インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

ニュージーランド、インフレは「前年比」で鈍化も「前期比」は再加速

~中銀による追加利上げ観測は後退の一方、NZドル相場は引き続き「米国次第」の展開が続くであろう~

西濵 徹

要旨
  • 昨年来のニュージーランドでは、コロナ禍からの景気回復、商品高、米ドル高が重なりインフレが高進し、住宅価格も高止まりしたため、中銀は断続・大幅利上げを余儀なくされた。中銀の利上げにも拘らず、住宅価格や物価は高止まりし、今月14日の総選挙での野党勝利と政権交代の一因になったと考えられる。昨年末以降は商品高と米ドル高が一巡してインフレは頭打ちする一方、足下では商品市況や米ドル相場は底入れするなどインフレ再燃の兆しが出ている。7-9月のインフレ率は前年比+5.6%と一段と鈍化するも中銀目標を上回るなか、商品市況や米ドル相場の底入れを反映して前期比は加速しており、インフレ鎮静化にほど遠い状況が続く。ただし、足下のインフレ率は最新の経済見通しの前提を上回るペースで鈍化しており、中銀は先行きも引き締め姿勢を維持する一方、追加利上げの可能性は後退したと判断出来る。他方、NZドル相場は「米国次第」の様相を強める展開が続いており、当面は同様の推移が続くと予想される。

昨年来のニュージーランドにおいては、コロナ禍からの景気回復の動きに加え、商品高に伴う食料品やエネルギーなど生活必需品を中心とする物価上昇、国際金融市場における米ドル高を受けた通貨NZドル安に伴う輸入インフレが重なり、インフレ率は中銀(NZ準備銀行)が定める目標を大きく上回るとともに、約30年ぶりの水準に高進した。他方、ここ数年の同国では住宅供給不足や市況の高止まりが社会問題となってきたものの、コロナ禍を経た生活様式の変化による需要底入れの動きに加え、低金利環境の長期化も追い風に住宅市況は一段と上振れするなどの問題も顕在化した。よって、中銀は物価と為替加え、住宅市況の安定を目的に断続、且つ大幅な利上げを余儀なくされたものの、インフレは高止まりして物価高と金利高の共存状態が続くなか、住宅市況は頭打ちに転じたことで家計部門はバランスシート調整圧力に直面するなど、景気の足かせとなる懸念が高まっている。ただし、中銀による利上げ実施を受けて住宅市況は頭打ちに転じたものの、足下においては依然としてコロナ禍前を上回る水準で推移するなど問題解消にはほど遠い状況が続いている。さらに、昨年末以降は商品高と米ドル高の動きが一服しており、インフレ率は頭打ちの動きを強めているものの、依然として中銀目標を上回る水準で推移するなど、住宅市況同様に鎮静化にはほど遠い状況が続いている。こうした状況は、今月14日に実施された総選挙において野党が勝利を収めるとともに、6年ぶりとなる政権交代に向けた道筋が付けられる一因になっていると捉えられる(注1)。なお、上述のように昨年末以降は商品高と米ドル高の動きが一巡する動きがみられたものの、主要産油国による自主減産の延長決定に加え、世界的に異常気象が頻発するなかで農産物の輸出禁止や制限に動く国が広がりをみせるなかで商品市況は底入れの動きを強めており、食料品やエネルギーなど生活必需品を中心にインフレが再燃する動きがみられる。さらに、足下では中東情勢を巡る不透明感の高まりを受けて原油価格の上振れが懸念されるとともに、世界的なインフレ長期化を懸念して米ドル高圧力が再燃することが警戒されており、こうした動きもインフレの再燃に繋がる可能性が高まっている。こうした状況ながら、7-9月のインフレ率は前年比+5.6%と前期(同+6.0%)から鈍化するとともに、食料品とエネルギーを除いたコアインフレ率も同+5.2%と前期(同+6.1%)から鈍化してともに2年ぶりの伸びとなっているものの、依然として中銀目標(1~3%)を大きく上回る推移が続いている。なお、インフレ率は前期比+1.79%と前期(同+1.07%)から上昇ペースが加速しており、生鮮食料品やエネルギーなど生活必需品にインフレ圧力がくすぶるとともに、通貨NZドル安に伴う輸入インフレの動きも重なり幅広く財価格に押し上げられていることが影響している。コアインフレ率も前期比+1.31%と前期(同+0.91%)から上昇ペースが加速しており、住宅価格の底打ちを受けて家賃や住宅関連サービスを中心にサービス物価が押し上げられていることが影響している。中銀は今月4日の定例会合で政策金利を3会合連続で5.50%に据え置くとともに、引き締め姿勢の長期化を示唆する考えをみせる一方(注2)、足下のインフレ率は最新の経済見通しの想定を上回るペースで鈍化していることを勘案すれば、一段の利上げに動く可能性は後退していると判断出来る。NZドル相場を巡っては、中国経済の不透明感に加え、中東情勢の不透明感の高まりが原油相場を押し上げる懸念が高まるなかで米国では全米自動車労働組合(UAW)によるストライキの長期化も重なりインフレ長期化が意識されるなど、米FRB(連邦準備制度理事会)の政策判断を巡る見方も分かれるなかで引き続き『米国次第』の展開が続くものと予想され、物価動向を左右するであろう。

以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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