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フィリピン中銀、ペソ安再燃にも拘らず一段の利下げにまい進

~来年にかけて断続利下げを志向する考えの一方、その決断に当たっては外部環境如何の展開が続く~

西濵 徹

要旨
  • フィリピン中銀は16日の定例会合において2会合連続で25bp引き下げて政策金利を6.00%とする決定を行った。同行は8月の定例会合でコロナ禍後初の利下げに動き、その後のインフレはコメ輸入関税引き下げ策などの影響で下振れするなど落ち着きを取り戻している。他方、前回会合では米ドル安によるペソ相場の底入れが利下げを後押ししたとみられるが、足下では米ドル安が一巡するなどペソ相場を巡る状況は一変している。しかし、足下のインフレ鈍化の動きを好感して一段の利下げに動いた。同行は先行きの政策運営について継続的な利下げ実施に含みを持たせる一方、主要国中銀の動きを注視する考えをみせている。よって、中銀は一段の利下げを志向する一方、実施に当たっては外部環境如何の展開が続くであろう。

フィリピン中央銀行は16日に開催した定例の金融政策委員会において、政策金利である翌日物リバースレポ金利を2会合連続で25bp引き下げて6.00%とする決定を行った。同行は8月の前回会合においてコロナ禍以降で初めて、約4年ぶりとなる利下げに動いており、足下の景気が頭打ちの動きを強める一方、その元凶である物価高の動きは鎮静化するとともに、米FRB(連邦準備制度理事会)の利下げ実施によりペソ相場を取り巻く環境が変化していることも後押ししたと捉えられる(注1)。なお、8月の前回会合直前にはインフレ再燃の兆しがみられたものの、その後はマルコス政権が物価対策を目的に実施したコメの輸入関税引き下げ策のほか、国際原油価格の調整を受けたエネルギー価格の下落も重なり頭打ちの動きを強めており、9月のインフレ率は前年比+1.9%と中銀目標(2~3%)の下限を下回る伸びとなっている。さらに、食料品とエネルギーを除いたコアインフレ率も9月は前年比+2.4%と2022年3月以来となる2年半ぶりの伸びに鈍化しており、物価は一段と落ち着きを取り戻していると捉えられる。他方、このところの国際金融市場においては米ドル安の動きが進むとともに、それまで米ドル高圧力に苛まれてきた通貨を中心に買い戻しの動きが進んでおり、ペソ相場は先月半ばに年初来高値をうかがう水準となるなど、輸入インフレの懸念が大きく後退する動きがみられた。しかし、その後は米国経済の堅調さが確認されるとともに、米FRBの政策運営に対する見方が変化するなかで米ドル安の動きが一巡する動きがみられるなか、ペソ相場は再び頭打ちの動きを強めており、足下では前年同時期を下回る水準となるなど状況は大きく変化している。こうした状況ながら、中銀は追加利下げを決定するとともに、会合後に公表した声明文では今回の決定について「インフレ圧力が管理可能な水準に留まるとの評価に基づいたもの」とした上で、リスク調整後のインフレ見通しを「今年は+3.1%」と前回会合(+3.3%)から下方修正する一方で「来年は+3.3%、再来年は+3.7%」と前回会合(ともに+2.9%)から上方修正するも、「見通しは安定したインフレ期待に基づいてインフレ目標の域内で推移する」との見方を示している。他方、物価を巡るリスクについては「電気料金の変更やマニラ首都圏以外での最低賃金上昇の動きが上向きに影響する一方、コメの輸入関税引き下げ策が下向きに影響する」との認識を示している。そして、先行きの景気について「内需を取り巻く環境改善を追い風に堅調な推移が見込まれる」とした上で、その背景に「8月の利下げと先月公表した預金準備率の引き下げ(今月25日付で実施)の効果」を挙げている。その上で、先行きの政策運営について「インフレ見通しを勘案すれば抑制的な政策スタンスの緩和が見込まれる」として追加緩和に含みを持たせる一方、「地政学リスクをはじめとする物価上昇リスクを注視する」、「持続可能な経済成長と雇用に資する物価安定の実現に向けて慎重な緩和サイクルを維持する」との考えをみせている。なお、会合後に記者会見に臨んだ同行のレモロナ総裁は、先行きの政策運営について「12月の次回会合での25bpの利下げは可能」とする一方で「50bpという積極過ぎる利下げは見通しにくい」としつつ、「来年には累計100bpの利下げが可能と見込まれるが、幾分ハト派に傾いている」との認識を示している。その上で、「中立金利は5%程度になると見込まれる」として、来年いっぱいかけてその水準に低下させていく考えを示したものと捉えられる。また、ペソ相場について「特定の目標を持っている訳ではない」との考えを示すとともに、政策運営について「ハードランディングを避けるべく慎重な政策調整を志向しており、毎四半期ごとに25bpずつ利下げを行う」「主要国中銀に先んじる形で利下げを行うことはない」との見通しを示している。しかし、上述したように足下では米FRBの政策運営に対する見方に変化が生じており、先行きの政策運営はその影響を受けることは避けられず、中銀は断続利下げを志向する考えをみせるもその動向は外部環境次第の展開が続くであろう。

図表
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以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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