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2023.03.08
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豪中銀、前回会合でのタカ派傾斜後退、利上げ局面の停止が近付いていることを示唆
~10会合連続の利上げ決定の一方、利上げ局面の停止時期について協議を行った模様~
西濵 徹
- 要旨
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- 7日、豪中銀は定例会合において10会合連続の利上げに動く一方、景気の不透明感が強まるなかで利上げ幅を25bpに留める決定を行った。足下の豪州経済はコロナ禍の影響を克服する一方、物価高と金利高の共存を理由に頭打ちの様相を強めている。中国のゼロコロナ終了は景気の追い風となることが期待されるものの、インフレ率は高止まりしており、足下では米ドル高の再燃が豪ドル相場の重石となるなど輸入インフレが再燃する懸念もくすぶる。中銀はこれまでの利上げの影響が今後顕在化するとの見方を示しつつ、利上げ局面の停止が近付いていることを示唆するなどタカ派姿勢を後退させている。当面の豪ドルは金融政策の方向性の違いが対米ドル相場の重石になる一方、日本円に対してはこう着した展開が続くと予想される。
豪州経済を巡っては、感染収束による経済活動の正常化を追い風とする雇用改善を背景に家計消費など内需の底入れが進むとともに、欧米など主要国を中心とする世界経済の回復や国境再開を受けて外需も押し上げられており、実質GDPの水準はコロナ禍前を大きく上回るなど影響を克服している。一方、商品高を受けた生活必需品を中心とするインフレに加え、雇用改善を追い風とする景気回復のほか、国際金融市場での米ドル高を反映した豪ドル安は輸入インフレを招いたため、インフレ率は大きく加速してきた。こうしたことから、中銀(豪州準備銀行)は物価と不動産市況の安定を目的に昨年5月に約11年半ぶりの利上げ実施に舵を切るとともに、その後は物価と為替の安定を目的に利上げ幅を拡大させてタカ派姿勢を強めたため、物価高と金利高が共存して景気に冷や水を浴びせる懸念が高まっている。なお、昨年末以降は景気の減速懸念が強まっていることに加え、国際金融市場における米ドル高圧力が後退したことも重なり、中銀は利上げを維持する一方で利上げ幅を縮小させるなどタカ派姿勢を後退させている。さらに、昨年来の断続的、且つ大幅利上げを受けて足下の不動産価格は下落基調を強めており、逆資産効果により家計消費の重石となる懸念が強まるとともに、資産の3分の2を住宅ローンが占める銀行セクターの貸出態度の悪化が幅広い経済活動の足かせとなる可能性も高まっている。事実、昨年10-12月の実質GDP成長率は前期比年率+1.93%と5四半期連続のプラス成長となるも、金利上昇を受けて企業の設備投資需要や家計の住宅需要に下押し圧力が掛かる動きが鮮明になるとともに、幅広い経済活動の低迷を示唆する動きが確認されるなど、足下の景気は頭打ちの様相を強めている(注1)。
なお、昨年末以降の中国によるゼロコロナ終了の動きは財輸出の約3割、コロナ禍前には外国人短期来訪者の約2割を中国(含、香港・マカオ)が占める同国経済の追い風になることが期待される。他方、足下のインフレ率には頭打ちの兆しがうかがえるも、依然として中銀の定めるインフレ目標を大きく上回る推移が続いており、仮に中国景気の回復を追い風に商品市況が底入れの動きを強めれば、先行きのインフレ率は高止まりすることも考えられる。さらに、上述したように昨年末にかけての国際金融市場においては米ドル高の動きに一服感が出たため、こうした動きを反映して豪ドルの対米ドル相場は底入れするなど輸入インフレ圧力が後退することが期待された。しかし、足下においては米FRB(連邦準備制度理事会)による金融引き締めの長期化、ないし利上げ幅の再加速が意識される形で米ドル高の動きが再燃しており、豪ドルの対米ドル相場は頭打ちに転じており、輸入インフレが再燃する可能性も高まっている。他方、欧米など主要国を中心とする世界経済の減速懸念を反映して足下の商品市況は頭打ちしており、交易条件指数は一段と低下するなど国民所得を下押しするなか、物価高と金利高の共存も景気の足を引っ張ることが懸念される。こうしたなか、中銀は7日の定例会合において10会合連続の利上げを決定するとともに、4会合連続で利上げ幅を25bp(3.35→3.60%)に留めている。会合後に公表した声明文では、物価動向について「ピークに達したことが示唆される」とした上、先行きについて「来年にかけて低下して2025年半ばには3%程度になると見込まれるが、中期的なインフレ期待を安定的に維持することが重要」との見方を示している。景気動向については「今後2~3年は潜在成長率を下回ると予想される」としつつ、労働市場について「ひっ迫度合いはやや緩和するも依然ひっ迫状態が続いている」とした上で、賃金について「労働市場のひっ迫と物価上昇を受けて上昇が続いている」としつつ「物価と賃金が連鎖的に上昇するリスクは低いが、そのリスクを引き続き警戒している」との見方を示している。先行きの政策運営については「優先事項はインフレ率を目標値に戻すこと」とした上で「経済の安定を維持しつつインフレ率を目標域に戻すことを目指すが、ソフトランディングの実現は依然として隘路である」との認識を改めて示すも、「さらなる金融引き締めが必要になる」と2月の前回会合時点(一段の利上げが必要(注2))から表現を後退させるなどタカ派姿勢を後退させつつ、「その決定には国内外の経済動向を注視する必要がある」との考えを強調している。他方、同行のロウ総裁は8日に行った講演において「昨日の定例会合では金融政策が制約的な領域にあるなか、経済状況を評価すべく利上げ停止が適切となる時期に近付いていることを議論し、そのタイミングはデータと見通しに関する評価次第」と述べるなど、利上げ局面の停止が近付いていることを示唆する考えを示している。よって、当面の豪ドルを巡っては米FRBとの金融政策の方向性の違いが対米ドル相場の上値を抑えると見込まれる一方、日本円に対してはこう着した展開が続く可能性が高いと見込まれる。


注1 3月1日付レポート「豪州景気は物価高と金利高の共存を受けて頭打ちの様相を強める」
注2 2月7日付レポート「豪中銀、賃金と物価の連鎖的上昇を警戒して一段の利上げに言及」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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