インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

米FRBの利上げ幅縮小も、メキシコ中銀は市場予想を上回る大幅利上げを継続

~次回以降は利上げ幅縮小に含みも、米FRBに追随してタカ派姿勢の維持に傾いている模様~

西濵 徹

要旨
  • メキシコ中銀は9日の定例会合で14会合連続の利上げに加え、利上げ幅を2会合連続で50bpとする決定を行った。今月初めに米FRBが利上げ幅の縮小に動いたため、事前にはこれに追随して利上げ幅の縮小に動くとみられたが、足下のインフレ率が再び加速に転じるなどインフレ懸念がくすぶるなかでインフレ抑制へ強力なメッセージを出した格好である。さらに、足下では米FRBが利上げ幅縮小後もタカ派姿勢を維持する姿勢をみせており、この影響を勘案したとも捉えられる。中南米では、ブラジルで中銀の独立性が危ぶまれているが、メキシコでは中銀の独立性が重視される動きがみられ、当面のペソ相場を下支えするであろう。

足下のメキシコ経済を巡っては、輸出の約8割を占めるとともに、GDPの約4%に及ぶ移民労働者からの送金の大宗を占める米国経済の動向の影響を受けやすいなか、米国経済が物価高と金利高の共存にも拘らず依然として堅調な推移をみせていることを追い風に底入れの動きが続いている。他方、米FRB(連邦準備制度理事会)によるタカ派傾斜を反映した米ドル高の動きに加え、世界経済の減速懸念を受けた原油をはじめとする商品市況の調整の動きも重なり、通貨ペソ相場の重石となることが懸念された。しかし、メキシコにおいても商品高が生活必需品を中心とするインフレを招いている上、景気の堅調さも重なりインフレが高止まりするなか、中銀は一昨年6月に約2年半ぶりの利上げに動くとともに、その後は米FRBのタカ派傾斜に歩調を併せる形で断続的、且つ大幅利上げに動いたことを受けてペソ相場は底堅い動きが続いた。さらに、昨年末以降は米FRBがタカ派姿勢を後退させたことで米ドル高の動きが一服しており、ペソ相場は底入れの動きを強める展開をみせてきた。なお、中銀は昨年12月の定例会合において13会合連続の利上げを実施する一方、米FRBによる利上げ幅の縮小に歩を併せる形で利上げ幅を縮小させるとともに、景気の不透明感が高まっていることを警戒して利上げ局面の終了を示唆する動きをみせた(注1)。また、米FRBは1月31日から2月1日にかけて開催した直近のFOMC(連邦公開市場委員会)において追加利上げを決定する一方、利上げ幅を25bpに縮小させたことを受けて、中銀にとっては利上げ幅の縮小に動くことが容易になったと捉えられた。さらに、昨年末にかけては世界経済の減速懸念の高まりを反映して商品市況は調整の動きを強めたほか、ペソ安の一服を受けて輸入インフレ圧力が後退していることも重なりインフレ率は鈍化する動きを強めたことも、利上げ幅の縮小を後押しすることが期待された。しかし、1月のインフレ率は前年同月比+7.91%と前月(同+7.82%)から再び加速に転じているほか、コアインフレ率も同+8.45%と前月(同+8.35%)からともに加速に転じるとともにインフレ率を上回る伸びが続くなど、中銀の定めるインフレ目標(3±1%)を大きく上回る水準で推移している。こうした事態を受けて、中銀は9日に開催した定例会合において14会合連続の利上げ実施を決定するとともに、利上げ幅は前回会合に続いて50bpとする決定を行った。これを受けて、政策金利は11.00%と2008年に現行制度が採られて以降の最高水準を更新している。さらに、昨年12月の前回会合では、様々なところで利上げ局面の打ち止めを示唆する動きをみせてきたエスキベル副総裁が利上げ実施に反対する姿勢を示したものの、今回は全会一致で50bpの利上げ実施が決定されるなど、同副総裁も利上げ実施に賛成票を投じた模様である。会合後に公表した声明文では、今回の決定について「コアインフレの動向を勘案すると、依然として複雑なインフレ環境に対処する観点から今回も前回会合と同規模の政策金利の調整を維持する必要がある」とするなど、インフレに対する警戒感が改めて共有された格好である。一方、先行きの政策運営を巡っては、「これまでに実施した金融引き締めの効果を勘案しつつ、次回会合では今後入手可能なデータに応じて政策金利の引き上げ幅をより小幅にする可能性がある」として、利上げ幅の縮小に含みを持たせる姿勢をみせた。ただし、前回会合では利上げ局面の終了が近付いていることを示唆する動きがみられたものの、米FRBが依然としてタカ派姿勢を維持していることに対応して、中銀もタカ派姿勢を維持していると見込まれる。中南米においては、ブラジルのルラ大統領が中銀に対して『圧力』を強めるなど中立性に疑義が生じる動きがみられるものの(注2)、今回の決定を受けてメキシコでは中銀の中立性が担保されていることが改めて強調された格好であり、当面のペソ相場については比較的底堅い展開が続く可能性が高いと判断出来る。

図表1
図表1

図表2
図表2

図表3
図表3

以 上

西濵 徹


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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