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2024.06.26
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資産運用のキホン ~その 10:債券価格と金利、景気の関係~
嶌峰 義清
- 要旨
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- 債券も市場で売買されるため、価格が変動する。債券価格と債券利回りは逆に動く。価格が上昇すれば利回りは低下し、価格が下落すれば利回りは上昇する。
- 債券は、経済環境に照らして利回りが適切な水準になるように売買される。
- 債券は、利回りが高く、価格が安価になる景気のピークの局面で投資することで、最も高い収益をあげる可能性が大きい。
債券は株と同様に売買され、価格が変動する
国や企業などが債券を発行する際、証券会社などがその引き受け手(引受会社という)となる。国債などは発行額の規模が大きいため、引受会社は複数になる。この段階を「発行市場」、あるいは「プライマリーマーケット」と呼び、国債では公募入札が行われ、高い価格を提示した引受会社から順に落札していく。
落札された債券は、金融機関の店頭などで投資家に売却される。売買は基本的に相対(あいたい)で行われる。証券取引所でも取引はされるが、その規模は全体の1%程度に過ぎない。このように、引受会社から投資家に売却されて以降の段階を「流通市場」、または「セカンダリーマーケット」と呼ぶ。なお、新たに発行された債券は「新発債(しんぱつさい)」、既に発行されて流通市場で売買される債券を「既発債(きはつさい)」と呼ばれる。
国内外の機関投資家などに渡った債券は、償還までの間、株式と同じように投資家の間で売買することが可能だ。売買されるのだから、債券の価格は都度変動する。債券の価格は“額面100円に対していくら”という形で表され、単価と呼ばれる。単価が額面通り100円であれば「パー」、100円を超えれば「オーバーパー」、100円を下回れば「アンダーパー」と呼ばれる。
例えば、額面が10万円で単価が101円となっている既発債を購入する場合は、
額面10万円×(単価101円÷100円)=10万1000円
が購入代金となる。
債券価格が変わると債券の利回りが変わる
債券の最大の特徴は、債券の売買に伴う価格の変動によって、債券の利回りも変化する点だ。債券は発行時に額面金額と利率、償還日が決められている。投資家から見れば、額面金額は投資金額、かつ償還時(満期時)に戻ってくる元本部分であり、利率は額面金額に対する1年間の利息収入を決めるものだ。
例えば、額面金額100万円、利率1%、償還日は発行から10年後の10年債であれば、100万円で購入(投資)すれば、償還までの10年間、毎年1万円(額面100万円×利率1%=1万円)の利息収入が入ってくる。このため、償還時には元本の100万円と10年間の利息である10万円(1年間の利息収入1万円×10年=10万円)で合計110万円が得られ、投資金額との差し引きで+10万円の運用結果となる(実際の収入は株式と同様に収益部分に20.315%課税される。上記の例では利子部分に課税)。
さて、債券価格は変動するが、債券の額面(100万円)と利率(1%)は変わらない。これはこの債券は元本100万円に対し1%の利率で利息を支払う、つまり年1万円の利息を債券の発行者が債券の保有者に支払うというものだ。しかし債券価格は流通市場で変動するため、投資家の債券購入額も変わってくる。たとえば、
上記の債券単価が額面を下回り99円であったとすると、投資家がこの債券を購入する場合、
投資金額は
額面100万円×(単価99円÷100円)=99万円 となる。
これに対して償還時となる10年後に得られる収入は、
[満期時の償還金100万円]+[利息収入年1万円×10年=10万円]=110万円となる。
このように、99万円の投資で10年後には利息と合わせて110万円得られる。
さて、利回りは投資金額に対する収益の割合を年率換算したものだ。
そこで、この場合の利回りを計算すると、
10年後の収入110万円―投資額99万円=11万円(収益)
収益11万円÷投資期間10年=1.1万円(1年あたりの収益)
1年あたりの収益1.1万円÷投資金額99万円×100=1.11%(利回り)となる。
このように、債券価格が下落すると、利回りは逆に上昇することがわかる。
逆に、単価が上昇して101円の時点でこの債券を投資家が購入したとすると、
投資金額は
額面100万円×(単価101円÷100円)=101万円 となる。
これに対して償還時となる10年後に得られる収入は、
[満期時の償還金100万円]+[利息収入年1万円×10年=10万円]=110万円となる。
このように、101万円の投資で10年後には利息と合わせて110万円得られる。
さて、利回りは投資金額に対する収益の割合を年率換算したものだ。
そこで、この場合の利回りを計算すると、
