インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

ロシア中銀、戦時経済下も5会合ぶりの利上げ、追加利上げも示唆

~表面的には落ち着いているが、その背後では国民の間に不満のマグマが溜まる兆し~

西濵 徹

要旨
  • ロシアは戦時経済が続く一方、新興国などとの繋がりが欧米などの経済制裁の抜け穴になり、軍事産業も景気を下支えする展開が続く。他方、労働力不足や米国の制裁強化を受けて輸入が下振れするなど物資不足が顕在化している上、政府が実施した低利での住宅ローン支援は不動産バブルを招いている。中銀は昨年物価抑制を目的に利上げに動いたが、足下のインフレは昂進しており、26日の定例会合で5会合ぶりの利上げを決定し、政策金利は18%と2年強ぶりの水準となる。中銀は先行きの追加利上げに加え、長期に亘って引き締め姿勢を維持する方針を示すなど、戦時経済下にも拘らず金融引き締めを迫られている。政治的にプーチン政権は盤石さを増す一方、表面的に落ち着いた推移が続く背後で国民の間には不満のマグマが溜まる兆しも出ている。政治、経済の両面で同国を取り巻く環境は厳しさを増している。

ロシア経済を巡っては、2022年2月に始まったウクライナ戦争は未だに収束の見通しが立たないなど戦時下の状況が続いている。戦争当初は欧米などによる経済制裁の強化を受けて経済は大幅に下振れしたが、世界的な分断が広がる背後で中国やインドをはじめとする新興国との貿易拡大の動きが制裁の抜け穴になるとともに、戦争長期化による軍事産業の活発化の動きは足下の景気を押し上げている。事実、軍事費の増大を受けて関連産業はGDPの1割弱に達するなど同国経済にとって一大産業となっており、経済活動を維持する観点でも戦争を止められなくなっている可能性がある。さらに、ロシアも加わる主要産油国の枠組であるOPECプラスは価格維持を重視する動きをみせており、経済制裁の一環で欧米などはロシア産原油価格に上限を設けるもその水準を上回る推移が続いており、結果的に継戦能力が維持される事態となっている。他方、戦争動員や徴兵回避を目的とする逃亡も重なる形で労働力不足が深刻化して賃金上昇圧力が強まっており、同国は元々人口減少局面入りしていたこともそうした懸念を高めている。また、周辺国からの移民流入が労働力の供給源となってきたものの、ウクライナ戦争以降はそうした動きに歯止めが掛かるとともに、今年3月にモスクワ郊外のコンサートホールでのテロ事件を受けた入国管理厳格化の動きもこうした傾向に拍車を掛けている。そして、米国がロシアと取引する外国銀行を対象に二次的制裁に動く方針を示したことを受けて、国際決済は複雑化して輸入コストが押し上げられるとともに、取引自体も縮小するなど物資不足の動きも広がりをみせている。中銀は昨年、戦時中にも拘らず物価抑制を目的とする利上げを実施したものの、上述のように幅広くインフレ圧力が強まる動きがみられるほか、フル稼働での戦時物資の生産の動きもインフレ圧力を増幅させている。また、戦時経済の長期化や中銀による利上げが国民生活に悪影響を与える事態を回避すべく、政府は低利の住宅ローン供与を目的とする補助金給付を実施し、このことが不動産バブルを招いてインフレ圧力を増幅させたため、今月に当該措置を打ち切る事態に追い込まれている。こうしたなか、足下のインフレは前年に加速した反動で頭打ちに転じやすい環境にあるにも拘らず、6月のインフレ率は前年比+8.59%、コアインフレ率も同+8.74%とともに伸びが加速しており、中銀目標(4%)から一段と乖離するなど物価を巡る状況は厳しさを増している。こうしたなか、中銀は26日の定例会合において政策金利を5会合ぶりに200bp引き上げる決定を行い、これに伴い政策金利は18.00%と約2年ぶりの高水準となる。会合後に公表された声明文では、インフレ圧力が高まっていることを受けて「今年のインフレ見通しを6.5~7.0%に上方修正する一方、来年は4.0~4.5%に鈍化する」との見通しを示した上で、同国経済について「労働力不足が制約要因になっている」とした上で「今年の経済成長率を+3.5~4.0%に上方修正する一方、来年は+0.5~1.5%に鈍化する」との見方を示している。その上で、先行きの政策運営について「インフレが再び鈍化し始めるためにはさらに引き締める必要がある」と一段の金融引き締めの必要性について言及するとともに、「必要な限り一段と長期に亘って高く維持する」とするなど一層の『タカ派』姿勢を強める考えをみせている。なお、同国では今年3月に開催された大統領選でプーチン氏が圧勝するとともに、5月に通算で5期目となる政権入りを果たすなど政治的には盤石さを増しているようにみえるものの、その経済運営を巡っては一段と困難さが増している。さらに、足下では食料品など生活必需品を中心とする物価上昇の動きも顕在化しており、家計部門は消費を抑制するとともに、休暇の計画を縮小する動きがみられるなど、表面上は穏やかさを維持する背後で国民の間に不満のマグマが溜まる兆しもうかがえる。その意味では、ロシア経済や政治を取り巻く環境は着実に厳しさを増していると捉えられる。

図表
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以 上

西濵 徹


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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