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スリランカ大統領選、ディサナヤカ勝利で経済立て直しの行方は?

~IMFとの再交渉は債務再編に影響、債務再編を主導した日本が主体的に関わる余地は小さくない~

西濵 徹

要旨
  • スリランカでは21日に任期満了に伴う大統領選が実施された。ここ数年はコロナ禍を経て経済危機に陥ったことを受け、ウィクラマシンハ大統領の下で経済の立て直しが進められてきた。IMFからの支援受け入れや債務再編協議で一定の成果を挙げるとともに、足下ではインフレも沈静化するなどの動きもみられる。ただし、足下の景気は底入れするも緊縮政策が影響して勢いを欠き、国民生活は厳しい状況が続く。よって、事前の世論調査ではIMF支援を巡る再交渉や食料品などの非課税を訴える左派のディサナヤカ氏が一貫してトップを走る展開が続いた。開票の結果ディサナヤカ氏が勝利し、23日に大統領に就任した。ディサナヤカ氏が率いるJVPは少数与党であり、早期の議会解散・総選挙を行う意向を示す一方、IMFとの再交渉の行方は今月予備的合意に至った債務再編協議に影響を与える。他方、外交面ではバランス外交を志向するとみられ、日本とも良好な関係を維持すると見込まれるなか、債務再編協議を主導した日本としても経済立て直しの動きを注視するとともに、主体的に関わる必要性は高いと捉えられよう。

南アジアのスリランカでは、21日に任期満了に伴う大統領選挙が実施された。ここ数年のスリランカにおいては、コロナ禍後の商品高がインフレや輸入増を招くとともに、近年急拡大してきた対外債務を巡る債務支払いの増大も重なる形で外貨が不足して債務不履行(デフォルト)に追い込まれるなど経済危機に陥った。こうした事態を受けて、全土に当時のゴタバヤ・ラジャパクサ大統領の辞任を求めるデモの動きが広がるとともに、活動が過激化して収拾が付かない状況に陥ったほか、最終的にラジャパクサ大統領は海外逃亡の後に辞任を表明することとなった。直後に議会において実施された大統領選では、ラジャパクサ政権の末期に首相に就任してIMF(国際通貨基金)からの支援受け入れに向けた協議を主導したラニル・ウィクラマシンハ氏が当選し、同氏の下で経済立て直しに向けた取り組みが進められてきた(注1)。ウィクラマシンハ政権下では、IMFからの支援受け入れに向けて、物価と為替の安定を目的とする緊縮的な金融政策、財政健全化に向けた緊縮財政政策に加え、対外債務の再編協議などの取り組みを積極化させてきた。こうした着実な取り組みも追い風に、IMFは2023年に拡大信用供与ファシリティー(EEF)に基づく22億SDR(約29億ドル)規模の支援を承認した(注2)。直後には、スリランカの主要債権国である日本とインドに加え、債務再編に関する知見が多いフランスが共同議長となる形で債務再編の議論を主導する枠組が創設されるなど(注3)、経済立て直しの動きは着実に前進してきた。こうした取り組みも追い風に、一時は70%近くに大きく上振れしたインフレは足下では一桁台で推移するなど落ち着きを取り戻しているほか、経済危機を受けて大幅に調整した通貨ルピー相場もIMF支援の下で調整の動きに歯止めが掛かるなど、ともに落ち着きを取り戻している。さらに、足下の景気は底入れが確認されているものの、実質GDPの水準は経済危機に陥る直前を下回る推移が続くなど回復の動きは緩やかなものに留まるとともに、ウィクラマシンハ政権下での緊縮政策、とりわけ増税策などの影響で国民生活は厳しい状況に直面している。今回の大統領選にはウィクラマシンハ氏のほか、左派勢力である人民の力(NPP)を率いる人民解放戦線(JVP)のディサナヤカ党首、2020年の前回総選挙で最大野党となった統一人民戦線(SJB)のプレマダサ党首のほか、過去最多となる39人が出馬した。事前の世論調査では、IMFの支援計画をはじめとする経済再建策の見直しを主張するディサナヤカ氏が終始トップを走ってきた。結果、第1回投票ではいずれの候補も単独で半数を上回る票を獲得できなかったものの、選挙管理委員会は上位2名(ディサナヤカ氏とプレダマサ氏)に絞った形で再集計を行った上でディサナヤカ氏の勝利を発表した。この結果を受けて、23日にディサナヤカ氏は大統領に就任した。ただし、同氏が率いるJVPは議会で3議席と少数派に留まるため、安定した政権運営を目的に早期の議会解散と総選挙を行う意向を示している。また、同氏は選挙公約にIMFとの支援条件の再交渉のほか、食料品をはじめとする生活必需品の課税免除などを主張しているが、IMFとの再交渉の行方を巡っては今月予備的な合意状態に達した債務再編協議に影響を与えることが考えられる。他方、スリランカはインド洋のシーレーン(海上交通路)の要衝に位置するとともに、近年は隣国のインドと一帯一路を通じた影響力拡大を目指す中国との『パワーゲーム』の舞台となるなか、JVPは伝統的にインドと対立してきた経緯があり、外交戦略に影響を与える懸念がくすぶる。ディサナヤカ氏自身は支援受け入れに向けてすべての国とのバランスを取る外交姿勢を目指すとみられるほか、上述のように債務再編協議を主導してきた日本との間でもウィクラマシンハ氏に続いて良好な関係を維持する姿勢をみせている。日本にとっても地理的に重要な国であるとともに、歴史的にも良好な関係を築いてきたことを勘案すれば、経済の立て直しに向けた取り組みが着実に進められるよう注視するとともに、主体的に関わっていく必要性は高いと捉えられる。

図1 インフレ率とルピー相場(対ドル)の推移
図1 インフレ率とルピー相場(対ドル)の推移

図2 実質GDP(季節調整値)と成長率(前年比)の推移
図2 実質GDP(季節調整値)と成長率(前年比)の推移

以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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