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2024.10.07
米国経済
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マーケット見通し
米国大統領選
米大統領選の結果はいつ判明するか?
~接戦が予想されるなか、不透明な状況が長引くリスク~
前田 和馬
- 要旨
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- 11月5日投開票の米国大統領選まで1か月を切った。ハリス・トランプ両候補の接戦が見込まれるなか、現時点において大統領選の勝者が当日中に判明する可能性は低い。
- ペンシルベニア州等の激戦州では郵便投票の集計に時間を要することが想定されるほか、各州の新たな規則が集計作業の混乱を招く懸念がある。前回2020年は主要メディアの当確報道まで4日かかっており、今回も過半数の選挙人を得る候補が現れるまで数日を要する可能性がある。
- 一部の激戦州における両候補の票差が数千票(得票率では0.1%pt)以内に留まるなどの大接戦となる場合、再集計を巡る論争が終結するまで勝敗が決しない展開も予想される。この際には2000年と同様、法廷闘争などが1か月以上にわたり続くリスクがある。
米国大統領選の投開票日である11月5日まで1か月を切った。各種世論調査ではハリス氏が全米支持率で小幅なリードを示しているもの、勝敗を決する激戦州の支持率はハリス・トランプ両氏で拮抗するなど、選挙戦は依然予断を許さない状況だ。
米国の大統領選挙は、メーン州とネブラスカ州を除き、各州の最多得票者がその州の全ての選挙人を獲得する「勝者総取り形式」であり、全538人の選挙人のうち過半数の270人を獲得した候補が勝利する。各種の世論調査を集計した「270toWin」に基づくと(10月1日時点)、民主党・ハリス氏は226人、共和党・トランプ氏は219人の選挙人獲得がそれぞれ確実視されており、残った激戦州の選挙人(93人)の争奪戦が最終的な勝敗を決する。2024年の激戦州は「ウィスコンシン(選挙人:10人)」「ミシガン(15人)」「ペンシルベニア(19人)」「ノースカロライナ(16人)」「ジョージア(16人)」「アリゾナ(11人)」「ネバダ(6人)」の7州だ。
現時点の世論調査において、ハリス氏はミシガンとウィスコンシンで小幅にリードしており、同2州の25人を獲得する場合には選挙人数の合計が251人に達する。このため、これに加えて、①現状では互角のペンシルベニア(19人)で勝利する、或いは②リードするネバダ(6人)、及び互角のノースカロライナ(16人)で勝利することができれば、過半数である270人の選挙人を獲得し大統領への選出が確定する。しかし、これらペンシルベニアを含む諸州の結果は、接戦であるほどより多くの割合の開票が必要であるため、結果判明に時間がかかる可能性が高い。
激戦州の結果判明を遅らせる要因
米国において、開票方法を含む選挙制度は各州によって異なる。激戦州の結果判明を遅らせる要因としては、①郵便投票の存在、②各州の規則変更や特殊事情、③再集計、の3つが挙げられる。
① 郵便投票の存在
大統領選の主な投票形式は「郵便投票」「投票所での期日前投票」「投票所での当日投票」の3つである。米シンクタンクのPew Research Centerによると、2020年選挙は新型コロナウィルスの感染拡大を背景に郵便投票等(不在者投票を含む)が45%に達した一方、投票所における期日前投票と当日投票はそれぞれ27%の割合に留まった。その後、郵便投票を制限する各州の法改正、及び新型コロナウィルス感染拡大の落ち着きを背景に、2022年の中間選挙時には当日投票が43%と再び最多となったものの、郵便投票等は依然36%の割合を占めた。
郵便投票が高い割合を占める場合、2つの要因が結果判明を遅らせる懸念がある。まず、郵便投票は封筒の開封、署名や書類による本人確認に通常よりも時間がかかる。このため、多くの州では投票日以前の封筒開封などの準備作業が認められる一方、ペンシルベニアとウィスコンシンの2州ではこうした事前作業が許可されておらず、当日の朝に封筒開封を含めた集計作業が開始される。2020年選挙時(11月3日投開票)においては、ウィスコンシンの勝敗報道(AP通信)が翌11月4日の午後、ペンシルベニア州は4日後の11月7日の昼頃までずれ込んでおり、バイデン氏はペンシルベニア勝利後に大統領選の勝利を宣言した。
