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資産運用のキホン ~その6:株式投資をするために~

嶌峰 義清

要旨
  • 株は証券会社に口座を開設し、上場企業の株を100株単位で買うことが基本となる。
  • 税金は1年間の売却利益分にかかる。複数の銘柄を売却した場合、そのトータルの売却益に対して課税される(売却損が出た場合は、その分だけ差し引かれる)。
  • NISA口座であれば、売却利益にかかる税金は免除される。

これだけは必要、はじめての株式投資関連ワード

銀行預貯金を除けば、日本人の資産運用で最も人気が高いのが株式投資だ。

株式とは、企業がその運営資金を得るために発行する証券の一種だ(他に社債などがある)。株式を購入すれば、購入者(投資家)はその企業の株主になることができる。

株主になると、主に以下の権利を得られる。

図表
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株式市場は、人々が株式を売買する場所のことだ。株式市場に上場している企業の株は、株式市場を通して売買することができる。日本では、札幌、東京、名古屋、福岡の4カ所がある。その中で中心となるのが東京証券取引所(以下東証と表記)で、日本国内の証券取引所の売買の99%以上を占める。

東証には、プライム、スタンダード、グロース、TOKYO PRO Marketの4つの市場が開設されている(2022年4月3日に、それまでの一部、二部、マザーズ、JASDAQは廃止)。このうち、プライム、スタンダード、グロースの3市場は、それぞれに上場基準(株主数、流通株式等)が設けられ、一般の投資家が売買できる。一方TOKYO PRO Marketは、東証とロンドン証券取引所の共同出資により設立されたTOKYO AIM取引所による運営マーケットとして2009年6月に開設されたものを継承し、東証が市場運営を行っているもので、上場基準は特に定められていないものの、プロ投資家と呼ばれる特定投資家(金融機関、国、日銀などと、国内に住所または居住を持たない個人、法人)のみが売買可能となっている。ちなみに、今年4月末時点で東証プライム市場には1649社、同スタンダード市場に1602社、同グロース市場に579社が上場している。また、札幌証券取引所に単独上場している企業は17社、同じく名古屋は58社、福岡は23社となっている(いずれも本稿執筆時点)。

株式会社は,証券取引所の上場基準を満たし、その審査に合格すれば、上場株式として広く投資家の資金を集めることが可能となる。代わりに、発行株式の相当割合を投資家が保有することで、起業者や経営陣の独断的な経営は難しくなる。場合によっては投機家に経営を乗っ取られるリスクもあるため、上場基準を満たすほどの十分な規模でも、敢えて上場しない有名企業も多くある。

株価は、企業の1株あたりの価格を示す。株式市場では上場している全ての企業の株式が日々売買されている。そこで、買いたい人と売りたい人の価格が釣り合えば売買成立となり、その価格が株価となる。もっとも、市場では多くの人が売買しているため、株価は時々刻々変動する。売買が多い株式の価格は秒単位で変動する一方、売買が少ない株式の価格は、売買が成立したときに価格が変動するためほとんど価格が変動しない場合もある。売買が成立した株数を出来高というが、多い企業であれば一日の出来高は1億株を超える。一方、売買が少ない企業の出来高は1株、あるいは売買が成立しない(売り手も買い手もいない、あるいは売り手と買い手の価格が釣り合わない)場合もある。

株を買うには

実際に株式を購入する場合は、証券会社に口座を開設することから始まる。NISA口座であれば、投資金額に上限はあるものの、税制面での優遇措置が得られる。買いたい株式があれば、その購入に必要な金額を口座に入金し、証券会社に注文する。

注文の仕方には以下の2種類ある。

図表
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保有している株式を売却する際にも上記2つの注文方法がある。

一般的に、指値注文であれば自分の予算の計画通りの購入ができる。また、ある程度の相場観(価格の変動の見通し)があるのであれば、それに適った買い方もできる。一方で、実際の株価と指値との間の乖離が大きければ、購入に時間がかかることもある(数年も機会がない場合もあり得る)。

一方、成行注文はその時の市場価格で購入するため、買い注文を出せばすぐに購入できる可能性が高い。もっとも、価格変動が激しい局面では、思わぬ価格で購入することもあり、予定外の出費を強いられるリスクもある。

