結果となる場合においても、10月は米航空大手のストライキによる雇用者数減少、及びハリケーン被害(9/26に「へリーン」、10/9に「ミルトン」がフロリダ州へ上陸)による一時的な経済活動停止の影響を割り引く必要がある(注1;ウォラーFRB理事はこれらの一時的影響が10月の雇用者数を10万人程度押し下げると言及)。一方、こうした悪影響にも関わらず想定以上の強さを見せる場合(注2)、金融市場による年内の利下げ予想が現状の2回から1回へとシフトする、或いは11月FOMCにおける利下げ見送りの予想が強まる可能性がある。
パウエル議長の景気・物価認識は変化するか?
パウエル議長は9月FOMC後の記者会見において、インフレ率は鈍化傾向にある一方、米国経済は労働市場を含めて堅調な状態にあると述べた。他方、同会合で0.5%ptの大幅利下げを決断した理由として、労働市場の更なる悪化を防ぐための「予防的措置」との認識を示した。また、今後も0.5%ptの利下げを続ける可能性が低いと言及したうえで、引き続きデータ依存で金融政策運営を行う姿勢を強調した。
9月FOMC後から現時点(10/31)において、米国経済は堅調さを保つ一方、インフレ再燃の懸念はやや強まっており、9月に実施した大幅利下げの必要性を疑問視する意見も一部にある。この間、ウォラーFRB理事は「9月の政策決定よりも、より慎重に利下げを進めるべき(10/14講演)」と言及したほか、アトランタ連銀のボスティック総裁は11月FOMCで金利を据え置く可能性を指摘した(9/30講演)。パウエル議長は11月FOMC後の会見において、「金融政策は依然抑制的であり、時間をかけて金利を正常化する(利下げを続ける)」方針を維持するとみられるものの、「失業率の上昇懸念の後退」或いは「2%インフレ達成に向けた不確実性」を強調する場合にはタカ派的なメッセージと捉えられると考えられる。
新政権による金融政策への影響を巡る質問
11月FOMC(11/6~7開催)は11/5に投開票を迎える大統領選の直後の開催となる。トランプ氏当選と上下院で共和党が制する「トリプルレッド」が最も有力なシナリオである一方、激戦州の支持率の差は僅差であり、ハリス氏の逆転の可能性が低いわけではない(詳細は10/30付け「選挙直前!大統領選・議会選のシナリオ別確率」)。なお、選挙が接戦であればあるほど、FOMC時点においても選挙結果が判明していない可能性が高いものの(詳細は10/7付け「米大統領選の結果はいつ判明するか?」)、こうした当確の有無を問わず、パウエル議長の記者会見では「新政権の誕生と金融政策への影響」を巡る質問が複数出ることが見込まれる。特にトランプ氏の勝利が確定している場合、同氏の政策案が実行された場合のインフレ再燃懸念(大型減税による消費刺激、関税引き上げによる輸入物価の上昇、移民抑制による一部セクターでの労働力不足の深刻化)、及びそれによる金融政策への影響がテーマとして挙がる可能性が高い。
パウエル議長は7月FOMC後の記者会見において、ハリス・トランプ両候補の経済政策を巡って、「様々な可能性のある政策をシミュレーションすることは出来るが、どちらが勝つかはわからず、現時点の経済予測にこうした政策の違いは反映していない」と述べた。また、トランプ氏当選後の2016年12月のFOMCにおいて、当時のイエレンFRB議長は「経済政策の変化による影響に関してFOMCで議論したこと」や「金融市場がトランプ新政権の経済政策を前向きにとらえている可能性」を認めた一方、「現時点では不確かな部分が多く、詳細がわかれば金融政策決定に反映する」と述べるに留めるなど、イエレン氏自身がこうした政策をどう評価しているかの明言を避けた。パウエル議長もこうしたスタンスを踏襲し、市場の反応や一般論に言及する一方、「実現が見込まれる政策の詳細が不透明であること」を理由に明確な考えは示さない可能性がある。


【注釈】
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10月雇用統計におけるストライキの影響を巡っては、(事業所調査の)雇用者数の対象は調査期間に賃金を受け取った労働者数であるため、ストライキ参加者は雇用減として計上される一方、(家計調査の)失業率算出に用いられる失業者の定義にストライキ参加者は原則含まれないため、失業率への影響は限定的と考えられる。また、ハリケーンの影響に関しても、雇用者数に影響を与えると考えられる一方(経済活動の停止で賃金を得られなかった人々が雇用減としてカウント)、失業率算出に用いられる失業者の定義に「悪天候で一時的に働けなくなった人」は含まれないため、こちらも失業率への影響は限定的に留まる可能性が高い。
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米労働省の雇用統計と相関がみられるADP雇用報告によると、10月の民間雇用者数は前月差+23.3万人(9月:+15.9万人)と伸びが加速しており、ハリケーン被害は雇用者数を下押しせず、逆に復旧関連の一時的な仕事が増えた可能性が指摘されている。
前田 和馬
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