次に、一部の州では投票締め切り後に届いた郵便投票を集計する必要がある。現時点において、大半の激戦州は当日夜までに集計所に到着した投票用紙を有効とする一方、ネバダ州は当日の消印かつ投票4日後までに配達された投票が有効となる。こうした投票日以降に届く郵便投票の割合が少なく、どちらかが大幅にリードする場合には選挙の大勢が早期に決まる一方、接戦であるほどより多くの投票用紙を確認する必要が出てくるため、結果判明が遅れる可能性がある。なお、ネバダ州は2020年選挙時の結果判明に4日を要している(注1)。
② 各州の規則変更や特殊事情
ジョージア州は9月に導入した新規則において、各郡が投票総数を手作業で確認することを義務付けており(各候補の得票数の確認は不要)、結果判明が大幅に遅れる可能性がある。同規則は共和党の選挙管理委員が透明性向上のために推し進めた一方、民主党はこれによる作業の手間や選挙不正の懸念を指摘し、これを阻止するための訴訟を9月30日に州地裁に起こしている。なお、トランプ氏は2020年選挙時において、同州での敗北を覆そうと州務長官に圧力をかけた疑惑で起訴されている。
一方、ノースカロライナ州では今年より投票に際して写真付き身分証明書が必要となっており、こうした変更を一部の人が把握しておらず、投票所で身分証明書を持たない人の分の暫定投票(集計が保留される投票)が増加する可能性をCNNが指摘している。
また、11月5日の大統領選の投票時には上下院の議会選や州知事、地方議会選挙などが同時に実施されるのが一般的だ。アリゾナ州の一部群ではこうした各種選挙のほか、10以上の法案に対する住民投票が実施され、投票用紙の長さは4年前の2倍になる見込みだ。こうした複雑な投票用紙は集計作業に混乱を招くリスクがある。
③ 再集計
米国の選挙では再集計が行われることが少なくなく、2020年選挙時にはジョージア州全域、及びウィスコンシン州の一部の群で再集計が実施された。ジョージア州では11月11日に手作業での再集計実施が公表され、その結果が19日に公表されるなど(AP通信による当確報道は17日)、票の確認作業に約1週間を要した。なお、再集計の実施を巡っては、ミシガン・ペンシルベニア・アリゾナでは一定の票差の場合に自動的に再集計が行われるほか、多くの州は敗北した候補者がその費用を負担することで再集計の申し立てを行うことが認められている(幾つかの州は一定内の票差が申し立ての条件となる)。
一般的に再集計によって事前の勝敗が覆ることは少ない。米国の選挙改革NGOであるFairVoteによると、2000~23年にかけて州レベルで36の再集計が実施されており(大統領選のみならず知事選や上院選等を含む)、このうち3つで結果が逆転している。なお、3つとも上位2者の票差は当初時点で300票以内、得票率の差では0.06%pt以下と僅差に留まっている。実際、再集計による平均的な票差の変化は551票(全得票の0.03%)であり、再集計によって数万人規模の票が変化する可能性は非常に低い(注2)。

いつ結果がわかるか?
以上を踏まえると、11月5日投開票の米大統領選における結果判明のタイミングを巡って、幾つかのシナリオが考えられる。
まず、ハリス氏、或いはトランプ氏のどちらかが想定以上の強さを見せ、当日夜には早々に過半数の選挙人(270人)を獲得するシナリオである。しかし、現時点における激戦州の支持率を踏まえる限り、最終的な激戦州における両者の票差は2020年と同等、或いはそれよりも小さくなる可能性が高く、早期に当確が出るシナリオの実現性は低そうだ。
次に、前回2020年と同様、ペンシルベニアやノースカロライナなどの得票率の差が1%pt台(或いはそれ以下)に留まり、主要メディアの当確報道に数日程度を要するシナリオだ。激戦州では郵便投票を含むほぼ全ての票が開票されるまで勝敗が確定せず、幾つかの州では再集計が実施されるため、過半数である270人の選挙人を獲得する候補が数日程度は現れない。この場合、結果が判明するまでの間に選挙不正を巡る議論が熱を帯びる可能性がある。2020年は民主党員による郵便投票の集計結果がしばらくしてから反映され、ペンシルベニア州やミシガン州におけるトランプ氏のリードが一気に消失、共和党のシンボルカラーである赤にかけて「赤い蜃気楼(レッド・ミラージュ)」と呼ばれた。今回も民主党支持者の多い都市部の集計には時間がかかると見込まれ、序盤はトランプ氏、後半はハリス氏の票が積み増されやすい展開となる可能性がある(注3)。なお、再集計を巡る法廷闘争に及んだ場合においても、得票率の差が1%pt台(数万票の差)であれば、前述したように結果が覆る可能性は非常に低い。
最後に、一部の激戦州の票差が数千票(得票率では0.1%pt程度)以下の大接戦となり、再集計によって結果が覆る可能性を長期に亘って否定できないシナリオである。これはリスクシナリオに近いものの、実現した場合には選挙不正や集計上の不備を巡る論争が生じ、最終的には両陣営による法廷闘争へと転じるなど、1か月以上にわたり勝敗が確定しない展開が想定される。
