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2024.07.24
アジア経済
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トルコ中銀は「断固とした」姿勢を堅持、リラ相場は中銀の忍耐次第か
~米ドル高一服も実質金利の悪さがリラ相場の重石に、明確な改善のサインを見極める必要があろう~
西濵 徹
- 要旨
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- トルコ中銀は23日の定例会合で政策金利を4会合連続で50%に据え置いた。昨年以降の同国では経済チームによる正統的な政策運営に舵が切られ、機関投資家を中心に金融市場での評価が向上する動きがみられる。インフレも頭打ちが確認されるなど最悪期を過ぎつつあるが、実質金利は大幅マイナスに留まるなか、米ドル高の一服にも拘らずリラ相場は底這いでの推移が続く。こうしたなか、中銀は短期的なインフレの上振れを警戒しつつ、インフレ鈍化を確実にすべく、金融、財政政策運営を堅持するなど断固とした姿勢をあらためて強調した。今月には主要格付機関3社がいずれも格上げを実施するなど評価は向上しているが、リラ相場は実質金利が大幅に改善するなど明確なサインを見極める必要性があると予想される。
トルコ中銀は、23日に開催した定例の金融政策委員会において政策金利である1週間物レポ金利を4会合連続で50%に据え置く決定を行った。昨年以降の同国は、大統領選後の内閣改造を経て誕生した経済チーム(財務相と中銀総裁)の下で正統的な政策運営に舵を切る動きをみせてきた。具体的には、中銀は物価と為替の安定を目的に累計4150bpもの利上げを実施。政府もリラ安阻止を目的に導入した保護預金制度の解除や包括的な財政緊縮策に舵を切った。こうした正統的な政策運営への転換を受けて、主要格付機関は相次いで同国の外貨建長期信用格付を引き上げるなど、国際金融市場においても機関投資家を中心に同国に対する評価が向上している。さらに、先月には憲法裁判所が2018年にエルドアン政権が公布した大統領令(中銀総裁と副総裁の任命と解任権を大統領に付与するもの)に対して無効とする判断を下しており、エルドアン大統領が人事権を盾に中銀に対して圧力を掛けることが難しくなっている。そして、今月初めに公表された6月のインフレ率は前年比+71.6%と高水準ながら頭打ちに転じる動きが確認されており(注1)、インフレを巡る状況はいよいよ『最悪期』を過ぎつつあると捉えられる。このところの国際金融市場においては、米国のインフレ鈍化を受けて米FRB(連邦準備制度理事会)による利下げ実施が意識されるなかで米ドル高の動きに一服感が出ており、多くの新興国通貨で調整圧力が後退する動きがみられるものの、リラ相場については一段と調整する事態は免れるも底這いで推移する展開をみせている。これは、上述のようにインフレは頭打ちに転じるなど最悪期を過ぎつつあるものの、実質金利は▲20%を上回る大幅マイナスで推移するなど投資妙味の乏しさが影響しているとみられる。よって、インフレの頭打ちが確認された後も経済チームの面々はSNSなどを通じて現行の引き締め姿勢を継続する考えを示していたなか、今回の中銀の決定はそうした見方を反映したものと捉えられる。会合後に公表した声明文では、今回の決定について前回会合同様に「利上げの効果発現に時間を要する点を考慮して現状維持を決定した」との見方を示している。その上で、物価動向について「6月は顕著な低下トレンドが確認されたが、7月は統制価格や税、食料品を中心とする物価上昇を受けて一時的な上振れが懸念される一方、基調的な動きは限定的なものに留まる」との見方を示した上で、「インフレ期待と価格決定行動が見通しと一致するか否かを注視している」との考えをみせている。また、先行きの政策運営について「利上げの効果発現の遅れを考慮しつつ、インフレの基調的な低下を確実にして中期的目標実現のために必要な金融、財政環境を醸成すべく政策決定を行う」とした上で、「インフレリスクに細心の注意を払いつつ、利用可能なあらゆる手段を断固として活用する」との考えをあらためて強調している。今月19日には主要格付機関のムーディーズ社が同国の外貨建信用格付を2ノッチ引き上げており(B3→B1)、主要格付機関3社がいずれも格上げを実施するなど間違いなく国際金融市場における評価は向上していると捉えられる。あとは一時的な上振れが懸念されるインフレが着実に鈍化の動きを強めるとともに、大幅マイナスが続く実質金利がプラスに転じるまで忍耐強く現行の引き締め姿勢を維持できるかに掛かっており、リラ相場についてもそうした明確な『サイン』を見極める展開が続くと予想される。


注1 7月4日付レポート「待ちに待ったインフレ鈍化を確認、トルコリラはどうなるか?」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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