ところで、株式は1株で買えるわけではない。国内の取引所では、株式の売買単位(単元という)は100株に統一されている(2018年10月1日以降)。このため、株式の売買は100の倍数で行うことになる。したがって、1株=100円の株式であれば、100円×100株=1万円で買い(売り)注文を出すことができる。

ただし、100株に満たない数量で株式を購入する例外もある。それが株式累積投資(るいとう)や株式ミニ投資などと呼ばれるものだ(証券会社によって名称は異なる場合がある)。

るいとうは、定期的に決まった金額を決まった銘柄の株式購入に充てるものだ。たとえば毎月1万円をるいとうで投資した場合、1万円で買えるだけの株数を毎月購入する(1株=5000円の株式であれば1万円÷5千円=2株)。ただし、株価は日々変動するため、毎月購入できる株数が変動する(たとえば翌月の株価が2500円に値下がりした場合、1万円では4株購入できる)。やがて購入した株数が100株になれば、株式市場での売却も可能となる(100株に満たない株式は発行企業などへの売却が可能)。

株式ミニ投資は、単元株の10分の1、すなわち10株単位で投資ができるものだ。その分少ない予算で株式を購入できるメリットがある。また、1銘柄(1企業の株式)への投資額を少なくすることで、多くの銘柄の株式を購入することができる(たとえば10万円で、1株=2000円のA社の株を10株と、1株=8000円のB社の株を10株購入することが可能)。複数の銘柄を持つことは、リスクヘッジにもなり得る。

るいとうと株式ミニ投資の注意点としては、保有株数が単元株となる100株に満たない場合、株主の権利である議決権や株主優待をもらうことができないことが挙げられる。ただし、配当金は保有株数に応じて配分される。

株式投資にかかる経費

株式投資に必要な資金は、株式購入代金だけではない。一般的には、株式売買委託手数料や口座管理料といった、証券会社に支払う代金が発生する。もっとも、こうした“経費”は、ネットでの株式売買(オンライン取引)が主流となる中、非常に安価、あるいは無料となっているものも多い。

株式売買委託手数料は、株式の売買時に証券会社に支払う手数料だ。手数料は売買の注文を証券会社の店頭で行うか、電話、あるいはオンラインで行うかによって異なるケースが大半だ。一般的には手数料金額は[オンライン<電話<店頭]となり、PCやスマホでのオンライン取引での手数料がもっとも安価だ。

手数料は、1銘柄の1回の株式売買金額(約定金額という)にかかるケース(1約定制という)と、1日の合計約定金額に対して手数料がかかるケース(1日定額制という)がある。一般的には、約定金額が高くなるほど手数料も高くなる。しかし、ネット証券では約定金額にかかわらず、オンライン取引での手数料を無料としている証券会社もある(本稿執筆時点、先物やオプション取引は除く)。

口座管理料は、証券口座を保有、維持することにかかる手数料だが、現在はほとんどの証券会社がこれを無料としている。

株式売却で利益が出れば税金がかかる

もう一つ、株式投資にかかる費用とはやや異なるが、忘れてはいけないのが税金だ。

税金は株式を売却した際に生じる利益(譲渡益という)にかかる。したがって、売却損となった場合には税金は発生しない。譲渡益が発生した場合は、申告分離課税として所得税15%+住民税5%、合わせて20%に加えて、2037年1月末までは復興特別所得税0.315%が所得税に上乗せされるため、合計で譲渡益の20.315%を、給与など他の所得と区分して税金を支払う必要がある。したがって、例えばサラリーマンのように給与から税金が天引きされている人でも、株式の譲渡益については自分で確定申告を行い、支払う必要がある。

課税対象となる譲渡益は、1年間(1月1日から12月3日)の株式売買のトータルとして算出される。例えば、1年間でA株の売却益10万円、B株の売却損5万円が発生していれば、譲渡益は[(A株+10万円)+(B株▲5万円)=+5万円]となり、この5万円に譲渡益が課税される(この場合、課税額は5万円×20.315%=1万157円)。仮に、1年間の株式売却が合計で売却損となっていれば、課税はされない。