こうしたシナリオは2000年選挙時の共和党・ブッシュ氏と民主党・ゴア氏の争いに近い。同選挙では両候補が大接戦を演じ、フロリダ州(選挙人25人)の勝者が過半数の選挙人を獲得する見込みとなった。投開票日(11月7日)の夜の時点ではブッシュ氏が約1,784票の差で勝者となったものの、州法に基づく再集計では同氏のリードが327票まで縮小した。その後ゴア陣営は複数の郡で手作業での再集計を求めたものの、共和党員のハリス州務長官(当時)はこうした手作業の再集計を認めず、ブッシュ氏勝利で投票結果の認定を進めるよう試みた。ゴア・ブッシュ両陣営の法廷闘争は州最高裁、連邦最高裁へと進み、12月12日に連邦最高裁が再集計を差し止める判決を下した後、13日にゴア氏が敗北を認めたことで、投票日から36日後に大統領選の勝敗が確定した(最終的な両者の票差は537票[全体の投票数に占める割合は0.009%])。
結果判明の遅れで株価への影響も
1950年以降の大統領選挙の年における米国株(S&P500)のパフォーマンスを見ると、選挙直前の10月は政策見通しの不透明感を背景に軟調に推移する一方、選挙後の11月はこうした不透明感が解消することで上昇する傾向にある(図表2)。実際、FRBによる7月の地区連銀経済報告(ベージュブック)では「再生可能エネルギー企業によると、選挙の不確実性が設備投資活動を減速させている」、9月ISM非製造業の企業コメントでは「政治的不確実性への懸念が強まっている」との指摘がみられるなど、ハリス・トランプ両氏の主張が大きく食い違う環境政策や関税政策への不透明感を背景に、企業が設備投資の計画や実行を手控える動きがみられている。
大統領選の結果確定に1か月以上を要した2000年の株価動向を巡っては、ITバブルの崩壊や景気減速が秋以降の株価を下押しした点は割り引く必要があるものの、同年11月の株価は-8.0%と下落するなど(大統領選の年の平均は+2.0%の上昇)、大統領選による不透明感が株価調整を加速させた点は否めない。今回も選挙結果の判明に時間がかかる場合、11月の株価がこれまでのアノマリーと異なり軟調に推移するリスクがある。なお、金融政策を巡っては11月FOMCが大統領選後の6~7日にかけて開催される。仮にFOMCの政策決定と大統領選の結果判明のタイミングが重なる場合には、一時的にマーケットの変動が激しくなる可能性にも警戒が必要だろう。

【注釈】
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ノースカロライナ州の郵便投票を巡っては、2020年選挙時は当日の消印かつ投開票日9日後までの到着が有効であった一方、2024年は当日到着分のみが有効となる。
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2020年選挙時のジョージア州では、再集計によってフロイド郡で2,600票の集計漏れがあったことが判明しており、こうしたミスは平均よりも大幅な票数の修正をもたらす。
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トランプ氏は2020年選挙時には郵便投票を「不正の温床」と批判し、自身の支持者に当日投票を呼び掛けた一方、民主党支持者は新型コロナウィルスの感染への懸念から郵便投票を積極的に活用した。なお、トランプ氏は既にこうした郵便投票への態度を軟化させ、2024年選挙では支持者が郵便投票を活用するように試みている。
【参考文献】
BBC (2020), “US election 2020: Does this compare to 2000 Florida recount?,” (2024-10-7参照).
CNN (2024), “Election experts raise alarms about vote counting delays in battleground states,” (2024-10-7参照).
Hartig, Hannah, Andrew Daniller, Scott Keeter, and Ted Van Green (2023), “Republican Gains in 2022 Midterms Driven Mostly by Turnout Advantage,” Pew Research Center: Report (2024-10-7参照).
Otis, Deb (2023) “An analysis of statewide election recounts, 2000-2023,” FairVote Research Reports (2024-10-7参照).
前田 和馬
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