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2023.02.24
アジア経済
アジア金融政策
トルコ経済
トルコ中銀は地震復興支援へ利下げ実施、復興の道筋は政局を左右
~中銀は一段の利下げ圧力に晒される可能性、震災復興の行方は選挙の行方に影響を与えよう~
西濵 徹
- 要旨
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- 23日、トルコ中銀は政策金利を50bp引き下げて8.50%とする決定を行った。同国では今月6日に発生した地震により甚大な被害が発生し、復興費用は最大でGDP比1割強に達するとの見方も出ている。他方、同国は大統領選と総選挙の実施が近付くなど「政治の季節」を迎えており、中銀は地震からの復興支援を強化した格好である。中銀は地震による需給バランス悪化の物価への影響を注視する姿勢を示すが、選挙が近付くなかで「金利の敵」を自任するエルドアン大統領が一段の利下げを求めて圧力を強める可能性はくすぶる。他方、エルドアン大統領が前倒しを決定した選挙日程が再調整される可能性も出ており、エルドアン政権にとっては当面は地震からの復興加速に道筋を付けることが出来るか否かが重要になると見込まれる。
今月6日にトルコ南東部のシリア国境付近で発生した大地震では、死者数がトルコ国内で4万人を上回るとともに、隣国シリアを併せると判明しているだけで5万人を上回っているほか、トルコ国内における復興費用が最大でGDP比1割強に達するとの試算が示されるなど甚大な被害が発生している。地震発生を受けて、トルコのエルドアン大統領は被災した同国10県を対象に救助活動の迅速化を目的とする3ヶ月間の非常事態宣言を発令する一方、被災地への訪問の際に初動対応に問題があった旨の認識を示すなど、初動対応の遅れが被害拡大の一因になった可能性を示唆した。他方、被災地においては治安情勢が悪化する動きもみられ、SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)上などでは政権に対する批判が高まっており、一部報道では政府がSNSへのアクセスを制限するとともに、投稿内容を巡って多数の逮捕者が出ている模様である。今回の地震では多数の建築物が崩壊して被害が拡大したが、その背景に建築物を巡る施工不良や建築基準が影響したとの見方が出ており、政府は多数の建築業者を対象に取り締まりを強化する動きをみせているが、そうした後手を踏んだ対応が結果的に政権批判を招く一因になっていると考えられる。なお、同国では今年6月に大統領、及び大国民議会議員の任期満了が到来するため、それまでに大統領選と総選挙の実施が予定されていたが、エルドアン大統領は先月末にこれらを5月14日に前倒しで実施することを明らかにした(注1)。その理由として、当初想定された6月18日は夏季休暇の時期と重なる上、イスラム教の祝祭(犠牲祭)が近いなど、政権を支える与党AKP(公正発展党)内でこれらに影響が出ないよう求める動きが影響したとされる。一方、足下の景気を巡っては、インフレ昂進にも拘らず中銀が断続的な利下げを実施したことに伴う実質金利の低下を追い風に家計消費は底堅く推移する一方、輸出の約半分を占める欧州の景気減速が足かせとなる懸念が高まっている。中国によるゼロコロナ終了は景気を下支えすることが期待されるほか、政府も最低賃金の大幅引き上げや年金受給開始年齢の実質引き下げなど政策支援を強化させるとともに、足下のインフレ率は伸びが鈍化しており、企業部門のみならず、家計部門のマインドも底打ちする動きがみられた。よって、政権としては政策効果が一巡する前の総選挙実施により逃げ切ることで政権の延命を図りたいとの思惑も透けてみえた。過去にエルドアン政権は地震や山火事など自然災害への危機対応により支持率を高めた経緯があるものの、今回の地震対応では逆風が強まる可能性も予想されるなか、当面は地震対応に注力する必要がこれまで以上に高まっている。こうしたなか、中銀は23日の定例会合で政策金利である1週間物レポ金利を3会合ぶりに50bp引き下げて8.50%とする決定を行った。会合後に公表した声明文では、「地震は短期的に経済活動に影響を与えるが、中長期的にみて恒久的な影響を与えるものではない」としつつ、「地震の影響を最小限に抑えるとともに復興を下支えする」とともに「地震後の生産活動のモメンタムと雇用改善の維持を図る観点から緩和的な金融環境を維持することが一段と重要になっている」との考えを示した。一方、直近のインフレ率は生活必需品を中心とするインフレ圧力の後退を受けて伸びが鈍化する一方、最低賃金の大幅引き上げなどを受けてコアインフレ率は再び加速に転じており、インフレ収束にほど遠い状況にある。中銀は「地震による需給バランスの悪化が物価に与える影響を注視している」としているが、今後は需給バランスの問題に加えて復興の進捗によりインフレ圧力が強まると見込まれるものの、『金利の敵』を自任するエルドアン大統領の下で中銀は一段の利下げに向けた圧力に晒される展開が続くであろう。なお、上述のように前倒しでの実施が予定された大統領選と総選挙だが、一部報道では被災地における投票準備の困難を理由に当初の予定通り6月に後ろ倒しされる模様であり、政権にとっては早期に復興に向けて道筋を付けられるか否かが極めて重要になる


注1 1月20日付レポート「トルコでは政治の季節を前に「何でもあり」の様相が強まる予感」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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