確定申告が負担と考えるのであれば、証券会社に持つ口座を特定口座(源泉徴収あり)にしておけば、証券会社が代わって1年間の譲渡益を計算して納税をするため、自分で確定申告をする手間は省ける。特定口座は一つの証券会社に1つしか持てないが、異なる証券会社であれば別の特定口座を持つことができる。ただし、源泉徴収は証券会社毎に行われるため、ケースによっては自身で確定申告をしないと余計な税負担がかかることもあるので注意が必要だ(たとえば、A証券会社の特定口座では+10万円の譲渡益、B証券会社の特定口座では▲20万円の譲渡損となった場合、トータルでは▲10万円の譲渡損となるため税金はかからないはずだが、A証券会社では+10万円の譲渡益に源泉徴収が行われて2万315円の税金が天引きされてしまうため、証券会社から発行される特定口座年間取引報告書を用いてトータルの損益を計算し、確定申告を行う必要がある)。

なお、税金は配当金にもかかる。税率は同じく20.315%(復興特別所得税を含む)となるが、こちらは原則として源泉徴収課税となるため、自動的に税金が天引きされた額が配当金として支払われていることになり、改めて申告する必要はない。

NISA口座であれば一定額内は非課税に

こうした株式譲渡益にかかる税金を、一定の範囲内で非課税にするのがNISA口座だ。今年からスタートした新NISAでは非課税保有限度額として、つみたて投資枠と成長投資枠を合わせて取得価格ベースで1800万円までが非課税となった(うち成長投資枠のみでは1200万円まで。本稿執筆時点。NISA制度の内容については以下同)。取得価格ベースというのは、株式や投資信託を購入したときの金額という意味で、株価の変動による時価ベースではない。投資金額がこの枠内に収まっていれば、その株式や投資信託から発生した譲渡益(売却益)については、税金がかからないということである。例えば100万円の譲渡益が発生した場合、NISA以外の一般的な証券口座(特定口座を含む)であれば、20万3150円の税金が発生するため、手取りは79万6850円となってしまうが、NISA口座であれば手取りは譲渡益となる100万円のままであり、その差は非常に大きい。

NISA口座での1年間の投資枠は、つみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円までと定められており、両枠合わせて年間360万円の投資が限度となる。このため、毎年360万円ずつNISA口座から投資をすると、5年間で非課税保有限度に達する(360万円×5年間=1800万円)。

仮に非課税保有限度枠に達しても、保有資産を売却すればその分だけ新規の投資は可能となる。ただし、その枠が復活するのは売却年の翌年となる。また、復活するのは売却した株式や投資信託の取得価格分となる。たとえば、今から4年後の2028年に非課税保有限度枠いっぱいとなる1800万円にNISAでの保有資産が達した場合、その年に取得価格ベースで360万円分の保有資産を売却すれば(売却価格が360万円を超えた部分の譲渡益は非課税)、翌年の2029年には新たに360万円分の新規投資が可能となる(仮に、取得価格ベースで360万円の株式が売却時に500万円だったとしても、復活する非課税での投資枠は360万円分)。なお、万一限度額を超える投資を行った場合は、超えた分が一般の証券口座(特定口座を含む)に回り、20.315%の課税対象となる。

NISA口座の開設期間は恒久化されており、非課税保有期間も無制限となっているため、老後のための資金づくりとして有利な運用制度であるといえる。口座を開設できるのは日本に住む成人(18歳以上)であり、若い段階から利用が可能だ。ただし、口座は1人につき1口座のみとなっている。仮に、口座を他の金融機関に変更する場合は、年単位であれば可能となる。なお、NISA口座での売買についても、証券会社毎に株式売買委託手数料は異なる。手数料が無料の証券会社もあれば、有料ではあるもののポイント還元や様々な付帯サー-ビスがつく会社もあり、十分な比較検討が必要だ。

「資産運用のキホン~その7」では、株価の変動要因や理論値について解説する。

嶌峰 義清


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

嶌峰 義清

しまみね よしきよ

経済調査部 シニア・フェロー
担当: 経済・金融市場全般、地政学

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