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豪準備銀・改革案、金融政策の決定過程の透明化を求める提言公表

~来年7月の施行を提言、次期総裁人事の行方を含めてその動向に注目が集まる~

西濵 徹

要旨
  • 豪準備銀を巡っては、その政策運営や決定方法に関する独立機関の見直しに関する改革案が公表された。理事会を正副総裁と財務次官、外部専門家による「専門家理事会」に衣替えするとともに、決定過程の透明化を求めるなど専門性向上を図る方針が示された。さらに、現状は正副総裁が担う市場との対話を各メンバーにも担わせ、議論の過程や政策決定全体を明らかにするとともに、説明責任の向上を図るとしている。
  • 政策目標も物価抑制と完全雇用の実現のみに簡素化するほか、物価抑制目標についてもインフレ率そのものを目標域に収めるとともに、中央値に収束させることを目指すとした。さらに、専門家理事会は金融政策のみを担当し、内部統制などを切り分けるとしている。改革案は来年7月の施行を求めており、今後は今年9月に任期満了を迎えるロウ総裁の後任人事の行方も含めてその動向に注目が集まると予想される。

豪州準備銀行(中銀)を巡っては、その政策運営、及び政策の決定方法などに関して独立機関による見直しが議論されており、20日に改革案が公表された。改革案では計51項目に及ぶ提言が示されており、なかでも金融政策の決定に当たって現在の理事会に代わり、総裁が率いる形で専門家理事会を設置することを求めており、専門家理事会の構成については正副総裁と財務次官に加え、マクロ経済、金融システム、労働市場などに精通した6人の外部専門家とすべきとしている。なお、現在の理事会も正副総裁と財務次官に加えて6人の外部メンバーで構成されているものの、その大宗が財界から選任されており、その専門性を巡って疑念が呈されていたことに対応したものと捉えられる。また、会合自体についても現状は毎年1月を除く毎月(計11回)開催されているものの、年8回に回数を減らす一方、会合後に公表する声明文では投票者を特定しない形で採決結果を公表するとともに、意見対立が生じた場合には議事要旨に対立点を記載すべきとしている。さらに、会合後の定期的な記者会見の実施に加え、理事会での討議内容やその戦略、その前提とした予測などに関する情報開示の拡大により、政策決定過程に関する説明を改善すべきとし、政策決定全体に対する透明性向上を目指す方針が示された。その上で、外部メンバーを含む理事会の構成員は各々の役割について説明責任を果たすべきであるとし、これまで金融政策に関するコミュニケーションは正副総裁が一手に担う展開が続いてきたものの、各メンバーによるコミュニケーション拡大を通じて総裁に集中している権限の分散化を図る目的がうかがえる。他方、外部メンバーについては5年任期で任命されるとともに、最長で1年の再任が可能になるなどメンバーの固定化を避ける方策も盛り込まれている。

また、政策目標についても、現在は物価抑制に加え、豪州国民の経済的繁栄と福祉の繁栄を目的とする幅広い権限が付与されるなど目標が多岐に亘ることを問題視しており、改革案では物価安定と完全雇用の実現の2つに簡素化する方針が示されている。そして、物価抑制目標を巡っても、現在の柔軟なインフレ目標(2~3%)については維持すべきとしつつ、運営に当たってはインフレ率を「長期的にみた平均値をインフレ目標に収束させる」とする現状の運営姿勢を「目標域に収めるとともに中央値(2.5%)に収束させる」ことを目指すべきとする考えを示している。なお、新たな専門家理事会は金融政策のみに注力する一方、現在の理事会が担う中銀の内部統制・内部管理機能を巡っては別の担当理事会に切り分けるとともに、その議長に外部から議長を招聘することで中銀から独立した組織とする方針も示されている。その上で、金融市場からの信頼性を担保する観点から、専門家理事会については政府から独立した現状の理事会と同じ性質を維持すべきとしており、中銀の独立性を一段と強化することを目的としているとの姿勢が示された格好である。この改革案を巡っては、政府に来年7月からの施行に向けた法制化を求める提言がなされており、チャーマーズ財務相もすべての提言に原則合意する意向を示すなど、今後は施行に向けた取り組みが前進する可能性が高まっていると判断出来る。他方、現在のロウ総裁は今年9月17日に任期満了を迎えるが、足下のインフレ昂進を巡っては政策判断やその意思伝達を巡って疑念が呈される動きがみられ、そうしたことも今回の改革案が議論される一因になったとみられる。ただし、現時点において中銀内にロウ氏の後任人事の候補者は乏しいとみられており(ブロック副総裁は昨年4月就任であるなど昇任は難しいとみられる)、改革案の行方は後任総裁人事と同様に注目を集めることが予想される。

以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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