23年度税収が前年超えへ

~サプライズ。5 月税収「爆増」で一転増加に転じた模様~

星野 卓也

目次

23年度税収は72兆円超に

報道各社は23年度税収が72.1兆円に達し、22年度の71.1兆円を上回る見込み、と報じている。複数社が報じており、確度は高そうだ。筆者は2か月前の月次税収動向をもとに、23年度の税収は22年度を下回ると見込んでいたが(2023 年度税収は減少か~年度前半を中心にテクニカル要因が下押し~)、サプライズである。

予測を外した点は反省したい。筆者の中で何らかの見落とし要素があったと思われるのだが、現時点では外した理由を分析するデータが乏しい。近日中に23年度税収の税目別の動向は明らかになるので、順次わかったことはまとめていきたいと思う。

現時点でわかるのは、23年5月税収が「爆増」した模様だということである(資料1)。23年4月末までの累計税収は59.5兆円であり、前年同時期の61.5兆円を明確に下回っていた。23年度税収が72.1兆円に着地したのであれば、差し引きで23年5月の税収は12.6兆円近くに上っている計算だ。昨年同時期の値は9.6兆円であり、3割近く伸びていることになる。5月税収は3月末決算企業の下期の法人税が主に計上され、ここが大きく増加したと考えられる。

資料.22 年度税収と23 年度税収の月次推移とその差分
資料.22 年度税収と23 年度税収の月次推移とその差分

具体的な総括は全体像の公表後としたいが、先のレポートでも示した年度前半のテクニカル要因を上回る形で法人税や所得税が伸びた形になったようだ。また今回、基幹3税(所得税・法人税・消費税)以外のところの特徴として、相続税の伸びが著しい形になる見込みである点が挙げられる。公表されている4月末までの相続税の累計額は3.3兆円で、昨年度の2.8兆円から+0.5兆円・2割増加している。株価や不動産価格の上昇が資産課税の増加につながっているようだ。

税収上振れの影響:「自然体で25年度黒字化」試算も描かれうる

財務省の23年度税収の見込み値は69.6兆円であり、決算税収が72.1兆円となれば+2.5兆円程度の上振れになる。決算税収の上振れは①決算純剰余金の増加、②政府の中長期試算における財政予測パスの修正、につながる。①に関連して、決算純剰余金の一部は防衛費財源に充当することを決めているほか、例年補正予算の財源としても用いられる。岸田首相は二段構えの対策として、夏・秋に財政措置を行う旨を表明している。税収上振れを通じた決算純剰余金は秋の経済対策の財源として活用されることが想定される。

②に関連して、今回の決算を踏まえて7月中にも政府の中長期財政試算のリバイズが行われる。例年、税収上振れのうちの一部は土台増として将来税収の増加につながる形でシミュレーションがなされており、財政収支のパスは赤字縮小・黒字拡大方向に修正されることになるだろう。1月中長期試算において、政府メインシナリオ(成長実現ケース)の25年度国・地方PBは▲1.1兆円。政府はここから歳出削減を行うことで25年度PB黒字化が視野に入る、という説明をしてきた。実際の修正幅はどの程度を土台増(一時的要因を除いた増加分)と想定するかにも左右されるが、今回の税収上振れを踏まえると「自然体で(歳出削減無しでも)黒字化」の絵が描かれても違和感はない(そうしたメッセージになるような上方修正をあえて避けるかもしれないが)。近日中に公表される中長期試算には注目しておきたい。

以上

星野 卓也


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

星野 卓也

ほしの たくや

経済調査部 主席エコノミスト
担当: 日本経済、財政、社会保障、労働諸制度の分析、予測

執筆者の最近のレポート

関連テーマのレポート

関連テーマ