インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

豪中銀、賃金と物価の連鎖的上昇を警戒して一段の利上げに言及

~追加利上げに言及の一方、政策運営のガイダンスを撤回するなどタカ派姿勢を再強化する兆し~

西濵 徹

要旨
  • 7日、豪中銀は定例会合を開催して9会合連続の利上げを決定する一方、景気の不透明感に配慮して3会合連続で利上げ幅を25bpとしている。豪州経済はコロナ禍からの景気回復の動きが続く一方、商品高によるインフレ昂進に加え、中銀の断続利上げも重なり、景気に冷や水を浴びせる懸念が高まっている。他方、中国のゼロコロナ終了は外需の押し上げに繋がると期待される上、商品市況の底入れを受けて調整が続いた交易条件は底打ちしている。米ドル高の一服も追い風に豪ドル相場も底入れするなど外部環境は大きく変化している。中銀は先行きの金融政策を巡って物価抑制を優先事項に挙げた上で、追加利上げに含みを持たせる姿勢を示した上で、政策運営のガイダンスを撤回するなどタカ派姿勢を再び強める姿勢をみせた。当面の豪ドル相場は中銀のタカ派姿勢を反映する形で底堅く推移する可能性が高まっていると判断出来る。

豪州経済を巡っては、感染収束を受けた経済活動の正常化の進展を追い風とする雇用改善によりコロナ禍の影響を克服する動きがみられる一方、商品高による生活必需品を中心とするインフレに加え、景気回復の動きや国際金融市場における米ドル高を反映した豪ドル安が輸入物価を通じてさらなるインフレ昂進を招くなど、景気に悪影響が出ることが懸念された。さらに、中銀(豪州準備銀行)は昨年5月に約11年半ぶりの利上げ実施に舵を切ったほか、その後も断続利上げに動くとともに、物価、及び為替の安定を目的に利上げ幅を拡大させるなどタカ派姿勢を強めるなど、物価高と金利高が共存するなど景気に冷や水を浴びせる懸念が高まった。こうしたことに加え、昨年末にかけての国際金融市場では米ドル高一服による豪ドル安の動きが後退していることもあり、中銀は物価抑制を意識する一方で景気に配慮する形で利上げ幅を縮小させるなどの対応をみせてきた。他方、昨年末までに累計300bpもの利上げが実施されたことを受けて先月の住宅価格(前月比)は9ヶ月連続で下落しており、家計部門にとっては逆資産効果が消費の足かせとなるほか、銀行セクターも資産の3分の2を住宅ローンが占めるなかで貸出態度が悪化して幅広い経済活動の重石となることが懸念される。このように中銀は難しい対応を迫られる局面が続いているものの、昨年10-12月の消費者物価は前年同期比+7.8%と約33年ぶりの高い伸びとなっているほか、コアインフレ率(トリム平均値)も同+6.9%と過去に遡って最も高い伸びとなり、ともに中銀の定めるインフレ目標(2~3%)を大きく上回る推移が続いている(注1)。12月単月ベースでも消費者物価は前年同月比+8.4%、コアインフレ率(除、食料品・エネルギー)も同+8.1%とともに高い一段と加速するなど収束の見通しが立たない状況が続いている。また、昨年末にかけての豪州経済にとっては、最大の輸出相手である中国によるゼロコロナ戦略への拘泥や欧米など主要国景気を巡る不透明感の高まりが商品市況の重石となり、交易条件指数に急激な下押し圧力が掛かるなど国民所得の悪化に繋がることで景気の足を引っ張ることが懸念された。しかし、昨年末以降に中国が一転してゼロコロナの終了に舵を切ったことを受けて、金融市場においては景気回復期待を追い風に商品市況は底打ちしており、こうした動きを反映して調整の動きが続いた交易条件指数も底打ちしている。このように外部環境の変化を受けて、金融市場においては調整局面が続いた豪ドルの対米ドル相場が底入れの動きを強める一方、足下の雇用環境は引き続き底堅く推移しているほか、家計消費も堅調さが続くなど、インフレの長期化を示唆する動きもみられる(注2)。こうしたなか、中銀は7日に開催した定例の金融政策委員会において、政策金利であるオフィシャル・キャッシュ・レートを9会合連続で引き上げる決定を行う一方、3会合連続で利上げ幅を25bp(3.10→3.35%)に留めている。会合後に公表した声明文では、足下の物価動向について「世界的な要因に拠るところが多いが、内需の堅調さもインフレに拍車を掛けている」としつつ、先行きは「国内外双方の要因で低下が予想され、今年のインフレ率は+4.75%、2025年半ばには3%になると見込まれ、中期的なインフレ期待を安定的に維持し続けることが重要」との見通しを示した。景気動向について「昨年は力強く回復したが、今年と来年は経済活動の正常化の影響が一巡するとともに、金融引き締めの動きが足かせとなる形で+1.5%程度に減速すると予想される」とする一方、労働市場を巡って「依然として非常にタイトだが頭打ちの兆候が出ており、先行きは景気の鈍化に歩調を併せて緩やかな悪化が見込まれる」としている。その上で「賃金のさらなる上昇も予想されるが、物価と賃金の連鎖的な上昇回避に向けて労働コストと企業の価格設定行動を注視する」としつつ、足下の状況について「金利上昇の効果が依然現れておらず、今後の影響について不確実性があり、先行きの景気動向に関して様々なシナリオがあり得る」との見方を示した。先行きの政策運営については「優先事項はインフレ率を目標値に戻すこと」とした上で「経済の安定を維持しつつインフレ率を目標域に戻すことを目指すが、ソフトランディングの実現は依然として隘路である」との認識を示しつつ、「今後数ヶ月で一段の利上げは必要になる」としつつ「その決定には国内外の経済動向を注視する必要がある」としつつ、過去数回に亘り示してきた『事前に決まった道筋はない』との文言を削除して政策運営のガイダンスを撤回するなど、タカ派姿勢を再び強めている様子がうかがえる。こうした動きを反映して、当面の豪ドル相場は底堅い展開が続く可能性が高まっていると判断出来る。

図表1
図表1

図表2
図表2

図表3
図表3

以 上

西濵 徹


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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