10年後の収入110万円―投資額101万円=9万円(収益)
収益9万円÷投資期間10年=0.9万円(1年あたりの収益)
1年あたりの収益0.9万円÷投資金額101万円×100=0.89%(利回り)となる。
このように債券価格が上昇すると、利回りは低下することがわかる。
以上をまとめると、債券価格と利回りの関係は以下のようになる。
債券価格上昇=利回り低下
債券価格がオーバーパー(100円を超える)と利回りは表面利率を下回る
債券価格下落=利回り上昇
債券価格がアンダーパー(100円を下回る)と利回りは表面利率を上回る
個人向け国債など額面金額で債券を購入する場合は債券価格や利回りを気にする必要は無いが(詳細は次稿で解説)、流通市場から既発債を購入したり売却する場合には、債券価格とそこから得られる利回りを把握しておく必要がある。
債券の売買は利回り水準が目安となる
このように、債券は売買に伴って価格と共に利回りも変動する。では投資家(債券市場では主に機関投資家)は何を目安にして債券を売買しているのか。
株であれば企業の業績予想や、業績(一株あたり利益)に対する株価の割高感や割安感が売買の目安になる。これに対して、債券は利回り水準が実勢に合っているかどうかで、その債券が割高か割安かを図る。したがって、流通市場において売買されている既発債は、株のようにA社株は○○円と価格で表記されるのではなく、10年物国債は●●%というように利回りで表記されるのが一般的だ。
債券の利回りが実勢に見合った水準にあるのかどうかを計るうえで、重要なポイントになるのが物価の動きだ。
例えば、1%の利回りの債券を保有している場合、物価上昇率が0%であれば利回りの価値は1%のままだが、物価上昇率が2%に高まれば、1%の利回りでは実質的に価値が目減りしてしまう。「資産運用のキホン~その4:預金では資産が実質目減りするリスク~」でも述べたが、利回り(金利)はそのものの水準で図るのではなく、インフレ率を差し引いた実質金利(利回り)を考慮する必要がある。
先の例で言えば、
・債券利回り1%―物価上昇率0%=実質利回り1%:インフレを考慮しても1%収入が増える
・債券利回り1%―物価上昇率2%=実質利回り▲1%:インフレを考慮すると実質的に1%収入が減る
となる。
したがって、物価の上昇率が高まるなどして、保有している債券の償還までの期間の平均インフレ率も上昇すると予想されれば、保有している債券を売却するなどして、もっと高い利回りの債券に乗り換える必要がある。多くの投資家がこのように考えれば、債券価格は売却によって下落する。債券は価格が下落すれば利回りが上昇するので、多くの投資家が満足する水準まで利回りが上昇すれば、債券の売却は抑えられ、価格も安定する。
逆に、将来的に物価上昇率が鈍化する、あるいは下落するとの予想が強まれば、債券の保有期間に予想される平均物価上昇率よりも高い利回りの債券の魅力は高まる。魅力が高まれば債券を購入する人が増え、価格は上昇する。価格が上昇すれば債券の利回りは低下する。利回りが低下することで債券の魅力が薄らげば、債券への投資家の買いは落ち着いて価格も安定する。
物価に影響するもの全てが債券市場の変動要因(材料)となる
このように、足元の物価上昇率と先々の物価上昇率(期待インフレ率とも言う)を判断しながら、債券は投資家が適切と考える利回り水準になるように売買されていく。したがって、物価に影響を及ぼす要素は全て債券の売買に影響すると考えて良い。
物価と景気との関係を考えれば、物価は景気が良くなれば上昇圧力が高まり、景気が悪くなれば下落圧力が高まる(物価が上昇していることが普通の状態と考えれば、景気が良くなれば物価上昇率は加速し、景気が悪くなれば物価上昇率は鈍化する)。
ここで、景気と債券利回りとの関係について考えると、
・景気が良くなる=物価上昇圧力が高まる=債券利回りが上昇=債券価格が下落
・景気が悪くなる=物価上昇圧力が鈍化する=債券利回りが低下―債券価格が上昇
となる。
景気と債券の利回り、価格の関係を単純な図にすると以下のようになる。

ところで、債券を購入する場合、利回りに着目すればもっとも高い水準で購入すれば、利息収入(インカムゲイン)も増える。上図に基づけば、利回りは景気がもっとも良い時期に高くなるので、景気がピークだと考えられる局面で債券を購入することが望ましいといえる。
一方、債券の価格に着目すれば、できるだけ安く購入した方が売却益(キャピタルゲイン)が得やすい。債券価格が最も低くなるのはやはり景気がピークの時なので、その時に債券を購入することが望ましく、景気がもっとも悪いときに売却すれば、売却益も大きくなる。
つまり、債券投資は利息収入の観点でも売却益の観点でも、景気がもっとも良いときに購入することが高い収益を上げる可能性が大きいと言える。
「資産運用のキホン~その11」では、債券投資のメリットとその方法について解説する。
嶌峰 義清
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

