- HOME
- レポート一覧
- 経済分析レポート(Trends)
- OPECプラスは12月からの減産縮小実施に向けて一歩前進
- World Trends
-
2024.10.04
新興国経済
原油
ロシア経済
産油国経済
OPECプラスは12月からの減産縮小実施に向けて一歩前進
~OPECプラスの枠組、産油量のシェア、価格の維持という難しいパズルに直面~
西濵 徹
- 要旨
-
- OPECプラスは2日にオンラインでの合同閣僚監視委員会(JMMC)を開催し、先月の閣僚会合で決定した12月からの有志国8ヶ国による自主減産の段階的縮小を支持することで合意した。ここ数年OPECプラスは価格維持を重視して減産に動いたが、非加盟国の増産を受けて世界の産油量に占めるシェア低下が進む。財政面で原油収入に依存する国々の間には減産への反発が出ており、OPECプラスの枠組を維持しつつシェア維持を図る必要に迫られるなかで苦肉の策として自主減産の段階的縮小を決定し、JMMCでもあらためてその方針が確認された。足下の原油価格は中東情勢の不透明感の高まりを受けて底打ちしており、OPECプラスの枠組維持に余裕が生じているが、その意義が問われる局面にあると考えられる。
主要産油国の枠組であるOPECプラスは、2日にオンラインで合同閣僚監視委員会(JMMC)を開催した。先月開催した閣僚会合では、OPECプラス全体で実施している日量366万バレル規模の協調減産と別に、有志国8ヶ国(サウジアラビア、ロシア、イラク、アラブ首長国連邦、クウェート、カザフスタン、アルジェリア、オマーン)が実施している日量220万バレル規模の自主減産について、その期日を2ヶ月延長して11月末までとすることで合意した(注1)。さらに、12月以降の自主減産の段階的縮小についても、そのペースは必要に応じて一時停止や元に戻す(再拡大)など柔軟性を持たせると付記されるなど、OPECプラスとしては引き続き原油価格の維持を重視している様子がうかがえた。しかし、中国の景気減速による需要低迷が意識される一方、米国をはじめとする非加盟国による供給増を受けて需給が一段と緩むとの見方を反映して、国際原油価格は調整の動きを強めたことでOPECプラスの結束が揺らぐことが懸念された。その背景には、OPECプラスが長期に亘って協調減産や自主減産に動いている背後で米国をはじめとする非加盟国は増産を続けており、全世界の産油量に占めるOPECプラスの割合は低下を余儀なくされている。IEA(国際エネルギー機関)による見通しに基づけば、今年の全世界産油量に占めるOPECプラスの割合は5割を下回る見通しとなっており、存在感の低下が避けられなくなっている。また、財政面で原油関連収入への依存度が高い国々においては協調減産に反発する動きが広がりをみせており、協調減産の枠外にある国々が産油量を拡大させるなかで有志国を中心とする一部の産油国による減産に依存せざるを得ない展開が続いてきた。こうしたなか、先月には枠内で最も減産を行ってきたサウジアラビアが「1バレル=100ドル」としている非公式の価格目標を取り下げるとともに、12月からの増産に向けて準備を始めているとの報道が出るなど、価格維持政策からの転換が近付いている可能性が意識された。サウジがこうした高水準の価格目標を維持してきた背景には、長期に亘る減産に伴い財政均衡水準そのものが切り上がり、IMFの直近の試算に基づけばその水準が1バレル=96.2ドルとなっていることも影響している。そして、サウジ以外にも、すでにイラクやカザフスタン、ロシアが割り当て枠を上回る水準での生産を続けるなどシェアの維持や回復を目指す動きが顕在化しており、OPECプラスの枠組そのものの瓦解が懸念される事態となっていた。なお、過去にはロシアとサウジアラビアとの意見対立が激化した結果、OPECプラスが瓦解するとともに、その直後には供給拡大への懸念を反映して原油価格が大きく調整して一時的にマイナスとなるなど深刻な状況に陥った(注2)。よって、OPECプラスの枠組を維持しつつ、枠内で不満を持つ国々に留まらせる『苦肉の策』として12月からの自主減産の段階的縮小という結論に至っており、今回のJMMCにおいてもその方針があらためて確認された模様である。会合後に公表された声明文では、減産目標や一部の過剰生産に対する補償に関連して「JMMCは枠組の完全な適合と補償を実現することが極めて重要と強調するとともに、市況を継続的に検証する」との姿勢を示している。なお、足下の国際原油価格は中東情勢を巡る不透明感が高まっていることを理由に底打ちしており、枠組維持に向けた『余裕』が多少生じている可能性はあるものの、先行きについてはOPECプラスの意義を模索する展開が続くと見込まれる。

注1 9月6日付レポート「OPECプラス、価格維持へ有志8ヶ国の自主減産を2ヶ月延長で合意」
注2 2020年3月9日付レポート「ロシアの「強情」とサウジの「逆切れ」でOPECプラスが瓦解」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
-
経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
執筆者の最近のレポート
-
台湾・8月輸出受注額は過去最高を更新(Asia Weekly) ~オーストラリア・8月失業率は5年ぶりの高水準も、就業者数増加で雇用環境に底堅さ~
アジア経済
西濵 徹
-
メキシコ中銀、政策判断の自由度を重視 ~3会合連続で金利据え置き、FRB利上げへの機械的追随を否定、ペソ相場はどうなる?~
新興国経済
西濵 徹
-
トルコ株の混乱が映す「リラ建て資産誘導」の副作用 ~投資信託の急拡大で歪みが蓄積、市場への信認低下が新たなリスクに~
アジア経済
西濵 徹
-
景気減速にもかかわらず南ア中銀は2会合ぶりの追加利上げを決定 ~原油高やサービス物価を警戒、ランド相場は外部環境に左右される展開が続く~
新興国経済
西濵 徹
-
インドネシア中銀、3会合連続で金利据え置きも、政策運営は難路続く ~中銀総裁・財務相人事を巡る混乱は一巡も、景気下支えとルピア安定の「板挟み」は続く~
アジア経済
西濵 徹
関連テーマのレポート
-
メキシコ中銀、政策判断の自由度を重視 ~3会合連続で金利据え置き、FRB利上げへの機械的追随を否定、ペソ相場はどうなる?~
新興国経済
西濵 徹
-
景気減速にもかかわらず南ア中銀は2会合ぶりの追加利上げを決定 ~原油高やサービス物価を警戒、ランド相場は外部環境に左右される展開が続く~
新興国経済
西濵 徹
-
ロシア下院選、与党・統一ロシアが3分の2超の議席を維持 ~選挙結果は政権に追い風も、石油製品不足とインフレ再加速で国民生活には逆風が続く~
新興国経済
西濵 徹
-
ブラジル中銀は5会合連続の利下げも、緩和継続には慎重姿勢 ~景気減速を重視する一方、原油高・異常気象・財政運営が引き続きインフレリスクに~
新興国経済
西濵 徹
-
「トランプ・インフレ」に翻弄される新興国経済 ~スーパー・エルニーニョも加わり、インフレと通貨安への警戒感が強まる懸念も~
新興国経済
西濵 徹

